「はい、はい。スタミナのつく料理ッス。そう、鼻血出して大騒ぎだったんスよ」
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河村亮は、雪の母親に電話を掛けていた。
明らかに寝不足で、かつ鼻血まで出した雪のことを心配して、
亮は雪の母親にスタミナのつく料理を作ってあげるようお願いをしているのだった。
「分かりました?はい、んじゃ切りますー」

通話を終えた亮は、玄関で靴を脱ぐとリビングに入って行った。
そこに寝転がる姉に、チクチクと小言を言う。
「最近クラブには行かねーのか?生活に困ってるワケじゃなさそーだな」

まだ夜も早いのに家に居る静香を見て、亮はそう言った。
すると静香はバッと振り返り、変な表情をしながらこう聞く。
「ねぇちょっとアンタ‥淳ちゃんから何か聞いた‥?」
「は?何お前、また何かやらかしたんか?!」

静香の頭の中に、昼間の出来事が過った。
淳の彼女‥赤山雪と、あわや喧嘩沙汰かと思われたあの出来事‥。

淳に知られたら‥と思って気が気じゃなかった静香だが、どうやらまだ大丈夫らしい。
静香は「別に」とそっけなく言い放つと、姉に苛つく弟から目を逸らした。

亮はふと、姉が手元に広げている本に目を落とした。
その本には、様々な絵画が載っている。

それを見た亮は姉に詰め寄った。
「何だぁその本?お前マジで美術するつもりか?!」
「あーもうほっといてよ!ただちょっと見てるだけよ」

亮は自分の知らないところで、姉に動きがあることを不審に思った。
あれだけ嫌悪していた美術の道に、再び静香は進もうとしているのだろうか?
その根底に、どんな思惑が隠されているというのか‥。

亮の心にモヤモヤとしたものが広がった。しかしそれきり、姉弟が会話をすることは無かった。
半径三メートル以内に存在している、何より近い存在である二人。
けれど二人は違う人間で、それぞれ違う思考回路を持っている。
同じ空間にいるからといって、常にコミュニケーションが取れるかといったら、
そういうわけじゃない。更に、顔を合わせていても解決策が見えない時がある。

秋の空は青く晴れ渡っているが、雪の心の中はどこか曇っていた。
いや、顔を合わせた時の方がもっと‥
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雪は自分の気持ちを持て余しながら、トボトボと見慣れた通りを歩いていた。
そして通りがかった店の前で、雪は立ち止まった。視線の先には、彼の後ろ姿がある。
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彼は、仕事をしているところだった。
社長である雪の父に何かを言われ、彼は頷く。微かに微笑む口元が見える。
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雪はビクッと身体を強張らせると、弾かれるように後ろを向いた。
彼から、見えないように。彼のことを、見ないように。
一度も経験したことの無い状況の前では、理性も感情も解決策を見い出せないようだ。
だからー‥

雪は彼に声を掛けられないまま、そのまま早足で駅へと向かった。
結論の見えない彼との関係が、雪の心をモヤモヤと曇らせる‥。
「赤山雪っての知ってるか?赤山雪!名前合ってるよな?」
「はい‥多分‥」

その頃大学では、亮が地方で働いていた時の元同僚の男と社長が、雪のことを絶賛捜索中だった。
声が大きくガラの悪い社長はA大では見るからに浮いていて、質問された学生達は皆怖がって去って行く。
俺の方が先に亮を探し当てないといけないんだけどな~‥どうしよ‥

元同僚の男は、どうにかして亮に連絡を取って今の状況を話さないといけないと思っていたが、
携帯の番号も職場も変えた彼への連絡手段が無く、途方に暮れていた。
そんな男の心中など知らない社長は、道行く学生に手当たり次第に赤山雪のことを尋ねる。
「ちょっとよく分かりません。学生って言っても沢山いるんで‥」
「知らないっスー」 「ここにはいないと思いますよ」

