【当たり前の期待を捨てるまで】
をのひなおさんの漫画『明日、私は誰かのカノジョ』の最終巻言いたい放題記事4回目です。
前回はこちら。
↓
・『明日カノ』最終巻言いたい放題・その3。
長年自分を苦しめてきた育児放棄系毒親・愛さんと決着をつけるために一緒に海へ行く承諾をした雪さん。
火傷痕をメイクで隠さずそのままに、大好きなミニスカートは選ばず、シンプルな長袖シャツにスキニーロング丈パンツスタイルという装いです。
ありのままってことだよねえ…。
決戦の舞台は江ノ島。
第3章のヒロイン・彩さんと一緒に来た場所ですね。
顔のコンプレックスに対等な気持ちで向き合い受け入れてくれた彩さんは、雪さんの大切な人。
「なんだ、自分と同じだったんだ」
という言葉をリナちゃんも彩さんも雪さんにかけますが、その心は全く違った…あれは初期だけど良い対比構造でしたよね。
しみじみ。
この場所をおそらく雪さんが選んだのは、彩さんとの絆に勇気をもらうためだったのかな…なんて私は友情を感じ取ってしまいました。
電車の中での親子ラインのやり取りがリアルでうわあ…でございます
「今日時間通りで大丈夫?」
と遅刻され・すっぽかされ慣れてる雪さんが連絡をし、それに愛さんがごめんちょっと遅れる~ごめんね~とヘラヘラ反省ゼロの返信をするという。
遅刻魔・すっぽかし魔ほんとうに嫌だよねえ…。
相手の時間=人生を不当に搾取してるのを当然だと思って…。
(自分の特性だって開き直る人が昨今増えましたが、軽度ADHDだと公表している勝間和代さんは
「そもそも自分が待ち合わせにつくまでの時間を計算できてない、自分の特性を考慮してもっと多く時間をとって行動すれば遅刻しない」
と言っていたぞ)
そんなラインのやりとりをした直後、雪さんは電車の中で見知らぬ幼女に見つめられ、静かに微笑みを返す。
この描写は
「私は幼い私を助けに行く」
という意味なのかなあと。
幼い女の子は可愛く髪を結ってもらい、おそらく隣にはお母さんがいて、欲しかったのに与えてもらえなかった当たり前のケアと愛の象徴でもあるかも。
愛のない母親の名前が愛さん…ほんっとに皮肉が効いた良い名前
さて、遅刻されて浜辺でやーっと落ち合えた親子。
相変わらず愛さんはヘラヘラ。
これは優愛のお父さんと同系統の嫌らしさだと思うので、をのさんのこだわりなんでしょう。
「お母さん 今日は来てくれたんだね」
と嫌味というか、被害を忘れてないよと言葉にしているのには全然気付かないし、隠さず出してきた火傷痕にはぎょっとするけど何も言わずにスルー。
ヘラヘラの悪。
そんな母親に雪さんの寂しい表情の、まあさり気ないけど切ないこと。
雪さんは泣けてきてしまいます。
それでも勇気を振り絞って愛さんに問いかけます。
「なんで私のこと捨てたの?」
弱々しく、頼りなげで、保護を求める幼い瞳。
あーそうだよね、親ってあまりに大きなぜったい権力者で、大きくなってもあの頃に心は戻ってしまうよね…と悲しくなる。
あとの展開は毒親あるある・皆さんの予想通り、優愛の父親ですでに示されていたとおりの反応です。
愛さんは面倒くさ、と隠さず雪さんを責める。
「今日はさあ、せっかく雪と楽しく過ごそうと思って来たのにぃ、そんなこと言わないでよ」
不機嫌でコントロールしようとしてるんですよね。
いつものやつ。
雪さんは一瞬絶望するけど、頑張って言葉を吐き出し続ける。
やられてきた被害を全部訴える。
子どもらしい弱く遠慮した言葉で。
もちろん、相手が話し合えるまともな相手ならそもそも全ての悲劇は起きないので、愛さんの反応はひどいものです。
「知らないよ!
