ピーナッツの唄

毎日の出来事や、スポーツ観戦、読書や映画等の感想を中心に、好奇心旺盛に書いています。

最近読んだ本

2007-12-05 13:02:46 | 勉学
あまり本を読む時間がない。その中で読み出したら面白くてやめられなかった本を紹介する。
山之口洋著「天平冥所図会」だ。8月頃の新聞の新刊書案内で紹介されていた。

内容は天平の時代、平城京(ならのみやこ)における我々も断片的に知っている人物と事象を描いている。
それをミステリー仕立てにして、そして死者の霊が幽玄の世界から微妙に絡みついてくる。実に面白い本だった。
女系天皇の擁立が続いていたこともあり、色んな場面で女性の働きが生き生きと書かれている、この時代の特徴のひとつかも知れない。

▲第一話 聖武天皇の御世に東大寺の梵鐘と大仏建立をめぐり、地方から駆り出された技術者が行方不明になる話だ。その男を捜しに京に出てくる10歳の男の子、それを哀れんだ光明皇后が、主人公葛木連戸主夫婦「悲田院と施薬院」の充実と、孤児たちの養育を命じる。この時代の大事業である「大仏と梵鐘」の建立にまつわる話が面白い。

▲第二話 聖武天皇亡き後、光明皇太后が亡き天皇の愛した宝物、1500余点を東大寺に奉納し、「正倉院」を作る準備を進めさせる。膨大な宝物は古今東西の名器ばかり、その記録帖の作成に没頭させられる葛木連戸主は「国宝珍宝帖」の完成に向けて全力をそそぎ、遂に勅書の形で献納日に間に合わせる。畷と称する目利きの小役人がその作業中に過労死。死後も霊となって作業を助ける。その献納の日その霊が成仏して消えるが見える。今日まで連綿と受継がれてきている「正倉院」建立が題材だ。

▲第三話 光明皇太后が亡き後娘の孝謙天皇から淳仁天皇に引き継がれる。しかし上皇となった孝謙は我こそは聖武、光明の娘であり唯一の皇統であるとの意識が強く、天皇との権力争いが激しさを増す。そして弓削道鏡がが看病禅師として上皇に取り入ってくる。人の噂にものぼる様になった道鏡の寵愛振りに、天皇がやんわりと上皇に進言したのが元でさらに亀裂が走る。
淳仁天皇からさらに近畿一円の軍事を勝取った藤原仲麻呂。そして藤原仲麻呂と上皇と道鏡側のつばぜり合いに。上皇側は直ちに藤原仲麻呂討伐に結集する。宇治方面に逃走した仲麻呂方は次第に追いつめらる。しかし仲麻呂には隠し兵があった。
しかし隠し兵は戦いに間にあわなかった。かくて「藤原仲麻呂の乱」は終止符を迎える。
実はこの争いの前に主人公葛木連戸主は若狭国に使いに行き、帰路不慮の事故で亡くり、その霊が成仏出来ずに2000人の若狭兵を惑わせる役目をしたのだった。

▲第四話 藤原仲麻呂滅亡後、称徳天皇として復活した孝謙上皇の「弓削道鏡」に対する寵愛は頂点に達する。大宰府からは宇佐八幡大菩薩の神託がもたらされた。神託には「道鏡をして皇位につかしめば、天下太平ならん」とあった。
そしてその神託を改めて確認に行く役目が戸主の妻の広虫と弟の「和気清麻呂」に下る。神託が真実であれば皇位は曲げられてしまう。その役目は死を覚悟せねばならないほどの重責だ。そこで葛木連戸主の霊は氏神の一言主命に会い宇佐八幡に正論を神託として与えるように頼んで貰う。そして運命の神託は「わが国は開闢以来君臣の分定まれり、天津日嗣は必ず皇儲をたてよ」と出た。広虫と和気清麻呂はその通りを宇佐八幡の神託として朝廷の場で告げる。
最後の悪あがきをする弓削道鏡に戸主の霊が戦いを挑む。何と弓削道鏡に乗り移っていた霊はアット驚く人物であった。かくて我が国の皇統の危機が救われた瞬間だった。

そして京は平城京から平安京へとかわり、奈良時代が収束する。


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする