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雪がジトッとした視線を送る先には、河村亮が居た。ここは図書館である。
彼は何やらゴキゲンな様子で、雪が座っている席まで歩いて来る。
「やーっと来た
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約束の時間はとっくに過ぎていた。それなのに悪びれない亮に、雪はグチグチと文句を言う。
「この人は‥
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「あ~ゴメンゴメン。ちょーっとな?」「勉強教えてって言ったのは河村氏でしょ?!
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分かった分かった、と言いながら亮は、上機嫌で雪の隣に座った。
「んじゃ、始めっか!」
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そう言ってテキストを鞄から出す亮に、「ハイハイ」と雪が息を吐きながら言う。
文句があればすぐに言い合える、そんな二人の雰囲気は良好だ。
そして二人は暫し勉強に勤しんだ。
分からないとぼやく亮に、雪は根気良く説明を続ける。途中で眠くなった亮を、雪が叱り飛ばす場面もあった。
けれどなんだかんだ言って、亮の勉強は順調に進んでいる。
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少し休憩がてら、雪は亮に蓮の話をした。彼の今後の進路についてだ。
雪は亮に、そのことについて一度蓮と話をしてみて欲しいと思っていた。
「‥だから河村氏からも、一度蓮に話をしてくれたらなって‥」
「オレの話に説得力があんなら、静香はあんな人生送ってねーよ」
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しかし亮は軽く笑いながら、自分の思う蓮についての話を続けた。
「アイツはいい加減だけど、全然考えねー奴じゃねーじゃん」
「それは分かるけど‥あんまりにも頑固だから」
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雪は父親譲りの蓮の性分に頭を悩ませながらも、一応姉として一つの名案を考えてある、と亮に打ち明けた。
亮は頷きながら、それにエールを送る。
「んじゃそれ押し通さねーと。それがどんなもんでも、アイツが考えたもんよりは良いはずだろ」
「んー‥」
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暫し蓮についての会話を続ける二人であったが、不意に二人同時に携帯電話が鳴った。
マナーにしてある雪の携帯は震え、亮の携帯は大きな着信音を静かな図書館に響かせる。
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雪はそのことについて亮に文句を言いながら、携帯を手に取った。周りの視線が痛い‥。
亮も「ソーリーソーリー」と言って、携帯を手に取る。
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亮の携帯に入って来たのは、志村教授からのメールだった。
最近ピアノ弾いてないじゃないか。今から少し会おう
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亮は脳裏に志村教授の顔を思い浮かべながら、そのメールについて思いを巡らせた。
亮は、最近ピアノのレッスンをさぼりがちだった。
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一方雪の携帯に来たのは、先輩からのメールだった。
いまどこ?俺、今日大学に来てるんだ。お昼一緒に食べよ
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その思いも掛けない内容に、雪は目を丸くしてそれを見ていた。
先輩が大学に来るのは、随分と久しぶりだ。
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突然のメールは、それまで同じ方向を向いていた雪と亮を反対方向へと誘う。
今二人はそれぞれ対面すべき人物と、携帯を通して向き合っている。
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そして幾分気まずい空気を醸し出しながら、雪は亮に向かって口を開いた。
「あ‥ちょっと急用が‥」 「おぉ、オレも‥」
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二人はそれきり反対方向を向き、それぞれ席を立つ準備をした。
なんともぎこちない空気が、二人の間に漂っている。
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雪は、突然現実に引き戻されたような気持ちがした。
亮に勉強を教えている最中に先輩が大学に来るという今の状態‥。
なんだか突然冷水を掛けられたような気分だ。
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図書館を後にして彼の元へと走りながら、雪は先輩のことについて思いを巡らせた。
てか‥どうしていきなり大学に‥?
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グルワも終わったし、彼が大学に出向く理由など無いはずだった。
ただ一つ、考えられる理由はといえば‥。
あ‥私に会いに?‥わざわざ?
