The 理科ロマンスカー

人生を振り返りつつ見過ごしては禍根を残すであろう事柄に着目。
日本の正義・倫理・規範・疑惑等々婉曲的に発信。

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」は原文をかなり意訳したもの        ベストセラー作家百田尚樹著 新版「日本国紀」より

2023-10-01 12:37:33 | 日記
 幻冬舎文庫 百田尚樹著新版「日本国紀」上下を読了。百田尚樹氏は新しい政党をいま立ち上げるために多忙な日々を送っている有名な作家である。

 狩猟生活の縄文時代より平成から令和まで、まさしく日本の通史。歴史本は筆者の切り取りの視座により保守側かリベラル側、支配者側か被支配者側か、などなどの立ち位置によって真逆に歴史事実を捉え表現される傾向があり、少なくとも複数の著者の歴史本に目を通すことが、その時代の真実をより明確に認識できる。

 日本の国は連綿と続いており、革命らしきものが起こっていない国なのでドラスティックに変化してきたとはいえない。通史を学ぶ意味は、事が起こる原因を把握理解でき、事の結果の必然認識が容易にできること尽きる。通史は総論であり、各時代や個々の事件などは各論に当たるともいえる。
夥しい数の参考文献を読破され具体的で平易な表現に記述していて、史実を俯瞰的に捉えることが可能となる書物に仕上がっている。是非読まれることを勧めたい。

 その著書の次の一文に心を鷲掴みにされた。
 「『日本が戦争(太平洋戦争)への道を進まずに済む方法はなかったのでしょうか』ーーーーー。私たちが歴史を学ぶ理由がここにある」。
先人が汗水そして血を流した歴史を現代に生きる人々も真剣に真摯に向き合い深く考察することが新しい知見を生み出し良い方向に導くようになる。

 21世紀に入って予想さえできなかったロシアによるウクライナ侵攻が勃発したいま、アジアのきな臭い情勢が気がかりになる。煽っている政治家もいるようだが、日本国紀を読み解くと、いくつかの判断ミスが傷口を広げ、戻れないところに達して戦争に至っているようだ。
個人と個人の関係も国と国との関係も同様であり、いくつかの不具合や齟齬が端緒になって修復不可能な状態に至って個人なら喧嘩や暴力事件、国家間なら戦争に発展するのである。国家間の交流や政治的な交渉などを担うのは政治家や外務省等の官僚等々であるので、これらの方々が認識・理解している歴史的知識や情報が、いろいろな段階での判断や決断に活かされることになる。日本史のみならず世界史の歴史認識も当然保持しておくことが国を正しい方向に導くことになる。

 ところで表題に記述されている言葉が、ドイツ名宰相、鉄血宰相オットー・フォン・ビスマルク、プロイセン国首相で初代のドイツ首相が言ったといわれている。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」はご存じの方が多いと想像できるが、これは原文をかなり意訳したもので、正確に訳すと次のような文章になる。
「愚かな者は自分の経験から学ぶと信じているばかりだ。私は最初から自分の過ちを避けるために、他人の経験から学ぶことを好む」。これが文章に忠実に翻訳したもののよう。(新版「日本国紀」下202頁)
 
 このことは、歴史本に学ぶことは当然であるが、そのなかでも先達の経験から学ぶことであり、小説や人物論、映画等々からも学んで理解し、知識として悲劇を避ける術や方策を会得しておくことが国民の犠牲を避けることができるのである。教養の高い政治家や国民が求められる所以でもある。

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