カトリヤンマ 生態写真集・成熟過程および♀の個体差の検証編(2013~20) 編集2021.2
成熟に至る過程における複眼と腹部斑紋の色の変化に着目し、♀は成熟時の個体差についても写真上で比較した
♂成熟 暗い所で休止するので殆どストロボ撮影になるが、大きめの複眼と腹部第2節の水色がストロボ光に映える
暑い日、探雌行動を休止してぶら下がった♂
2020.9.8 栃木県
♂の特徴である第2節の水色部分を除いて腹部背面の斑紋は黄緑色である
2016.8.31 栃木県
腹部第2節下部からくびれた3節の側面は綺麗な水色
2020.9.8 栃木県
探雌行動を始める頃
2013.8.15 栃木県
自然光での撮影機会は稀である
2017.8.27 栃木県
探雌飛翔後、高さ1mもない低木の枝に静止 日光を浴びて湿地で♀を待つ終盤の個体
2015.10.22 埼玉県
♂の成熟過程 複眼と胸部、腹部の色の変化、一時期出現する腹部第3節背面の水色の斑紋を検証する
複眼、胸部、腹部が色づく前の未成熟個体 胸部から腹部第3節前半に至る側面は淡褐色および白色
雨中の林で成熟を待つ♂ 7月下旬の同じ日の撮影でも成熟度合は多様である
複眼が透明になり始め腹部背面の斑紋が明瞭に 2節から8節各中間の髭状の斑紋は黄緑色、各節の点状の斑紋は白色に近い
腹部2、3節側面についても水色になる前で白色に近い
複眼が色づく頃、腹部第2節背面後部の斑紋が水色になり、ほぼ同時に3節後部の点状の斑紋も水色になる
2017.7.29 栃木県
2016.7.24 栃木県
腹部第2、3節側面が水色になり、3節背面後部の斑紋も水色の段階 8月下旬の撮影
2017.8.27 栃木県
以上のとおり、第2節後部の水色の斑紋が明確になる時期に、3節後部の点状の斑紋も一時的に水色になる
3節以下の点状の斑紋で水色になるのは3節のみで、他はほぼ白色の状態から黄緑色に変色するようである
ほぼ成熟し腹部各節背面の斑紋が黄緑色に変色する過程 3節後部の点状の斑紋は水色のまま
2016.7.24 栃木県
改めて成熟♂ 胸部と腹部2節後部の斑紋以外、背面に水色部分は見られない
2019.8.11 栃木県
2016.8.31 栃木県
寄合う未成熟 7月中は♂♀問わず寄合って休止る光景を目撃する 好条件の所に集まってくる結果と思われる
7月上旬 未成熟3♂
未成熟2♂
2018.7.9 栃木県
7月下旬 成熟度合が異なる2♀
2016.7.24 栃木県
生殖活動前の成熟♂と未成熟♀(右)
2017.7.29 栃木県
♀の成熟過程 複眼と胸部、腹部の色は♂と同様に変化 一時期、腹部第2、3節背面の斑紋と側面が水色になる
複眼、胸部、腹部が色づく前 胸部から腹部3節側面の淡褐色部分および腹部背面の斑紋は成熟すると黄緑色
2016.7.24 栃木県
2017.7.29 栃木県
腹部2節から7節の各中間にある髭状の斑紋が黄緑色になりつつある段階 各節後部の点状の斑紋はほぼ白色
複眼の透明度が増す頃、腹部2節後部の点状の斑紋が水色になる 3節以下はほぼ白色に見える
複眼が色づき始め、3節後部の点状の斑紋も水色になる 明瞭ではないが、比較すると4節以下とは異なる
2014.7.29 栃木県
腹部側面は2節が水色になり、続いて3節も黄褐色から一部が水色になる 4節以下は黄褐色
2015.7.25 栃木県
成熟間近 2、3節背面の後部の点状の斑紋が水色で4節以下の同斑紋はほぼ白色
2、3節側面にも水色部分が認められる
2016.7.24 栃木県
以上の♀はすべて7月下旬の撮影 腹部第2、3節の背面後部の点状の斑紋と側面が水色の時期があることがわかる
いずれも成熟時は黄緑色か黄色になる 背面の斑紋については、♂の第3節の変色と同様の現象である
ほぼ成熟し腹部の水色の斑紋が黄緑色になる過程 9月初旬の撮影で尾毛が折れていない個体
2014.9.4 栃木県
以下は成熟♀ 腹部背面、側面に水色の斑紋は見られない
2017.8.27 栃木県
腹部斑紋の黄色みが強い個体
2016.8.31 栃木県
成熟♀の複眼の色 ♂の複眼の色に個体差はないが、♀の複眼は青みをおびたものから黄緑、緑、オリーブ色等多様である
♂とほぼ同色の青みをおびた複眼の♀ 腹部背面の斑紋は♂に比べ総じて黄色みが強い
2020.9.8 栃木県
2018.10.6 埼玉県
青みをおびた複眼 ♂と比較すると黄色の部分が目立つ
