第11場[9月下旬、大宮郷警察署の署長室。 鎌田署長らのいる所に、高岸善吉、落合寅市の他、数人の農民代表が入ってくる。]
高岸 「署長、きょうは最後のお願いに来ました」
鎌田 「さあ、どうぞ」(蒲田が席を勧めると、高岸、落合ら全員が着席する)
高岸 「すでに再三お願いに来ましたが、きょうは秩父28カ村の代表としてわれわれが参上したものです。 各村の総代の委任状をここに持って来ました。従って、 . . . 本文を読む
第6場[9月初旬、上吉田村にある日下庄右衛門の家。 座敷に庄右衛門の遺体が横たわっており、妻のミツ、娘のハルが傍らで嘆き悲しんでいる。そこへ、息子の藤吉が慌ただしく駆け込んでくる。]
藤吉 「父さんがほんとに亡くなったのか!」
ハル 「兄さん、遅いじゃないの。これを見て・・・」(ハルが泣き伏す)
藤吉 「何ということだ。(遺体の側に駆け寄って)父さん! 父さんたらっ! 何で死んだんだ!」(暫 . . . 本文を読む
第3場[8月中旬、上吉田村にある高利貸し・山中常太郎の家。 常太郎と妻のヨネ。]
ヨネ 「あなた、借金をした農民がきょうも何人かやって来て、ご主人に会わせてくれとか、返済を延期してほしいなどと言ってきましたよ」
常太郎 「まったく困ったものだ。 返済は延期できないと、この前はっきりと言っておいたのに。ほんとに図々しい奴らだな。借用証書にも返済期限がちゃんと書いてあるじゃないか」
ヨネ 「1年 . . . 本文を読む
〈はじめに〉
このレーゼドラマ(読むための戯曲)はフィクションではあるが、もとより史実に基づくことに留意している。私が最も参考にした著作は、「秩父事件」(井上幸治著・中公新書)と「秩父困民党」(井出孫六著・講談社現代新書)である。他の参考文献・ビデオ、映画などは以下の通りである。
「秩父事件〈佐久戦争〉を行く」(上條宏之編・銀河書房)、「秩父コミューン伝説」(松本健一著・河出書房新社)、「秩父 . . . 本文を読む