「ごめ‥なさ‥」
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悔やんでも悔やんでも、赦されることのないあの出来事。
祖母の手を振り払ってしまった罪悪感が、今も尚雪を苦しめている。
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夢の中で、雪は手をぎゅっと握りしめた。目の前で祖母が悲しそうな顔をしている‥。
「ごめんなさい‥おばあちゃん‥」
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消え入るような声で、懺悔を繰り返す雪。
そしてそんな雪の姿を、彼はじっと見つめていた。
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苦しそうな表情で、何度もごめんなさいと、私が間違っていたと、そう告白する雪。
淳は彼女が抱える何かを目の当たりにしている。
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暫し淳は、雪の顔を見つめていた。
彼女の手を握り続けていると、次第にその表情は安らいで行く。
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すると、雪は薄く瞼を開けた。
「ん‥」
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けれど雪が完全に覚醒する前に、淳は彼女の瞼から額に掛けてを手の平で覆う。
「まだ寝てな」
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そう言って瞼を閉じさせると、雪は小さな声を出しながら、
再び眠りの中へと潜って行く。
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完全に眠りに落ちるまで、淳は掌で雪の瞼を押さえていた。
次第に小さな声も聞こえなくなる。
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そして再び雪の口から寝息が漏れ始めると、淳はそっと手の平を外した。
健やかな彼女の横顔を、複雑な思いで見つめる淳‥。
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そっと外した左手。
握った右手は、まだ繋がれたままだ。
けれどその意味が何なのか、淳は図りかねていた。
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小さな寝息を立てる彼女を前に、淳はポツリとこう呟く。
「分からなくなるよ。俺のことが好きなのか、それとも離せないのか‥?」
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彼女が自分の手を握るのは、どういう感情が元になっているのだろう。
淳は雪の寝顔を見つめながら、そのことに関する記憶に思いを巡らせる。
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繋いだ手。
この手を離そうとすると、いつも彼女はそれに追い縋った。
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あの時も。
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あの時も。
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あの時だって。
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怯えたように手を掴む彼女に、どうしても違和感を感じた。
なぜそんなにも必死で、繋ぎ止めようとするのかと。
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今淳は雪の手を握りながら、同じような場面を繰り返しなぞっていた。
けれど、不思議とそこに絶望は無かった。
繋いだ手の温もりを、噛み締めながら淳は言う。
「実は別に構わないんだ」
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その感情がどんな感情だとしても
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暗闇の中で彼女を見つけた時、胸に芽生えた感情は恋だっただろうか?
今まで独りきりだった自分が初めて同類を見つけた時の、あの感情は‥。
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恋じゃなくても、愛じゃなくても、心が充足すること。
そこに意義があった。
淳は雪の髪を撫でながら、彼女が抱えた重荷を思う。
「罪悪感でも、何でも‥」
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心に抱えた傷があるなら、それさえもひっくるめて背負いたい。
そして彼女の心が軽くなればいい。
自分に向けられるその感情が何であれ、自身を必要としてくれれば、淳はそれで満足だった‥。
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鞄の傍らに置いてあった、携帯電話が不意に震えた。
着信画面には、”父”とある。
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けれど淳は出なかった。
胸の中にあるシコリが、淳の心を固く閉ざす。
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不在着信 3件
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淳は画面を眺めながら、この後実家に顔を出さねばならないことを思った。
おそらく全てを知っている父親から、たっぷりと灸を据えられることになるだろう。
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するともう一度携帯が震えた。今度は同僚からのメールだった。
今日はすごく具合悪そうだったけど、もう大丈夫ですか?うちに良い薬があるんですけど‥。
次の飲み会には絶対参加して下さいね。早く治りますように。
仕事のことで相談したいことがあるんだけど‥私、上司のことがちょっと苦手で‥。連絡待ってます
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メッセージは次々と入って来た。
机の上に置いた携帯が、ひっきりなしに震えている。
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溜息を吐きながら画面に目を落としていると、静香からのメールが入って来たことに気がついた。
一体どうしちゃったのー?