なんなのもう その火傷の痕もわざと見せつけるみたいに あてつけのつもり!?」
ひどいね…老いた肉体に幼い精神が入って、権力構造で逆らえない者を攻撃するって本当に最低。
話が通じないとわかっているけど、雪さんは言葉を続ける。
「私はずっと生き辛かった
伯父さん夫婦は実の子でもない私を育ててくれて感謝もしてるけど、埋められない寂しさがあった
本当のお母さんがいるのに気にかけてすらもらえない
今のお母さんに気まぐれで中途半端に優しくされたって意味ない
昔に戻ってちゃんと一から私を愛してよ!」
もちろん返しはこれ
「そんなことできるわけないじゃん!」
鬱陶しそうないやらしい表情がキツイ。
「一番大事にしてくれるはずのお母さんがぶったり捨てたりしたから、そんなことされる自分って一体なんなんだろうって、自分の価値がわからない。
人付き合いもうまくいかない、他人がずっと怖くて私なんかとは別の世界に生きてるように思う。
そういう思い込みで大事な人のこと切り捨てたりした。
私が自分に価値を感じないから、私なんかとの関係断ち切ったって相手は対して傷つけないだろうって…。
でもきっと違った」
リナちゃんと太陽くんの縁を思い浮かべています。
翼くんがいなかったらリナのことずっと無視してたって言ってたもんね…。
辛い告白に愛さんは引き続き醜い表情で攻撃する。
「人のせいにしないで!
うじうじしてんのはあんたのせい!
火傷だって自分で勝手にお湯被ったんじゃん!(←あんたと遺伝子上の父親が育児放棄したからです)
あたしなんか大学出てないのに!
勝手に大学行って学費要求してきて金金卑しいと思わないわけ!?
綺麗な顔に産んでやったんだから感謝してよね!」
うん…顔と金なんだよねえ、愛さんの判断基準。
そしてそれ以前の依存対象が男…まあ日本らしい洗脳の結果なんだろうけど。
あ、ここで愛さんの仕事はホステスさんだと明かされます。
だからタクシー移動してまとまった金も持っていたのね。
ホステスさんの仕事は向いているんだな。
さあ、ここからクライマックス。
「私だって 全部お母さんのせいにしてる自分も
お母さんのことも 大っ嫌いだよ!!」
うう、なんて辛い言葉。
泣き叫んで訴えます。
「信頼関係なんか私達の中にあるわけない、あなたは私を捨てて何もしてくれなかったんだから。
謝罪すらしてくれないなら、学費くらいでしか気持ちを量れない。
大学は育ててくれた伯父さん達に顔向け出来るように、お母さんがそんなんだから、あの親の子どもだって言われないように頑張ってきたんだ!!」
雪さん…やっぱりそうだったのか…。
「やりたいことも夢もない」
と言っていたのに奨学金=借金背負ってまで大学に出たのは学歴身に着けてお金をまっとうに稼ぐためだったんですね。
「あの親」
という言葉に自分への攻撃を感じ取った愛さんは昔のように雪さんをぶった。
ヘラヘラでかわせなくなったら言葉の暴力、それもきかなかったら暴力、全くもってありふれたムカつくパターン。
その仕打ちに雪さんはまた傷つけられ、涙がさらに溢れたけれど力を振り絞って愛さんを全身で押し倒します。
さりげないけどこの倒し方がリアルだなーって私は共感しちゃった。
怖い・強い・でかい相手には全体重かけるしかない。
この場合は物理的じゃなく精神的なものだけど。
愛さんの返しは昔と変わらず…。
「何すんの!
これ高かったのに!」
バッグらしい。
昔リップ雪さんが壊しちゃって暴力振るった時と同じです。
ああ、変わらない。
何も変わらず話も通じない、知ってたよ、きっと雪さんはこう思ったんじゃないかな。
リナちゃんにもらった勇気を思い出して、どこかで期待してたから踏ん切りがつかなかったと思ってから、新しく自分の言葉で最後にこう告げます。
「私は 私自身の意思で 今度は 私が
お母さんのことを捨てる
私お母さんに期待しすぎてたんだ
私が欲しかったものを
お母さんが与えてくれることは
この先もきっと無いから
もう 諦める」
…。
これだ、ほんっとにこれだよ。
雪さんは期待を捨てられなかった。
期待するのは当たり前だよ、たった一人の親なんだもん(遺伝子の父親が誰なのかも雪さんは教えられてない、多分)。
愛されたいよね…大切にされたいよね…。
雪さんたったの20年ちょいしか生きていないんだし…。
でも諦めるしかない、だって相手こいつなんだもの。
捨てられた愛さんは自分が下に扱われたと感じたのかまた激昂して
「あたしがいなければあんたも一人なんだからね!!」
と去る背中に叫ぶ。
そしてあてつけに人に連絡取って
「自分はこんなに愛されてる、お前なんかと違うんだ」
と雪さんにマウント取り。
幼くて痛くて辛いったら。
おそらくブロックしてた自分を好いてる男…お客さんなんだろうなあ。
雪さんは振り向かない。
凛と背筋を伸ばしてゆっくりと去ります。
その表情は傷ついて、涙を流していても。
これが彼女の選んだ決着。
雪さん、お疲れ様。
本当に本当によく頑張られました…。
ううう。
クライマックスはここまで。
次回は結末のその後!
