夏目漱石の『虞美人草』という本を読み始めた。さすがになんと文章の上手いこと!と驚嘆していたら、こんな文に行き当たった。
「行く路の杉に逼って、暗きより洩るるが如く這い出ずる日影蔓の、足に纏わる程に繁きを越せば、引かれたる蔓の長きを伝わって、手も届かぬに、朽ちかかる歯朶の、風なき昼をふらふらと揺く。」
読んでいて、ん・・?どこかで読んだことがあるような感覚・・、万葉集の時代の「長歌」ってこんな感じじゃなかったっけとふと思う。 意味がよくわからない古文を、意味がしっかりわかる言葉で読んでいる感じ。
読み返してみれば、この文は、ほぼ五七五七五七、・・七五調のリズムがしっかり基本になっている。こういうリズムは、現代の小説ではほぼ失われてしまっている。(短歌和歌、かろうじて詩の中には生きているだろうけれども) この時代の小説家はこういうリズムに身を任せたり離れたり、自由に駆使して文章を書いていたのか。日本語の変遷というのか、日本語の歴史を感じてしまう。 大昔の日本語と現代の日本語の、そのあいだの時代の文章は、なにかとても魅力にあふれている。
よろしかったらクリックを ↓