ま、あたしに借り返すんならこのくらいのことして当然だけどね。
こんな超ステキなことすんの、久しぶりじゃーん
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淳は文面に目を通すと、ピッと携帯の電源を切った。
静かになった携帯を再び机に置き、目の前に居る彼女へと視線を移す。
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健やかな寝顔の雪を見つめながら、淳は自分の心が充足して行くのを感じていた。
邪魔者はいらない。
雪が傍にいれば、それだけで良い‥。
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そして淳は口元に薄っすらと笑みを浮かべながら、雪の寝顔を見つめ続けた‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<握った手>でした。
おばあちゃんごめんなさい、と苦しげに呟く雪に、何らかの罪悪感を感じ取った淳。
自分を求めるその理由が罪悪感でもいい、と言う淳ですが、それって‥。
罪悪感だとしても傍に居て欲しいんですねぇ‥。
それってどうなのかな、幸せになれるんでしょうか‥。
うーん‥。
そして同僚女子からのメール!モテる男は大変ですな~。
次回は<三人の行方>です。
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悔やんでも悔やんでも、赦されることのないあの出来事。
祖母の手を振り払ってしまった罪悪感が、今も尚雪を苦しめている。
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夢の中で、雪は手をぎゅっと握りしめた。目の前で祖母が悲しそうな顔をしている‥。
「ごめんなさい‥おばあちゃん‥」
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消え入るような声で、懺悔を繰り返す雪。
そしてそんな雪の姿を、彼はじっと見つめていた。
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苦しそうな表情で、何度もごめんなさいと、私が間違っていたと、そう告白する雪。
淳は彼女が抱える何かを目の当たりにしている。
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暫し淳は、雪の顔を見つめていた。
彼女の手を握り続けていると、次第にその表情は安らいで行く。
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すると、雪は薄く瞼を開けた。
「ん‥」
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けれど雪が完全に覚醒する前に、淳は彼女の瞼から額に掛けてを手の平で覆う。
「まだ寝てな」
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そう言って瞼を閉じさせると、雪は小さな声を出しながら、
再び眠りの中へと潜って行く。
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完全に眠りに落ちるまで、淳は掌で雪の瞼を押さえていた。
次第に小さな声も聞こえなくなる。
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そして再び雪の口から寝息が漏れ始めると、淳はそっと手の平を外した。
健やかな彼女の横顔を、複雑な思いで見つめる淳‥。
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そっと外した左手。
握った右手は、まだ繋がれたままだ。
けれどその意味が何なのか、淳は図りかねていた。
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小さな寝息を立てる彼女を前に、淳はポツリとこう呟く。
「分からなくなるよ。俺のことが好きなのか、それとも離せないのか‥?」
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彼女が自分の手を握るのは、どういう感情が元になっているのだろう。
淳は雪の寝顔を見つめながら、そのことに関する記憶に思いを巡らせる。
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繋いだ手。
この手を離そうとすると、いつも彼女はそれに追い縋った。
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あの時も。
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あの時も。
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あの時だって。
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怯えたように手を掴む彼女に、どうしても違和感を感じた。
なぜそんなにも必死で、繋ぎ止めようとするのかと。
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今淳は雪の手を握りながら、同じような場面を繰り返しなぞっていた。
けれど、不思議とそこに絶望は無かった。
繋いだ手の温もりを、噛み締めながら淳は言う。
「実は別に構わないんだ」
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その感情がどんな感情だとしても
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暗闇の中で彼女を見つけた時、胸に芽生えた感情は恋だっただろうか?
今まで独りきりだった自分が初めて同類を見つけた時の、あの感情は‥。
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恋じゃなくても、愛じゃなくても、心が充足すること。
そこに意義があった。
淳は雪の髪を撫でながら、彼女が抱えた重荷を思う。
「罪悪感でも、何でも‥」
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心に抱えた傷があるなら、それさえもひっくるめて背負いたい。
そして彼女の心が軽くなればいい。
自分に向けられるその感情が何であれ、自身を必要としてくれれば、淳はそれで満足だった‥。
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鞄の傍らに置いてあった、携帯電話が不意に震えた。
着信画面には、”父”とある。
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けれど淳は出なかった。
胸の中にあるシコリが、淳の心を固く閉ざす。
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不在着信 3件
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淳は画面を眺めながら、この後実家に顔を出さねばならないことを思った。
おそらく全てを知っている父親から、たっぷりと灸を据えられることになるだろう。
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するともう一度携帯が震えた。今度は同僚からのメールだった。
今日はすごく具合悪そうだったけど、もう大丈夫ですか?うちに良い薬があるんですけど‥。
次の飲み会には絶対参加して下さいね。早く治りますように。
仕事のことで相談したいことがあるんだけど‥私、上司のことがちょっと苦手で‥。連絡待ってます
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メッセージは次々と入って来た。
机の上に置いた携帯が、ひっきりなしに震えている。
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溜息を吐きながら画面に目を落としていると、静香からのメールが入って来たことに気がついた。
一体どうしちゃったのー?