2017.8.27 栃木県
青みのある複眼を別角度で比較 青色部分は限られる
2016.10.20 埼玉県
青みをおびた複眼の♀に着目しがちであるが、珍しい存在でなく普通に見られる 以下、多様な色の複眼の♀を並べた
複眼が明るい黄緑色の♀ 青色部分は認められない
2017.8.27 栃木県
2017.10.4 埼玉県
複眼が黄色みの強い個体 腹部斑紋も黄色が目立つ
2016.10.7 埼玉県
複眼の緑色が強い個体
2016.7.24 栃木県
2016.10.14 埼玉県
複眼がオリーブ色の個体 以下の撮影時期はすべて10月であるが、老熟との関連性は不明
2020.10.24 埼玉県
2017.10.18 埼玉県
2018.10.6 埼玉県
複眼の一部が角度によって褐色に見える個体
2016.10.14 埼玉県
複眼、胸部が褐色の個体
2019.10.16 埼玉県
水色の部位が残る成熟♀ 成熟後においても腹部第3節側面が水色の個体が稀に見られる
改めて成熟前の♀ 既述したとおり腹部2、3節の背面と側面に水色部分が見られる時期の個体
2016.7.24 栃木県
成熟時、2、3節側面が♂同様に水色の♀の存在を検証し、3節に水色が残る個体を確認した 2節は黄緑色である
背面に水色部分は見られず、複眼の色との関連性はない 以下、通常の個体との差異を産卵休止の写真で比較した
通常の個体 老熟♀の側面 胸部から腹部3節前半まで黄緑色
2020.10.24 埼玉県
通常の個体 一般的な♀の側面 同上
2018.10.16 埼玉県
腹部3節が水色の個体 拡大すると2節との差異が分かる
2018.10.8 千葉県
比較対象として思いうかぶのはギンヤンマの♂型の♀であるが、こちらは2節も水色である
参考 <ギンヤンマ>♂型♀ 2、3節が水色
2018.8.10 埼玉県
8年間に亘って撮影した産卵写真のなかで、3節側面が水色の個体は1例のみであった 稀な存在と思われる
3節側面前半が水色の♀の産卵
2018・10.6 埼玉県
カトリヤンマ 生態写真集(2010~20) 編集2021.2
交尾態 交尾は暗い林内でひっそり行われ多産地でないと目撃は困難である 産卵中の交尾成立は滅多にない
栃木の観察地では、羽化直後に集まって成熟を待ち交尾に至る その後♀は徐々に分散し近くの湿地で産卵する
当所の配偶行動のピークは8月下旬から9月上旬で、♂は地表から樹上に至るまで丹念に♀を探して交尾する
気温が35℃近くまで上昇すると探雌行動が不活性になり、ピーク時でも交尾を全く見ない日がある
2013年、栃木の多産地を知って交尾態を初めて撮影した
2013.9.12 栃木県
林内に踏み込んだ途端に樹上に飛ぶので、静止あるいは飛翔する交尾態の着地を見つけることが撮影の条件になる
2014.9.6 栃木県
これまでの観察で交尾時間が最も長い約4時間に及んだ交尾態
2015.8.22 栃木県
2019.9.1 栃木県
時に集中して目撃する日がある
♂とほぼ同色の複眼の♀の交尾態
2018.8.30 栃木県
10月上旬の埼玉の湿地 産卵に飛来した♀を捕捉した数少ない例で交尾時間は3時間を超えた
2019.10.9 埼玉県
連結態 産卵中の♀を連結しても大概は交尾に至らない ♂は失敗するとあっさり飛び去るので連結態の撮影は稀である
前5日間が雨で漸く晴れた10月中旬の日、気温は20℃に達していないが、♂が次々に交尾を仕掛ける現象を目撃した
12時半頃から約40分間、♂数頭が入れ替わってホバリングするなか、13時頃に♀が一斉に飛来して産卵を始めた
♂にとっては格好の交尾機会であり、何頭かが約20分間に数回♀を連結した ただし交尾の成立はなかった
♂が産卵中の♀連結 ♀が抵抗して♂は即刻飛び去る
草のなかに落下した連結態
この後、草叢から♀を引張り出したが、抵抗されて飛び上れず交尾を断念
草叢で縺れ合う連結態 連結しているものの♀が激しく抵抗して♂が下になった状態
2017.10.18 埼玉県
田圃の産卵 当初の観察地の秩父では草叢に潜るので撮れず、2013年に千葉の谷津でやっと産卵らしい撮影ができた
産卵が集中するのは稲刈り後の決まった水田で、通常は最初の♀が偵察するように飛来して数十分後に一斉に産卵が始まる
ピークの時間帯は夕暮れ近くで、気温にもよるが、時期とともに早くなる 当所では9月中旬から10月上旬の産卵が多い
