田園調布の山荘

「和を以て貴しとなす」・・ 日本人の気質はこの言葉[平和愛好]に象徴されていると思われる。この観点から現代を透視したい。

151224 23年前の日記「ブラジルの日系移民の星と出会う」

2015年12月24日 11時42分24秒 | ブラジルと私(ブラジルをかじる)

 Nさんは、研修生たちの顔を見渡してこう言った。その顔には満面に微笑が称えられている。「君達の、作文はじっくりと読ましていただきました。……研修が始まったばかりですから、君達のブラジルでの研修の成果はこれから10ケ月も続くことの中で出てくるものと思いますが、ブラジル研修が終わった時点で、もう一度君達の感想を私に伝えてほしい。1ケ年が君達にとって何をもたらしたのか、これを私は知りたいのです。」
  この約束がリーダー格のO君との間で交わされたのを確認してNさんは、皆の顔を交互に見つめながら次のような言葉を贈られた。非常に長い話なので一部は省略してあるが、だいたい忠実に以下に記す。

       Nさんの言葉
  「みなさん。私は日本の若者を見ていて次のようなことが気にかかるのです。それは、日本の若者たちの多くが、世界は自分たちを中心にして回っていると錯覚しているように見えることです。君達がここに訪ねてきたときの意識にもそれがあったようです。つまり、自分たちを中心にしてブラジルが回っているという……。それは違います。天動説はいけません。ここへきて君達には何かプラスが有りましたか。それを考えることです。
  私には今君達が何を考えているのか良く分かりません。皆同じような表情で個性といったものをあまり感じさせません。友人を作りなさい。永久につながれる友人を作るのです。世界を歩いていった先々で友人を作るのです。
  私はこう結論しています。人間と土さえ作っておけば百姓はなんとかなる。細かい技術的なことはどうでもよいことだ。私が育てたこの学校の卒業生や研修生はアメリカ合衆国に行ってとても高い評価を得ています。彼等は、労働の精神を掴んで帰ってきます。一日に17時間働くことを苦にしない生徒達です。もともと百姓は土曜、日曜に休むなんておかしいのです。君達の祖父母の時代は、飢えがあった時代です。貧乏のつらさ、飢えのつらさを知っているのが君達の祖父母達です。1回試しに君達も2日間飲まず食わずに過ごしてごらんなさい。それ程辛いことはないのです。飢えのつらさは飢えている人達の写真を見たって分かるものではありません。アメリカの中部地方の人達の農業に対する取り組みは凄いものがあります。それはそれは苦労しています。牛を飼っている人達は、飼料の配合一つにしてもコンピュータを使い、一番良い方法に到達しています。4年間も雨の降らないところで綿を作っている人達も私は見てきました。
  ブラジルはアメリカに比べて人間が不作です。人間さえ変えればブラジルは良くなる、必ず良くなるのです。今のブラジルの農民は借金地獄に陥ろうとしているのは、農業というものに対する考え方、哲学がないからだと思います。農産物を金儲けのためだけに作ろうとしているからです。銀行の利子が月30%にもなろうかというときに自分の農地をカタに入れてまで、バクチをやっている。しかも自分はまるで働かない。こうしたことがブラジルの農民の普通の姿になっています。ブラジル人がこのような荒いカネの使い方をしているのと比べて、アメリカ人はたとえ1ドルでも慎重に使います。アメリカの人は 200から 500haもある大農家でもご主人自ら労働をしています。カリフォルニヤは水が無くなりつつあり、地下水に頼った農業になりかかっています。これに反して、例えば、ジュアゼイロの隣のバイヤという地区では、旱魃が常襲しているのに、年間の平均気温が25℃と温暖なのを生かして年から年中立派なブドウを作っています。これは当地の人達の努力の結果です。
  農業というのは自然を生かし、なるべくお金をかけないでできればそれが成功なのです。自分でがむしゃらに儲けよう儲けようとするから、機械を入れたり、施設を立派にしたりするのですが、多くの場合は機械屋さんや施設屋さんが儲かっているだけです。カネのために百姓をするのではない、自然の力が利用出来ず、付加価値が付かないものをやっては駄目です。自分が食うのは二の次という気持ちで取り組むのです。
  私はブラジルは今の面積で無理をせず2倍の収穫があげられると信じています。例えば今牧場となっている広大な土地は、だいたい 2.5haに1頭の放牧という粗い飼育をしていますが、牧場に緑肥を入れ、良い牧草を作れば、もっとたくさん飼えます。大牧場のオーナーの金持ちたちは、飼料を余計にやったら損という考えに囚われてその様な考えを少しも持とうとしません。
  私はブラジルにやってくる人達のブラジルへの評価を注意ふかく聞いていますが、だいたいの傾向をいいますと、「ブラジルは素晴らしい」という絶賛の声と「ブラジルは駄目だ」という酷評とに分れます。オール・オア・ナッシングなのです。私はブラジルの黄金時代はすぐそこに来ていると信じています。いい人さえ作っておけば。カルフォルニア農業は水不足問題があるため、50年もしたら駄目になるのではないかと思います。日本は権威主義のところがあってそれが今後の発展を妨げていくのではないかと思います。
…以下略


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