1870年代「イギリスの上流社会をめざしたアメリカ娘たちの光と影」
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バァージニアのアメリカの実家から、株で破産したとの知らせがくる。侯爵家は嫁であるバァージニアの実家の経済的な後ろ盾を失い、農作物の価格低落もあり収入は減少し、日々の生活はますます厳しさを増している。しかし、夫シアダウンは愛人イディナとの関係を続け、バァージニアは宝石を質屋に入れている。
資本家ヘクターは大邸宅を購入。リジィはヘクターと結婚する。
アナベルは妊娠するが、その頃、領地の使用人の子供がチフスになり、彼らに援助の手を差し伸べようとするアナベルに対して、公爵ジュリアスはそんなことは代理人にやらせればよいと一蹴する。領主として使用人を気にも留めないジュリアスの冷酷さと無責任に失望し、怒り、アナベルは夜、屋敷を抜け出す。以後、夫婦仲は修復不可能になってしまう。
その頃、ガイ・スウォートが成功して帰国。アナベルは、ロンドンのリジィの屋敷に身を寄せ、議員になったガイと会うようになる。ロンドンでのガイとアナベルの噂が公爵家にも届くようになる。ジュリアスと会って話をしたアナベルは、公爵夫人としての立場と、自分だけではなくガイの将来に影響が及ぶことを察し、屋敷に戻る決意をする。
アナベルという女性は元々前向きに生きることを望み、「投げやり」になることを一番嫌う女性で、夫とうまくいかないにしても、公爵夫人としての役割を全うすることが自分の責任だと考え、ガイに別れを告げる。
しかし、屋敷に帰ったアナベルは、ある夜、夫ジュリアスが同性愛者であることを目撃し衝撃を受ける。画家が公爵と公爵夫人の「肖像画」を描く日、夫に絶望したアナベルは耐えきれずに、着飾った衣装を脱ぎ棄て飛び出してしまう。
園遊会の日、家庭教師ローラは、間違った結婚を苦悩するアナベルに、ガイがここに来ることを告げ、ガイにはアナベルが来ていることを知らせる。二人は再会。
公爵夫人と議員が園遊会の最中に、人目もはばからず手を取り合って駆け抜け、馬車で走り去ったのだから、これはとんでもないスキャンダルになる。翌日の議会でガイは好奇の目にさらされながら、世襲の貴族院たる「上院の廃止法案を提出する」と演説する。議会は紛糾、ガイの不倫を揶揄するヤジが飛ぶ。
「この国の構造はミツバチの巣のよう。女王バチは臣下にかしずかれています。その下には働かぬ雄バチ、その下に働きバチ 雄バチは怠惰で寄生的な生活を送り、他者に働かせ食べている。虫の中で最高と思っているのでしょう。しかし、彼らの夢も終わるときが来たのです。働きバチは搾取される重荷に突然耐えきれなくなり 雄バチを巣から追い出すのですから。」
-犬を伴に美しい緑の領地を散歩している老侯爵は、わが領地の土を握りながら、倒れ落ち死去。
侯爵の葬列に花を持って現われたアナベルに誰も声をかけない。姉バァージニアも友人リジィでさえも。アナベルに駆け寄ったのは唯一コンシータだけ。 アナベルの家庭教師ローラはガイの父親ヘルムスリー・スウォートと交際中だったが、将来を嘱望されている息子ガイと公爵夫人の駆け落ちを助けたことで、彼はローラを責める。また、公爵家の存続に人生を捧げてきたジュリアスの母も激怒し、嘆く。「私のしてきたことは何だったの、自分の義務を逃れることなどとても無理だった」と。しかし、侯爵の死と同時に、時代は確かに後戻りできない大きな変化の時を迎えていた。
ガイは、父親に告げる。議員を辞め、妊娠したアナベルと二人で南アフリカで技師として出直すつもりだと。ガイは、激怒し財産を相続させないという父親を説得し、アナベルと二人で南アフリカに旅立つ。
良いドラマでした。一言で言ってしまうと、下院議員のガイと公爵夫人のアナベルが愛をつらぬく話になってしまうのですが、このドラマの見どころは、この時代、イギリスの古い価値観が崩れ、新しい価値観が芽生えてゆく背景ー時代の大きな変化にあります。後半、最後部分で、下院議員であるガイの演説ー「(貴族院である)上院の廃止を訴える演説」は、貴族階級という階級制度がどうにもならないところまできていた時代の現実そのものであり、また、公爵夫人として自分の役割を全うしたいと願いながらも、全うできなかった一女性アナベルの苦悩でもあります。
アナベルの家庭教師ローラの言葉ー
「ナン(アナベル)とガイが逃げ出したとき、叫びそうになったの、うらやましかったのか怖かったのか、でもまるで、二人が宇宙に飛び出したように見えたの」