翻訳 朴ワンソの「裸木」37<o:p></o:p>
120頁3行目~121頁30行目<o:p></o:p>
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ミスギはショーケースに額を当てるように深くうつぶせになった。黒い頭を二分する白い分け目が、まっすぐで清楚だ。今度は私がミスギのために深くため息をついた。<o:p></o:p>
彼女もオクヒドさんも果てしなく遠く感じた。彼らは今<o:p></o:p>
憂いに閉ざされているというよりは生きることを止めて、停止した時間の中で静まり返って溶けていて、私だけがイライラした時間の流れに押し流されているようだ。<o:p></o:p>
彼らと私がそれぞれ違う時間の中にいるという思いで、私は花冷えのようなぞくぞくする寂しさを感じた。<o:p></o:p>
こっけいなGIがポップコーンぽりぽり食べながら、陳列された肖像画をしきりに覗き込んだ。<o:p></o:p>
「May I help you?」<o:p></o:p>
私は商売を始めた。<o:p></o:p>
徐々に午後のお客で売場が混雑し始めた。ミスギも私もヤンキーを相手によく回らない舌で英語を喋りまくらねばならず、オクヒドさんもいつの間にか絵を描き始めた。<o:p></o:p>
「お姉さん、お姉さんがお昼に言ったことを私は永久に忘れられないわ」<o:p></o:p>
シャッターを下ろした後で、彼女はちょこちょこ私の所に来てお昼の話を続けようとした。<o:p></o:p>
「ごめん。それは恐らく下品な言葉みたい、動物にも使う。私はいつも聞いていて何気なく言ったの。人間は恐らく混血と言うのかしら…」<o:p></o:p>
私は口ごもりながら謝った。私達は一緒に街へ出てどこといったあてもなく歩いた。<o:p></o:p>
「混血でも雑種でも同じことよね。重要なのは私が子供を生むだろうという予言だわ」<o:p></o:p>
「それも予言の中に入るけれど、結婚して子供を生むのは必然よ」<o:p></o:p>
「間違いなくそうだわ。だから心配」<o:p></o:p>
「何…」<o:p></o:p>
彼女はしきりにわかりにくいことを言うようで煩わしかった。私は私と関係のない事から安心して、疲れた体を心ゆくまで揺れ動かしながら、自分のことを考えて、星と商家の灯を見た。そして闇と寒さに自分を投げ出さなければならないし、必ず私一人でしなければならないこともあり、私はかなり忙しい体だった。<o:p></o:p>
「家はどちらなの? バスに乗らなきゃ。私は歩くつもりだけど」<o:p></o:p>
私は彼女のかちかちに凍った手を、温かくバス停へ引っ張って急いだ。彼女が歩けば私も開けた道を行くことができるだろうが、まずは私達がそれぞれ家へ向かっているだけだということをはっきりしておくのだ。<o:p></o:p>
「お姉さん、どうかお願いがあるの。私とちょっと話していかない」<o:p></o:p>
彼女は泣き顔になって、私に密着してきた。<o:p></o:p>
「速く行かなきゃ。お母さんが待っているんじゃない?」<o:p></o:p>
「ふん、待てって言うの。何よ、私が幼い子供だと思っているの? 喫茶店でちょっと休んで話して行こうよ。遅く帰っても関係ないのよ」<o:p></o:p>
私は仕方なくある2階のみすぼらしい喫茶店に彼女と向き合って座った。<o:p></o:p>
冷たい風のせいか、いつもピンク色の彼女の頬が青ざめていた。黒い窓に映った私の顔も疲れている。彼女が今から更にいっそう私を疲れさせるだろうと心配だ。私は窓にこめかみを当てて、目を瞑った。眠気が甘美に押し寄せた。<o:p></o:p>
「お姉さん、コーヒーぬるくなるわ」<o:p></o:p>
彼女は自分のコーヒーは飲まずに、私をせかした。私はぬるい茶碗を手の平で抱えるだけで、そのまっ黒い水を飲むことが何故か耐え難かった。<o:p></o:p>
「お姉さん、米国へ行くのを止めようかしら」<o:p></o:p>
「なぜ?」<o:p></o:p>
私は少し嬉しかった。<o:p></o:p>
「お姉さんのせいで…雑種のせいで…」<o:p></o:p>
「また雑種、混血って。それに米国は混血に対する偏見がまさかここと同じだと言わんばかりね。米国というのは巨大な混血じゃないの?」
ー続ー
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