をのひなおさんの漫画『明日、私は誰かのカノジョ』の最終巻言いたい放題記事4回目です。
前回はこちら。
↓
・『明日カノ』最終巻言いたい放題・その3。
長年自分を苦しめてきた育児放棄系毒親・愛さんと決着をつけるために一緒に海へ行く承諾をした雪さん。
火傷痕をメイクで隠さずそのままに、大好きなミニスカートは選ばず、シンプルな長袖シャツにスキニーロング丈パンツスタイルという装いです。
ありのままってことだよねえ…。
決戦の舞台は江ノ島。
第3章のヒロイン・彩さんと一緒に来た場所ですね。
顔のコンプレックスに対等な気持ちで向き合い受け入れてくれた彩さんは、雪さんの大切な人。
「なんだ、自分と同じだったんだ」
という言葉をリナちゃんも彩さんも雪さんにかけますが、その心は全く違った…あれは初期だけど良い対比構造でしたよね。
しみじみ。
この場所をおそらく雪さんが選んだのは、彩さんとの絆に勇気をもらうためだったのかな…なんて私は友情を感じ取ってしまいました。
電車の中での親子ラインのやり取りがリアルでうわあ…でございます
「今日時間通りで大丈夫?」
と遅刻され・すっぽかされ慣れてる雪さんが連絡をし、それに愛さんがごめんちょっと遅れる~ごめんね~とヘラヘラ反省ゼロの返信をするという。
遅刻魔・すっぽかし魔ほんとうに嫌だよねえ…。
相手の時間=人生を不当に搾取してるのを当然だと思って…。
(自分の特性だって開き直る人が昨今増えましたが、軽度ADHDだと公表している勝間和代さんは
「そもそも自分が待ち合わせにつくまでの時間を計算できてない、自分の特性を考慮してもっと多く時間をとって行動すれば遅刻しない」
と言っていたぞ)
そんなラインのやりとりをした直後、雪さんは電車の中で見知らぬ幼女に見つめられ、静かに微笑みを返す。
この描写は
「私は幼い私を助けに行く」
という意味なのかなあと。
幼い女の子は可愛く髪を結ってもらい、おそらく隣にはお母さんがいて、欲しかったのに与えてもらえなかった当たり前のケアと愛の象徴でもあるかも。
愛のない母親の名前が愛さん…ほんっとに皮肉が効いた良い名前
さて、遅刻されて浜辺でやーっと落ち合えた親子。
相変わらず愛さんはヘラヘラ。
これは優愛のお父さんと同系統の嫌らしさだと思うので、をのさんのこだわりなんでしょう。
「お母さん 今日は来てくれたんだね」
と嫌味というか、被害を忘れてないよと言葉にしているのには全然気付かないし、隠さず出してきた火傷痕にはぎょっとするけど何も言わずにスルー。
ヘラヘラの悪。
そんな母親に雪さんの寂しい表情の、まあさり気ないけど切ないこと。
雪さんは泣けてきてしまいます。
それでも勇気を振り絞って愛さんに問いかけます。
「なんで私のこと捨てたの?」
弱々しく、頼りなげで、保護を求める幼い瞳。
あーそうだよね、親ってあまりに大きなぜったい権力者で、大きくなってもあの頃に心は戻ってしまうよね…と悲しくなる。
あとの展開は毒親あるある・皆さんの予想通り、優愛の父親ですでに示されていたとおりの反応です。
愛さんは面倒くさ、と隠さず雪さんを責める。
「今日はさあ、せっかく雪と楽しく過ごそうと思って来たのにぃ、そんなこと言わないでよ」
不機嫌でコントロールしようとしてるんですよね。
いつものやつ。
雪さんは一瞬絶望するけど、頑張って言葉を吐き出し続ける。
やられてきた被害を全部訴える。
子どもらしい弱く遠慮した言葉で。
もちろん、相手が話し合えるまともな相手ならそもそも全ての悲劇は起きないので、愛さんの反応はひどいものです。
「知らないよ!
