今日もいちにち
風の中を歩いてきた
ひとは揺れている雑草の
つくつくぼうしだった
音は声となり
形は姿となり
匂いは香りとなり
色は光となるように
風景は風光とならなければならない
と山頭火は日記に書いた
風を追って
風の明暗をたどった
何を求める風の中ゆく
明と暗を
光と影を
版画家はいちまいの板に探り続ける
風の姿がなかなか見えない
化けものを観ろ
化けものを出せ
志功の言葉が化けものだった (志功=棟方志功)
さて、どちらに行かう風がふく
風の中をゆく人の
風のことばを板に残す
この旅は、果てもない旅だった
すわれば風がある秋の雑草
とめどなく無骨に
風のことばを刻んでゆく
ことばは風に似ていた
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* 詩の中に数か所、山頭火の句を引用しました。
* 山頭火の風を追いつづける、版画家の名は秋山巌です。
(2008)