二人はなかなか有力な手がかりを掴むことは出来なかったが、
暫くするとどうやら彼女を知ってるらしき人物に行き着いた。
「番号まではちょっと‥。てかどなたですか?」
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その黒髪の子は、二人を訝しがって言葉を濁していた。
社長はこれ幸いと、少し強気な態度で彼女に詰め寄る。
「おいちょっと!教えてくれよ!一つばかし聞くだけじゃねーかよ!」
「キャッ!何するんですか!」

そんな彼らの様子を、その男はその場でじっと窺っていた。
そして彼は社長の背後から近づくと、よく通るその声で、こう声を掛けたのだった。
「何してるんです?」
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横槍を入れられた社長は、幾分声を荒げながら振り返る。
「何って人を探してー‥」

振り返った社長の目に入って来たのは、真っ直ぐに自分の方を見ている、一人の男の姿だった。
その男は高級そうな服に身を包み、何もかも見透かすような瞳で人のことを凝視する。
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青田淳は目に宿した強い光を絶やさぬまま、そっと口元を微かに上げた。
屈服はしないが完全なる拒絶もしない、彼の表情はそう語る。
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なんとも言えないオーラを纏った淳に、社長は多少気圧された。
「‥?どなたですか?」
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こう聞く社長に対し淳は、穏やかなトーンで「そちらこそ」と返し、言葉を続けた。
「どういった理由で、あの子を探されているんです?」

淳は同学科の黒髪女子の前に出ると、笑顔を纏いながらストレートにそう聞いた。
突然割って入ってきたその男に、社長は怪訝そうな顔で「お前こそ何だぁ?!どういう関係だよ!」と声を荒げて聞き返す。
すると淳は、ニッコリと微笑んだ。
「僕は赤山雪の彼氏ですので、何かあれば僕に仰って下さい」

その淳の答えに、社長は目を剥いた。
「は?!彼氏?!」

社長は口をあんぐりと開けたまま、隣の男に向き直って会話を始める。
「彼氏って‥亮じゃねーのか?!」「いえ‥特にそういうわけじゃ無かったような‥」
「いや女を探せっつったら、普通そりゃ彼女だと思うだろーが?!俺の言うこと間違ってっか?!」

不意にその中年の口から出た名に、淳の身体が微かに反応する。
淳は小さな声で、聞き慣れたその名前を口に出した。
「亮‥?」

各々が知らないところで、歯車が廻り出していた。
各自一本道だと思っていたその道が、知らないところで交差して行く‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<知らないところで>でした。
今週から休載かと思われましたが、アップされましたね!バンザーイ
本家冒頭の雪が地下鉄に乗っている場面は、前回の<痕跡の正体>にくっつけましたので、良ければそこもお読み下さい^^
亮さん雪のこと心配して、雪のお母さんに電話まで‥うぅ‥T T
でも雪ちゃんには避けられて‥うぅ‥T T
そして先輩派の皆様に‥今回のイケ淳をプレイバック!

