外国人女性が妊娠した子供を日本人の父親が認知すれば日本国籍を取得できる「胎児認知制度」を悪用し、中国人男女の間にできた子供を不正に認知させたとして、警視庁は13日、いずれも中国籍で、東京都豊島区池袋、無職沈楠(28)と無職王宗(29)、ブローカーの足立区西新井本町、郭清清(34)の3容疑者を有印私文書偽造・同行使などの疑いで逮捕したと発表した。
同庁は、父子の血縁関係の真偽確認に初めてDNA鑑定を活用、日本人の子供ではなかったことを特定した。
同庁幹部によると、3人は昨年1月22日、王容疑者と沈容疑者との間にできた子供について、別の傷害事件で服役中だった川崎市の日本人男性(56)を子供の父親と偽り、この男性が認知したとする偽の認知届を東久留米市役所に提出するなど、子供に日本国籍を不正に取得させた疑い。
この男性の戸籍を調べたところ、王容疑者との間にできた子供を認知したとの記録があった。だが、認知届の提出日に男性は服役中で、郭、沈の両容疑者が、男性の名前を悪用していたことが判明。沈容疑者が男性の紹介料80万円を郭容疑者に支払っていたこともわかったという。沈、王の両容疑者はいずれも日本人との結婚歴があり、日本の定住権を取得していた。調べに対し、「子供が日本国籍を取得すれば、日本で長く暮らせると思った」と供述しているという。
昨年12月の国籍法改正までは、外国人女性が妊娠した胎児だけは、日本人男性の認知で日本国籍を取得できたが、改正後は、出生後に父親が認知した場合も国籍取得が可能になった。(2009年2月13日14時08分 読売新聞)
「認知」をめぐる国籍法を不正に利用しようとして、逮捕者が出ています。日本人と結婚して既に定住権を持っている二人の中国籍外国人の間にできた子供に、ブローカー(中国籍)が介在して、日本人の子供であると虚偽申告をし、不正に日本国籍を取ろうとしたそうです。
認知届提出日に申請された「父」とされる日本人が服役中だったことから、虚偽が発覚したそうですが、もしこの部分のつじつまがうまく合っていたならば虚偽が発覚したかどうかも危惧されるところです。これが氷山の一角でないことを願います。
この件は「胎児認知」申請であったそうですが、昨年12月に国籍法が改正され、胎児だけでなく、出生後でも、日本人父の「認知」さえあれば、子供に日本国籍が付与される改正案が成立しました。問題は父子関係をどのように証明するかという点ですが、今の時点では認知=申告なので、この場合のように簡単に悪用される可能性があると危惧されています。
ブローカーによる偽装結婚ビジネス摘発もニュースでよく見かけるところですが(こちら)、認知をめぐる改正国籍法は、同様に、外国人不法滞留を合法化するための、日本国籍目当ての「虚偽認知」の横行や、仲介者によって日本国籍を商品とするビジネスに悪用されることが心配されています。
改正国籍法には、以下のような「父子関係の科学的な確認方法を導入する当否を検討」という付帯決議がついています。
参院法務委員会で(1)国籍取得届け出状況を半年ごとに国会に報告(2)父子関係の科学的な確認方法を導入する当否を検討-などを盛り込んだ付帯決議を採択した。(こちら)
「日本国籍付与」という国の重大事項に直結している法律が、しばしば悪用されることがあれば、国会議員や政府がこの法律を放置することは許されないことです。「認知」と「国籍付与」にからむこの法律の問題点が注視、再検討されることを強く願います。