陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

山口敦子詩集「文人達への哀歌」

2015-12-04 | 詩関係・その他

 芥川龍之介、石川啄木、井上靖・・・21名の小説家や詩人、歌人、俳人、女優などを取り上げ、それぞれの「文人」一人一人に自らの俳句2句と詩を寄せている。そして、その「文人」に対する私感を述べ、かつその「文人」の略歴をを載せるなど、少なくとも私の少ない読書量の中では初めて目にするスタイルの詩集。2年前、前著である詩集「芭蕉 古の叙事詩」を受贈した時の驚きが甦った。一人の「文人」にこれまで真正面からぶつかって自らの感受性を詩に成してゆく作業に驚いたものである。これまで芭蕉や山頭火を対象にその生き方考え方を詩集として表してきた方らしい詩集ともいえる。

「閑古鳥を抱いて<石川啄木へ>」
閑古鳥が鳴いている/故郷の寺の ひばの木の頂で/  追えども追えども住みついて/手足を啄み 頭を啄み 腹を啄み/心の臓まで啄んで/嘲笑が 胸中に鳴り響いて行く/  己を怒り 妻子を怒りつつ深夜を彷徨して/寝ても起きても 悲しみが背中を這い巡る/空も仰げない悲しみが ベッド上を喘いで/そのような時にも 故郷の寺の閑古鳥が/誘うように 微かに微かに聞こえて来るのだ/  妻よ 子よ 父よ母よ イエスよ/懺悔の日々の この子を許したまえ/遥か遠くの 閑古鳥にも祈りながら/ 

2015年11月9日発行・土曜美術社出版販売                                        

                                 

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