なんなのもう その火傷の痕もわざと見せつけるみたいに あてつけのつもり!?」
ひどいね…老いた肉体に幼い精神が入って、権力構造で逆らえない者を攻撃するって本当に最低。
話が通じないとわかっているけど、雪さんは言葉を続ける。
「私はずっと生き辛かった
伯父さん夫婦は実の子でもない私を育ててくれて感謝もしてるけど、埋められない寂しさがあった
本当のお母さんがいるのに気にかけてすらもらえない
今のお母さんに気まぐれで中途半端に優しくされたって意味ない
昔に戻ってちゃんと一から私を愛してよ!」
もちろん返しはこれ
「そんなことできるわけないじゃん!」
鬱陶しそうないやらしい表情がキツイ。
「一番大事にしてくれるはずのお母さんがぶったり捨てたりしたから、そんなことされる自分って一体なんなんだろうって、自分の価値がわからない。
人付き合いもうまくいかない、他人がずっと怖くて私なんかとは別の世界に生きてるように思う。
そういう思い込みで大事な人のこと切り捨てたりした。
私が自分に価値を感じないから、私なんかとの関係断ち切ったって相手は対して傷つけないだろうって…。
でもきっと違った」
リナちゃんと太陽くんの縁を思い浮かべています。
翼くんがいなかったらリナのことずっと無視してたって言ってたもんね…。
辛い告白に愛さんは引き続き醜い表情で攻撃する。
「人のせいにしないで!
うじうじしてんのはあんたのせい!
火傷だって自分で勝手にお湯被ったんじゃん!(←あんたと遺伝子上の父親が育児放棄したからです)
あたしなんか大学出てないのに!
勝手に大学行って学費要求してきて金金卑しいと思わないわけ!?
綺麗な顔に産んでやったんだから感謝してよね!」
うん…顔と金なんだよねえ、愛さんの判断基準。
そしてそれ以前の依存対象が男…まあ日本らしい洗脳の結果なんだろうけど。
あ、ここで愛さんの仕事はホステスさんだと明かされます。
だからタクシー移動してまとまった金も持っていたのね。
ホステスさんの仕事は向いているんだな。
さあ、ここからクライマックス。
「私だって 全部お母さんのせいにしてる自分も
お母さんのことも 大っ嫌いだよ!!」
うう、なんて辛い言葉。
泣き叫んで訴えます。
「信頼関係なんか私達の中にあるわけない、あなたは私を捨てて何もしてくれなかったんだから。
謝罪すらしてくれないなら、学費くらいでしか気持ちを量れない。
大学は育ててくれた伯父さん達に顔向け出来るように、お母さんがそんなんだから、あの親の子どもだって言われないように頑張ってきたんだ!!」
雪さん…やっぱりそうだったのか…。
「やりたいことも夢もない」
と言っていたのに奨学金=借金背負ってまで大学に出たのは学歴身に着けてお金をまっとうに稼ぐためだったんですね。
「あの親」
という言葉に自分への攻撃を感じ取った愛さんは昔のように雪さんをぶった。
ヘラヘラでかわせなくなったら言葉の暴力、それもきかなかったら暴力、全くもってありふれたムカつくパターン。
その仕打ちに雪さんはまた傷つけられ、涙がさらに溢れたけれど力を振り絞って愛さんを全身で押し倒します。
さりげないけどこの倒し方がリアルだなーって私は共感しちゃった。
怖い・強い・でかい相手には全体重かけるしかない。
この場合は物理的じゃなく精神的なものだけど。
愛さんの返しは昔と変わらず…。
「何すんの!
これ高かったのに!」
バッグらしい。
昔リップ雪さんが壊しちゃって暴力振るった時と同じです。
ああ、変わらない。
何も変わらず話も通じない、知ってたよ、きっと雪さんはこう思ったんじゃないかな。
リナちゃんにもらった勇気を思い出して、どこかで期待してたから踏ん切りがつかなかったと思ってから、新しく自分の言葉で最後にこう告げます。
「私は 私自身の意思で 今度は 私が
お母さんのことを捨てる
私お母さんに期待しすぎてたんだ
私が欲しかったものを
お母さんが与えてくれることは
この先もきっと無いから
もう 諦める」
…。
これだ、ほんっとにこれだよ。
雪さんは期待を捨てられなかった。
期待するのは当たり前だよ、たった一人の親なんだもん(遺伝子の父親が誰なのかも雪さんは教えられてない、多分)。
愛されたいよね…大切にされたいよね…。
雪さんたったの20年ちょいしか生きていないんだし…。
でも諦めるしかない、だって相手こいつなんだもの。
捨てられた愛さんは自分が下に扱われたと感じたのかまた激昂して
「あたしがいなければあんたも一人なんだからね!!」
と去る背中に叫ぶ。
そしてあてつけに人に連絡取って
「自分はこんなに愛されてる、お前なんかと違うんだ」
と雪さんにマウント取り。
幼くて痛くて辛いったら。
おそらくブロックしてた自分を好いてる男…お客さんなんだろうなあ。
雪さんは振り向かない。
凛と背筋を伸ばしてゆっくりと去ります。
その表情は傷ついて、涙を流していても。
これが彼女の選んだ決着。
雪さん、お疲れ様。
本当に本当によく頑張られました…。
ううう。
クライマックスはここまで。
次回は結末のその後!