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そう思い至ると、心の中が微かに温かくなった。
口元には自然と、柔らかい笑みが浮かぶ。
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雪は嬉しくなり、走りながら無意識に笑ってしまっていた。
「へへへへ‥」
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その隣に、いつの間にか現れた彼の姿に気づかぬままー‥。
「楽しそうだね?」 「ギャッ!!」
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雪は心臓が口から出る程驚いた。
力が抜けてその場にしゃがんだ雪に向かって、彼は「ゴメンゴメン」と明るく口にする。
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彼は雪に向かって手を伸ばしながら、「やぁ」と挨拶した。
雪はその彼の笑顔を見て、胸がキュンと鳴くのを感じて赤面する。
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雪が彼の手を取ると、淳はそのままその手をギュッと握った。雪は少し気恥ずかしそうに質問する。
「‥ど、どうしたんですか?」「ちょっと時間が出来てね。大学に来たくなって」
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雪は平静を装おうとするがどうしてもニヤけてしまうので、何だか変な表情になっていた。
彼はそんな雪の鼻に触れながら、笑顔で彼女と相対する。二人の会話は続いた。
「てかこんな風に出て来ちゃって大丈夫なんですか?インターンは‥」
「大丈夫。許可は得てあるよ」 「ふーん‥」
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そして二人は手を繋ぎながら、昼食を取りに学食へと向かうことにした。
雪はにこやかな彼の横顔を見上げ、一人こう思う。
先輩楽しそう‥
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彼の笑顔を見ると、雪は自身も嬉しくなるように感じた。
複雑に絡み合う現実問題は取り敢えず置いておいて、雪は今ひとときの温かい気持ちに身を委ねた‥。
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<突然のメール>でした。
なんというか‥解決したり向き合ったりせねばならないものから背を向けて、
楽しい所や明るい所ばかりに取り敢えず目を向けている人達、という構図を感じました。
亮は恋心のあまりピアノが疎かになり、雪は亮との勉強のことを内緒にして彼と会えた喜びに身を任せる。
淳は‥もう言わずもがなですね‥^^;
クライマックスへ向け、これが徐々に崩れて行くのかしら‥おお~怖‥。。
次回は<踏み込めない領域>です。
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恋する雪ちゃん可愛いですよね^^
先を思うと不安ばかりが立ち上りますが‥。
CitTさん
た、たしかに見る人が見れば二股に見えてもしょうがないのか‥雪ちゃんよ‥。
ゆっけ丼さん
もう見てられないですよね、どう考えてもこじれるのが目に見えてるんですもん‥。
やらなきゃいけないことよりやりたいことを先行してしまうのは人のサガですっ‥(キリッ)
けれどここは皆が人間関係においてそれをやっているので問題ですね‥。
青さん
インハとホンソルの対決!血を見ることにならなければ良いですが‥!ブルブル‥
鴉さん
結婚するなら、一緒に居て気が楽になるこういう相手が良いですねぇ^^
けれど雪ちゃんは最終的にどちらかとくっつくんでしょうか‥^^;
先行き不安の為に、明るい未来が見えなくなっている私です‥(汗)
めぷさん
会話すればするほど綻びが出てしまうことを、本能的に雪と淳は察知してるんでしょうね。
淳が変わらなければ、どう転んでも明るい未来は無さそうです。やはり突破口は静香でしょうが、どういった展開になるやら‥。
そうそう、本家に追いつくのは来年かと思っていましたが、休載を挟んだり思ったより早く記事が進んでしまったのがあって、どうやら再来月あたりに追いついてしまいそうですTT
この辺りから本家最新版まで、だんだんつらい展開になってて見ていて辛いです。主役の恋人だというのに最近良いとこなしの先輩、先輩の気持ちを汲めない雪ちゃん、ふたりの間に(結果的に)割り込む亮さん、そしてここへ来て最大のキーパーソンである静香ねーさん。それぞれに対して一言で突っ込むなら、「どないやねん!」です。T^T
ここのところのイケてなさ過ぎる先輩の描写が、最後に生まれ変わる前振りであることを祈っております。。。
そしてそして、師匠!本家に追いついてしまわれる勢いですね?毎日ありがとうございます!!
今日から学校でクタクタだったんですがこれ見て元気になりました!
雪ちゃんは果たしてどちらとくっつくんでしょうかねえ(o^^o)
ここに出てきている誰もがどうせ逃げ切れないですから、覚悟を決めるしかありません。
ユジョンも、インホも、ホンソルも、虎からは逃げられないです。ただ、前にもどこかで書きましたけど、その中でもカギはやはり、インハとホンソルとの直接対決でしょうね。因縁の深いオトコどもは、突破口を拓くには役立たずですので、希望はそこにしかありません。
それぞれが本来成すべきことに背を向けて、感情のまま流れに身を任せていることが今後大きな事件を引き起こしそうですね。。
でも、私もやんなきゃいけないことより楽しいことについつい流されちゃう性分を持ってるので人のこと言えないけども(* ̄∇ ̄*)
向き合うときが、決戦の時ですね。はぁ~
雪ちゃん・・・orz