水溜り近くを嫌い畦や掘り起こした土で産卵する 敏感で接近しての撮影は容易でない
2014.10.4 千葉県
2017.10.12 千葉県
当所では青みをおびた複眼の♀を目撃することが多い
2013.10.3 千葉県
2015.9.22 千葉県
産卵場所を移動してホバリング
2014.9.23 千葉県
2013.10.3 千葉県
地上2m程の高さで数十秒間ホバリングして泥を落とすクリーニング行動をよく目撃するが、狙ってもピントが合わない
目の高さでホバリング
2015.10.2 千葉県
着地前のホバリング
2017.10.12 千葉県
2018.10.8 千葉県
湿地の産卵 2015年から埼玉の湿地で観察を始めた 千葉の水田のように一定の時間帯に集まって産卵することはない
当所では産卵場所での探雌行動を度々目撃する(後述) 産卵は朽木か泥土に行い、10月中旬が盛期で11月上旬まで続く
秋の深まりとともに時間が早くなり、10月下旬になると15時半を過ぎての産卵は稀 また15℃以下ではまず飛来しない
湿り気の多い暗い湿地、乾燥の進んだ明るい湿地双方で産卵するが、前者では個体密度が高くなって落着くことが多い
明るい湿地の朽木に産卵
2020.10.12 埼玉県
かなり暗い典型的な産卵場所
2016.10.18 埼玉県
湿気が強く、年によって白いキノコが生える
2017.10.18 埼玉県
複眼の色は綺麗に見えてもかなり老熟した個体 産卵意欲が旺盛で途中休止しながら2時間以上に亘って産卵した
反対側に回って接近しても動かない 朽木に摑まって土に産卵
2019.10.16 埼玉県
青みをおびた複眼の♀
2018.10.6 埼玉県
胸部、複眼の褐色が目立つ老熟♀
2020.10.24 埼玉県
産卵場所を移動してホバリング
2017.10.18 埼玉県
2016.10.20 埼玉県
♂を警戒したり驚いて産卵を中断すると近くの梢に避難するが、数分で再開することは少なくやや長い休止になることが多い
以上の写真で見られるとおり、♀の複眼の色は個体差が大きく別編で比較する 本編での静止は捕食シーンのみとした
産卵時の捕食 産卵場所を探して飛翔する♀が目前に現われたトンボを捕食するシーンを目撃することがある
アキアカネ♀を捕食
2018.10.16 埼玉県
オオアオイトトンボ連結態の♀を捕食
2020.10.27 埼玉県
ホバリング 縄張り、探雌行動中のホバリングは他種でも見るが、安定するとぶれのない究極の空中停止になる
交尾の目撃が多い栃木では産卵時期までに交尾を済ませるためか、これまで隣接する産卵場所で♂を見たことがない
千葉でも林内での探雌行動は見るが、田圃に♂は飛来しない 双方とも産卵場所でホバリングを目撃しないのが謎である
トンボを撮り始めてそれらしい飛翔を最初に撮影できたが秩父の本種であり、夕方になると大抵ホバリングを目撃した
産卵場所の草叢でホバリングすることが多いが、なかにはすぐに中断し専ら静止して♀の飛来を待つ個体もいる
水が溜まった池状の湿地上で縄張り飛翔を見ると奇異に感じるが、隣接する産卵場所の草叢への♀の通り道である
水面上でのホバリング
2010.10.11 埼玉県
崖の上から撮影した水のない谷間でのホバリング
2011.10.23 埼玉県
水の溜まった湿地を飛ぶ
2014.10.3 埼玉県
乾燥の進んだ草叢で夕日を浴びてのホバリング 飛び去った後、♀が産卵に飛来した
2015.10.9 埼玉県
産卵場所でホバリングを見ない例は既述のとおりであるが、埼玉の産卵観察地では10月半ば以降に配偶行動を目撃する
ホバリングを大別すると、縄張り飛翔して♀を待つものと産卵中の♀を認識して専ら探雌を目的とする二つのパターンがある
総じて前者は長時間のホバリングになり30分を超えることも珍しくない いずれも♀を見つけると掴みかかる
明るい湿地で♀を待つ縄張り行動 産卵場所でもあるが、どちらかというと♀の通り道
2015.10.22 埼玉県
暗い湿地での縄張り行動 一部に日が射す時間帯
付近に♀がいない時の明るい湿地での縄張り行動
2016.10.20 埼玉県
目視が困難な程暗い湿地 低空でホバリングしての探雌行動 湿地の片隅で♀が産卵していた
2018.10.6 埼玉県
光線の当たり具合で複眼の色が微妙に変化する 何度撮っても飽きることがない
2018.10.20 埼玉線