このイケメン、これからスネ淳になるのかな‥悶々‥
次回は<二人のギクシャク>です。
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河村亮は、雪の母親に電話を掛けていた。
明らかに寝不足で、かつ鼻血まで出した雪のことを心配して、
亮は雪の母親にスタミナのつく料理を作ってあげるようお願いをしているのだった。
「分かりました?はい、んじゃ切りますー」
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通話を終えた亮は、玄関で靴を脱ぐとリビングに入って行った。
そこに寝転がる姉に、チクチクと小言を言う。
「最近クラブには行かねーのか?生活に困ってるワケじゃなさそーだな」
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まだ夜も早いのに家に居る静香を見て、亮はそう言った。
すると静香はバッと振り返り、変な表情をしながらこう聞く。
「ねぇちょっとアンタ‥淳ちゃんから何か聞いた‥?」
「は?何お前、また何かやらかしたんか?!」
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静香の頭の中に、昼間の出来事が過った。
淳の彼女‥赤山雪と、あわや喧嘩沙汰かと思われたあの出来事‥。
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淳に知られたら‥と思って気が気じゃなかった静香だが、どうやらまだ大丈夫らしい。
静香は「別に」とそっけなく言い放つと、姉に苛つく弟から目を逸らした。
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亮はふと、姉が手元に広げている本に目を落とした。
その本には、様々な絵画が載っている。
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それを見た亮は姉に詰め寄った。
「何だぁその本?お前マジで美術するつもりか?!」
「あーもうほっといてよ!ただちょっと見てるだけよ」
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亮は自分の知らないところで、姉に動きがあることを不審に思った。
あれだけ嫌悪していた美術の道に、再び静香は進もうとしているのだろうか?
その根底に、どんな思惑が隠されているというのか‥。
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亮の心にモヤモヤとしたものが広がった。しかしそれきり、姉弟が会話をすることは無かった。
半径三メートル以内に存在している、何より近い存在である二人。
けれど二人は違う人間で、それぞれ違う思考回路を持っている。
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秋の空は青く晴れ渡っているが、雪の心の中はどこか曇っていた。
いや、顔を合わせた時の方がもっと‥
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雪は自分の気持ちを持て余しながら、トボトボと見慣れた通りを歩いていた。
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彼は、仕事をしているところだった。
社長である雪の父に何かを言われ、彼は頷く。微かに微笑む口元が見える。
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雪はビクッと身体を強張らせると、弾かれるように後ろを向いた。
彼から、見えないように。彼のことを、見ないように。
一度も経験したことの無い状況の前では、理性も感情も解決策を見い出せないようだ。
だからー‥
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雪は彼に声を掛けられないまま、そのまま早足で駅へと向かった。
結論の見えない彼との関係が、雪の心をモヤモヤと曇らせる‥。
「赤山雪っての知ってるか?赤山雪!名前合ってるよな?」
「はい‥多分‥」
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その頃大学では、亮が地方で働いていた時の元同僚の男と社長が、雪のことを絶賛捜索中だった。
声が大きくガラの悪い社長はA大では見るからに浮いていて、質問された学生達は皆怖がって去って行く。
俺の方が先に亮を探し当てないといけないんだけどな~‥どうしよ‥
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元同僚の男は、どうにかして亮に連絡を取って今の状況を話さないといけないと思っていたが、
携帯の番号も職場も変えた彼への連絡手段が無く、途方に暮れていた。
そんな男の心中など知らない社長は、道行く学生に手当たり次第に赤山雪のことを尋ねる。
「ちょっとよく分かりません。学生って言っても沢山いるんで‥」
「知らないっスー」 「ここにはいないと思いますよ」
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二人はなかなか有力な手がかりを掴むことは出来なかったが、
暫くするとどうやら彼女を知ってるらしき人物に行き着いた。
「番号まではちょっと‥。てかどなたですか?」
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その黒髪の子は、二人を訝しがって言葉を濁していた。
社長はこれ幸いと、少し強気な態度で彼女に詰め寄る。
「おいちょっと!教えてくれよ!一つばかし聞くだけじゃねーかよ!」
「キャッ!何するんですか!」
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そんな彼らの様子を、その男はその場でじっと窺っていた。