ま、あたしに借り返すんならこのくらいのことして当然だけどね。
こんな超ステキなことすんの、久しぶりじゃーん
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淳は文面に目を通すと、ピッと携帯の電源を切った。
静かになった携帯を再び机に置き、目の前に居る彼女へと視線を移す。
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健やかな寝顔の雪を見つめながら、淳は自分の心が充足して行くのを感じていた。
邪魔者はいらない。
雪が傍にいれば、それだけで良い‥。
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そして淳は口元に薄っすらと笑みを浮かべながら、雪の寝顔を見つめ続けた‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<握った手>でした。
おばあちゃんごめんなさい、と苦しげに呟く雪に、何らかの罪悪感を感じ取った淳。
自分を求めるその理由が罪悪感でもいい、と言う淳ですが、それって‥。
罪悪感だとしても傍に居て欲しいんですねぇ‥。
それってどうなのかな、幸せになれるんでしょうか‥。
うーん‥。
そして同僚女子からのメール!モテる男は大変ですな~。
次回は<三人の行方>です。
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2.だから最初から他人への期待ゼロ。
(健太が急に悪い噂流しても失望しません。
期待がないから失望も無し)
3.恋じゃなくて罪悪感でも構わない、
側にいてくれ!
・・・じゃないでしょうか。
そばにいてくれれば何でもってことなんでしょうけど、それって単に雪ちゃんの彼氏であるという義務感を無くしたくないだけなんじゃないのって思えてきました。
義務感っていうと無理にって意味になりがちだけれど、先輩はその義務感が心地よいというか…(昔病院で自分に言いきかせてたし。)
でもそれって雪ちゃんのことが好きっていうのとは違う気がする。
本家を見たときもこの回で一気に不安になりました。
yukkanen様の解釈はとても素敵だと思います。
そうであって欲しいと思う。
一方でCitT様の考えも頷けます…。
そうしなきゃ、今までの雪ちゃんの行動が「?」だし、キスしたりなんだり…は罪悪感だけでできる子では…ない!雪ちゃんはそんな子じゃない!うん!
先輩も雪ちゃんに愛情いっぱいだと思うんですよ…。
なんだか執着している部分も、もちろんあるんだけど、好きだからこそだと。
お互い大人なのに、お互い恋愛初心者ですよね。
先輩は深く愛されるってこととか、自分がいつの間にか想像できないくらいに大きな愛で包まれていことだとか、そういうのにきっと鈍感なんだろな。
愛愛いいまくった自分が恥ずかしい!
でもこんなに考えられるチートラ素晴らしい!
そしてなんやかんや言い合えるこの場所があって感謝です。
おお‥!青田淳三段活用ですね‥!
なんというか、人に対しての信頼とか無条件の愛情とか、そういうものが無いですよね、淳は。
ようやく持てそうだった亮には裏切られた(と思っている)し‥。
淳が雪に抱く感情は、普通の人が考える「好き」や「恋」とは、ちょっと違うのかもしれません。
ragoさん
ほほー雪の彼氏であるという義務感、ですか。
確かに人の感情に共感し得ない彼だからこそ、そういった「形」を重視するのかもしれません。
ゆきんさん
熱いですね!良いですよ良いですよ~!
愛情の感じ方や表現がそれぞれ違う登場人物が織りなす物語だからこそ、こんなに深く考えられるんだと思います。
>お互い大人なのに、お互い恋愛初心者ですよね。
これすごく良い言葉ですね~
本当そのとおりだと思います。登場人物皆がここから成長して行ってくれると良いんですけどね~^^
「私の上司は・・・」のところの「上司」の単語は、正確には1人の新人の仕事の仕方を教える担当先輩社員を意味する単語ですよ。
でもなぜ仕事の質問を同じインターンに...
あの人は女性である気がしますよ。
LINEチートラにはまり、
こちらの素敵なblogに出会い、
なんども読み返して
あの時の表情はあれにつながるんだー
と理解できて益々はまって
おります!
皆さんのコメントも
大好きデス!
翻訳大変だと思いますが
本当にありがとうございます。
雪ちゃんや涼くんは
この先きっと自分の力で
生きていけるけど
淳くんは雪ちゃんがいないと
かなり厳しいので
雪ちゃんとうまくいってほしいなー
イケメン無罪淳くん派です*\(^o^)/*
更新楽しみにしておりますー
momoさん、淳派なあまり亮が涼になっちゃってますよ!(^^;)
そしてイケメン無罪‥コメント欄も読み込んでらっしゃいますね!嬉しいです^^
淳が最終回までにちゃんと自立して生きて行けるようになるのか、皆で見守って参りましょう!
また遊びに来てくださいね~^^
投稿後気付きましたーT^T
亮さんファンの方
ごめんなさい~
また遊びにきますーT^T
このブログ、コメントの削除も編集も機能がついてないので、申し訳ない限りです(TT)
またどうぞ遊びに来て下さい!ミスっても全然気にされないでOKです!!