宇都宮市在住、こやま きお氏の第三詩集『父の八月』が刊行された。(因みに、第一詩集『おとこの添景』は第63回H氏賞の候補となった)
作品35編が3章に分け収められている。叙景であり抒情であり、掌編のようでもあり、そして社会をきっちり睨んだ鋭い眼もある。感情を抑えた表現がこの詩人の性格を表しているのかも知れない。読んでいて気持ちが落ち着き、なるほどと頷く。
第3章では東日本大震災・原発事故に関連した作品が収められている。その中の「千羽鶴考」は、やりきれない気持ちの表出が見事だ。
白藍に漣漣と
海の底に埋もれた何万何千の魂は
愚直に
放射能を飲恨したまま
現世を守っているのだ
忌まわしい神まがいを閉じこめ
人々の苦しみや悲しみを
千の鶴に折り込ませてはいけない
愛などというもっともらしい大人の理屈を
鶴に折り込ませてはいけない
願いを折る 嘘をつくな
希いを折る 嘘をつくな
祈りを折る 嘘をつくな
夢一折
希望一折 嘘ばかりつくな
絆をつなぐ千羽鶴など
大嘘だ
発行:2017年11月25日 / 発行所:株式会社歩行社