夕方の6時に
ミュージックサイレンが鳴る
愛らしくて淋しい
いぬのおまわりさん
からすなぜ鳴くのではなく
赤とんぼでもない
ゆうやけこやけでもなく
家路でもなかった
だからときどき
ぼくは迷子になった
古い山の道をだれも知らない
名前を聞いてもわからない
風はただ歌うだけ
ひぐらしの山の上から
盆地の家々の屋根をこえて
さらに山の向こうへと
おまわりさんも知らなかった
逗子の海を愛した詩人を
60歳で念願のヨットを手に入れたが
詩人が風になってしまった
どんなに滑走したとても
風よりのろい MISS YOSHIMI号
風のうたは ピープー
カモメのうたは ギイヨ ギイヨ
きょうも迷子が泣いている
犬のおまわりさんも泣いている
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* 詩人の名は佐藤義美。詩の中に彼の詩の一部を引用しました。
* 童謡『いぬのおまわりさん』はよく歌われているが、作詞家の名を知るひとは殆どいません。
(2008)