090116進歩と進化
進歩とは何か。連想するのは技術革新、知識の拡大というようなことである。では進化とは?
英語ではprogress、evolutionとそれぞれ分かれる。著名な生物学者の中村桂子さんは、次の言葉を並べて、進歩と進化の比較対照を行った。
進歩:効率・均一・量・閉鎖系・部分・合理・構造・機能・還元・機械・利便性
進化:過程・多様・質・開放系・全体・矛盾・歴史・関係・総合・生命・継続性
進歩とは、機械が切り開くもので進化とは生命が自己運動した経過である。機械は効率を量で計り稼動範囲は部分的で目的は「手抜き」にある。そして時に刹那的、一過的、暴力的である。近代化というのは進歩であるとすれば手抜きが金銭として対価を得る姿である。進化とは、近代化でも効率化でもなく、手抜きをしないで生命を作る生命現象で継続性が最大の特徴である。
七面倒くさい理屈のようだが、これは非常に含蓄のある分析である。人間は機械ではない。しかし近代化は人間が機械をつかって作業効率をアップしたことにある。この効率のアップで生ずる余裕は何に使われるかと言えば、さらなる効率のアップである。これは際限なく続き、産業革命以後の200年を使って巨大な都市文明を作った。この過程で人間か機械の奴隷になり、機械に際限なく使われるようになった。今日の姿はまさにそれである。人間が機械を使いそれで得た効率は何に使うべきなのかという問題が生じている。現代の課題である。人間が生命である以上、常に「進化」という作用を受ける位置にある。進化という言葉を分析すると、そこに現れる諸処の概念はすべて「温かい」。人間社会は、進化という言葉で代表される概念をしっかり捉えなおし、自己を発見しなければいつまでたっても幸福にはなれないと中村桂子さんの分析は教えているようである。
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