ピーナッツの唄

毎日の出来事や、スポーツ観戦、読書や映画等の感想を中心に、好奇心旺盛に書いています。

「風の果て」を読む

2007-12-12 17:52:57 | 勉学
先週の木曜日まで8回に渡り放映された、NHK木曜時代劇「風の果て」を楽しく観た。
郷里山形出身の藤沢周平の原作になるものだ。8回の連続ものになっているが中々の出来の作品だった。
佐藤浩市演じる主人公が、この作品に深みを与えていた。

小生は当然この作品は読んでいると思っていたが、ドラマを2回程見たところでどうしても内容が思い出せない。
そこで本棚の中の藤沢周平作品を取り出してみたが見当たらない。あわてて本屋で文庫本を購入して急いで読んだのでした。 
作品では、いきなり今は首席家老に就任している主人公の桑山又佐衛門(上村隼太)に古くからの友人である野瀬市之丞から果たし状が届くところから始まる。
そして話は青年期の片貝道場で、剣術稽古に励む仲良し4人組の付き合いの時代にさかのぼる。
幼少の頃、酒におぼれて雪の中で死んだ父を持つ貧乏家人の次男坊の上村隼太、元家老職の嫡男の杉山鹿之助、貧乏家人の次男坊組の野瀬市之丞、寺田一蔵、三矢庄六の5人がそれぞれに歩んだ生き様を描いたものだ。
舞台は藤沢作品に良く登場する、鳥海山が真近に見える庄内の藩である。
やがて杉山鹿之助は父の跡を継ぎ、杉山忠兵衛と名乗り藩政の中心に上がると同時に他の4人から距離を置き始める。
そして一蔵、庄六も貧乏家人に婿入りする。隼太はやがて郷村周りで、いささか変人の噂のあった桑山孫助に見込まれて婿入りする。しかし市之丞は何故か冷や飯喰いのままであった。
そして年上の妻の婿となった一蔵だが、妻の不倫の相手を斬って出奔する。藩の追っ手のひとりに市之丞が加わり親友を切り捨て帰国する。その頃から市之丞は荒れた生活を送るようになる。
やがて養父の跡を継ぎ、郷回りの役を務める事になった主人公。これまでなん人もなし得なかった、太蔵が原の開墾の大事業を担当する機会がやってくる。藩主の意向を受けた江戸の測量師による、綿密な水路の確保が出来き、さらに藩内の大手商家に開墾を請負わせる方策で2千数百町歩の水田化に成功する。
その功績で執政から中老に、さらに親友である首席家老杉山との権力争いに勝利して首席家老に昇りつめる。
そんな折り、ついには冷や飯食いの生活から脱出できなかった、市之丞からの果たしあい状だった。何故果し合いなのか、考え込む主人公に、貧乏家人の小普請組に婿入りしその生活を淡々と楽しんでいる庄六が語りかける。
市之丞は死病に取り付かれていた、一番好きだったお前に斬られることで人生に終わりをつけ様としたのだと。

名作「蝉しぐれ」と同様に、農政に邁進する武士の姿を借りながら、権力争いに取り付かれた人々の争いを描いている。
やはり藤沢周平の作品の中でも名著の一冊だと思う。

         
コメント
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