I
ねんむれ ねんむれ 猫ん子
うっつけ うっつけ 兎ん子
猫ん原の 猫ばらみ
夜が更けたら夜這いじゃ 婚(よばい)
穴森様の岩穴ん中
草履持ちが待っちょるき
うちん恋しい人は婿孕み(むこばらみ)
うなぎを捕りよっち川流れ あらま
II
ねんむれ ねんむれ 猫ん子
うっつけ うっつけ 兎ん子
猫ん原の 猫ばらみ
子取り婆さん(産婆)は慣れた手つき
足なか草履をうらがえし
赤子ん臍の緒を竹へごでちょん切る
ミツメ(三日)に名付け、戌の日の悪戯始め
百日たったらモモカ(食い初め)の祝い
III
ねんむれ ねんむれ 猫ん子
うっつけ うっつけ 兎ん子
猫ん原の 猫ばらみ
キチボジン(鬼子母神)で乳もらい
夜泣き、癇(かん)の虫にはネギノ様
よだれ(涎)くりにはアマリジャコ(カマキリの卵)
ねしょんべんにはネズミの黒焼き
それでん駄目なら竹藪にほたりこむ あらま
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参考文献=大分県『竹田市史』(民俗編)。
穴森様=同市の嫗岳地区にある池社のこと。『平家物語』にも登場する古い社。
キチボジン=同市内の円福寺境内にある鬼子母神。
ネギノ様=同市の菅生地区にある禰疑野(ねぎの)神社。『日本書紀』の景行天皇記に記述あり。
(2004)