そして彼は社長の背後から近づくと、よく通るその声で、こう声を掛けたのだった。
「何してるんです?」
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横槍を入れられた社長は、幾分声を荒げながら振り返る。
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その男は高級そうな服に身を包み、何もかも見透かすような瞳で人のことを凝視する。
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青田淳は目に宿した強い光を絶やさぬまま、そっと口元を微かに上げた。
屈服はしないが完全なる拒絶もしない、彼の表情はそう語る。
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なんとも言えないオーラを纏った淳に、社長は多少気圧された。
「‥?どなたですか?」
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こう聞く社長に対し淳は、穏やかなトーンで「そちらこそ」と返し、言葉を続けた。
「どういった理由で、あの子を探されているんです?」
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淳は同学科の黒髪女子の前に出ると、笑顔を纏いながらストレートにそう聞いた。
突然割って入ってきたその男に、社長は怪訝そうな顔で「お前こそ何だぁ?!どういう関係だよ!」と声を荒げて聞き返す。
すると淳は、ニッコリと微笑んだ。
「僕は赤山雪の彼氏ですので、何かあれば僕に仰って下さい」
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その淳の答えに、社長は目を剥いた。
「は?!彼氏?!」
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社長は口をあんぐりと開けたまま、隣の男に向き直って会話を始める。
「彼氏って‥亮じゃねーのか?!」「いえ‥特にそういうわけじゃ無かったような‥」
「いや女を探せっつったら、普通そりゃ彼女だと思うだろーが?!俺の言うこと間違ってっか?!」
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不意にその中年の口から出た名に、淳の身体が微かに反応する。
淳は小さな声で、聞き慣れたその名前を口に出した。
「亮‥?」
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各々が知らないところで、歯車が廻り出していた。
各自一本道だと思っていたその道が、知らないところで交差して行く‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<知らないところで>でした。
今週から休載かと思われましたが、アップされましたね!バンザーイ
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本家冒頭の雪が地下鉄に乗っている場面は、前回の<痕跡の正体>にくっつけましたので、良ければそこもお読み下さい^^
亮さん雪のこと心配して、雪のお母さんに電話まで‥うぅ‥T T
でも雪ちゃんには避けられて‥うぅ‥T T
そして先輩派の皆様に‥今回のイケ淳をプレイバック!
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このイケメン、これからスネ淳になるのかな‥悶々‥
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次回は<二人のギクシャク>です。
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ししょーのなかったら気付かなんだよ
にしても社長うっかり淳に見つかるとはこれまたご都合よく(笑)
横山にも会うしーいやたしかにそうしないと動かないですけどね
慶応(じゃないけど)学生大量にいるし そもそも警備員どーした?今こそ君達の仕事かと
トリックスターが、多すぎる劇は不自然ですわよ(-_-;)
淳はもう、すねないんじゃないでしょうか
なんせイタシタマシタから~(*^-^*)
それにしてもお亮さんオヤゴゴロの域まで達してますな
切ない
淳くん、なんてカッコイイのだ!!
Yukkanen師匠さま! プレイバック素敵です!感謝です!
淳くんにじっと見つめられてる気分・・・(←アブナイ)
あ、そういえば仕事中だった・・・。
確かにすごいタイミングですよね‥。
そこに居合わせてしまう淳の不運というか、なんというか‥。
警備員さんはまた居眠りしていたのかもですね。A大の警備員‥ザルですな‥^^;
亮さんの心遣い、良いですよねぇ‥。
>どんぐりさん
おっ今や数少ない淳派のどんぐりさん‥!
この淳はイケてますよねぇ~!狡猾そうなあの表情、彼の真骨頂という感じがします。
お仕事ファイティーン!
・・・でもナイトクラブへ行くのって普通お金のかかることじゃないですか?女は入場がただですけど、お酒代とか。静香は逆に稼ぐのかも知りません。
そして亮さんのおかんのような心遣いにもジーン。ほんと、これで雪ちゃん不治の病とかだったら続き見れない。二次創作でもイヤダ。
今後の淳の社長の転がし方でお話嫌な方に二転三転するんだろ~なぁ~どうなってしまうのやら。来週も更新しますように!
あ、なるほど!静香にとっては、クラブに行った方が色々貢がれて生活が潤う、という意味なのですね!納得!そして面白いですね~^^やはり美人は得ですな‥。
>ゆっけ丼さん
あの淳は近年稀に見るイケ淳ですよね!
なすびや初老化‥(笑‥そして涙)色々乗り越えましたね、我ら 笑
今回の作画が丁寧なことを見ると、作者さん体調回復されたのかな~?と期待してしまいます。
来週も更新キボン!ですね^^