読書感想90 シカゴよりこわい町<o:p></o:p>
著者 リチャード・ペック<o:p></o:p>
生年 1934年<o:p></o:p>
出身地 アメリカ合衆国イリノイ州ディケーター<o:p></o:p>
出版年 1998年<o:p></o:p>
本書の受賞歴 ニューベリー賞オナー受賞<o:p></o:p>
全米図書賞児童書部門最終候補<o:p></o:p>
第49回産経児童出版文化賞受賞<o:p></o:p>
邦訳出版年 2001年<o:p></o:p>
出版社 (株)東京創元社<o:p></o:p>
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感想<o:p></o:p>
シカゴに住む幼い兄妹がイリノイ州の田舎の祖母の家で夏休みを過ごす。兄は9歳で妹は7歳の1929年から1935年までの7年間。田舎のおばあちゃんは周囲の人々の思惑や常識を無視し、時には保安官の命令や法律も無視し、正しいと思ったことや、一泡吹かせてやりたいと思ったことや、したいことを、誰もが思いつかないような豪胆な方法でやってのける。おばあちゃんは農家の暮らしの中でほとんどなにもかも手作りする。<o:p></o:p>
都会育ちの兄妹はおばあちゃんの手伝いに、常識はずれな行動に駆り出され、いつしか自分達も豪胆な行動をとるようになる。おばあちゃんは弱い者の味方だが、自分も全くお金も権力もない。あるのは体力と知力と豪胆さである。<o:p></o:p>
二夏の逸話だけ要約してみよう。<o:p></o:p>
ショットガン・チータムのいうろくでなしの老人が死んで、新聞記者が「無法者の老ガンマン、貧民墓地に眠る」という記事にしようとしていると聞いたおばあちゃんは、記者にショットガン・チータムを南北戦争の英雄に仕立て上げ、葬式も行われないはずだった遺体を引き取っておばあちゃんの家から出棺すると言い出す。そしてその夜、記者や町の人々が弔う中で、蓋の開いた棺にかけられた幕が内側から引っ張られるの見たおばあちゃんは、「こら、ショットガン!おまえさんはもう充分に生きた。もうおしまいだよ!」と言って棺に向かってウィンチェスターをぶっ放す。町の人々も記者も逃げて行ってしまう。そしておばあちゃんの家の猫が棺の中から出てくるのだった。<o:p></o:p>
更にすごいのは、浮浪者に食事を提供する話だ。大恐慌時代で浮浪者があふれ、おばあちゃんの町にも浮浪者がたくさんやってくる。しかし、町の保安官は浮浪者が町に留まることを許さず追い立てている。おばあちゃんは町の上流階級が集う釣り・射撃クラブの所有地の魚釣りを禁止されている川に入ってナマズをたくさん捕り、クラブハウスで酔っぱらっている保安官や実業家の目の前を保安官のボートで通り過ぎる。そして、その晩はナマズの料理、じゃがいもと玉ねぎを揚げたもの、自家製ビールを携えて、線路沿いに料理を運び浮浪者たちにふるまった。保安官は飛んできたが、証拠の料理は浮浪者たちの腹の中。<o:p></o:p>
はちゃめちゃなおばあちゃんだけど、勇気と不可能を可能に変えるパワーが溢れていて、幼い兄妹も毎夏おばあちゃんと過ごす夏を楽しみにするようになる。この楽しいおばあちゃんにもアメリカの開拓時代の溌剌さとユーモアを感じる。田舎はアメリカも日本も子供にとっては冒険をそそのかす魔法があふれている。
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