淳の車から出て、雪は大きな歩幅でツカツカと歩いた。
心の中では、未だ大きなわだかまりと怒りの尻尾が後を引いていた。
先ほどぶちまけた不満の他に、まだまだ雪の心の底には彼への不信が溜まっている。
それだけじゃない。
挨拶は返さないわ無視するわ書類を足蹴にするわ、恥ばかりかかせて‥
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そして最近雪の心を悩ませている、最も大きな不信が胸を過った。
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助けてもくれなくて‥!
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雪の心の中に、嵐が吹き荒れる。
彼への不信が怒りの暴風となり、ついその不満の数々が勢いで溢れ出てしまった‥。
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幾らか落ち着いてくると、雪は天を仰ぎながら先ほどの自分の言動を反芻した。
じわじわと、後悔の念が押し寄せてくる。
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雪は一人頭を抱えながら、自分で自分を罵倒した。
道行く人もその姿に二度見して行くくらい、雪は動揺のあまりオーバーアクションだ。
私って奴は‥!恋愛もまともに出来ないくせに、なんでOKしちゃったんだろう!
てかヒドイこと言い過ぎた?キレても良い立場じゃなかったのに‥
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雪は一人右往左往しながら、自らの言動の数々を後悔していた。
でもどこか納得している自分もいて、それがまた雪の頭を悩ませた。
でもあまりにもムカついたから!どうしてこんなに感情に歯止めが利かないんだろ?
私こんなんじゃ無かったよね??
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理性と感情、思考と言動が、あまりにもちぐはぐでそれが雪を困惑させている。
目を閉じて冷静になろうとするも、頭も心もグチャグチャだ。
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そんな折、携帯電話が鳴った。着信画面を見ると聡美からであった。
なんというタイミング‥。雪は沈んだ気持ちのまま、その電話を取った。
「もしもし‥聡美?私もうダメ‥」
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そう俯いて話しかけた雪だったが、電話の向こうから聡美の取り乱した声が聞こえてきた。
どうしようどうしようと、大きな声でひたすら繰り返している。泣いてもいるようだ。
「ど、どうしたの?なんで泣いてんの?!」そう聞いた雪に、聡美は切れ切れに言葉を発する。
「ゆ、床に倒れててうぅっ‥呼んでも返事が無くてうわぁぁん!
119番したけど‥あたし‥あたし‥ふぇええん!!」
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雪は「どういうこと?誰が倒れたって?」と冷静に聞き返した。
追いかけてきた先輩が、雪の名前を呼ぶのにも気が付かない。
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聡美はしゃくりあげながら、必死に言葉を続けた。
「パパが‥パパが‥!!」
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そう言ったきり、電話の中の聡美は大声で泣き叫んだ。
後ろから先輩が雪の腕を掴む。
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うわぁぁぁん、ふぇぇぇん、と聡美の泣き声が絶え間なく続くその空間で、二人は顔を見合わせた。
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雪の手が、ぎゅっと携帯電話を握っている。
ここは先輩の車の中。二人は緊迫した空気の中、病院へと向かっていた。
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ソワソワと落ち着かない雪に、先輩が冷静に声を掛ける。
「結構深刻なの?どんな状態だって?」
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雪はあの後聡美から何とか聞き出した、彼女の父親の容態を伝えた。
突然降って湧いた災難に、未だ頭はついていけないままだ。
「‥聡美が家に帰った時には、お父さんはすでに倒れていたみたいです。嘔吐症状もあったみたいで‥。
初めは食中毒みたいなものじゃないかって思ってたらしく、それですぐ救急車を呼んだみたいなんですけど、」
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「運ばれている間、症状を確認された後の周りの表情が一変して‥脳出血だって‥」
電話の向こうで、急な手術に動揺している聡美の声が聞こえていた。
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きっと身体を震わせて、今頃俯いて泣いている‥。
「聡美は一人なのに‥」
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母親は居らず、姉も海外在住だったはずだ。
聡美はこの恐怖と不安と、たった一人で戦っている‥。
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先輩がアクセルを踏み込み、車はスピードを上げた。
二人はその後口も聞かず、ただ流れ行く景色の中を、その混乱の中を、ただひたすらに駆け抜けて行った。
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<混乱の中で>でした。
少し短めの回になりました。
しかし雪ちゃんの着ているカーディガン、昨日と一緒に見える‥。
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次回は、<風のように駆けつけて>です。
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心の中では、未だ大きなわだかまりと怒りの尻尾が後を引いていた。
先ほどぶちまけた不満の他に、まだまだ雪の心の底には彼への不信が溜まっている。
それだけじゃない。
挨拶は返さないわ無視するわ書類を足蹴にするわ、恥ばかりかかせて‥
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そして最近雪の心を悩ませている、最も大きな不信が胸を過った。
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助けてもくれなくて‥!
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雪の心の中に、嵐が吹き荒れる。
彼への不信が怒りの暴風となり、ついその不満の数々が勢いで溢れ出てしまった‥。
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幾らか落ち着いてくると、雪は天を仰ぎながら先ほどの自分の言動を反芻した。
じわじわと、後悔の念が押し寄せてくる。
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雪は一人頭を抱えながら、自分で自分を罵倒した。
道行く人もその姿に二度見して行くくらい、雪は動揺のあまりオーバーアクションだ。
私って奴は‥!恋愛もまともに出来ないくせに、なんでOKしちゃったんだろう!
てかヒドイこと言い過ぎた?キレても良い立場じゃなかったのに‥
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雪は一人右往左往しながら、自らの言動の数々を後悔していた。
でもどこか納得している自分もいて、それがまた雪の頭を悩ませた。
でもあまりにもムカついたから!どうしてこんなに感情に歯止めが利かないんだろ?
私こんなんじゃ無かったよね??
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理性と感情、思考と言動が、あまりにもちぐはぐでそれが雪を困惑させている。
目を閉じて冷静になろうとするも、頭も心もグチャグチャだ。
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そんな折、携帯電話が鳴った。着信画面を見ると聡美からであった。
なんというタイミング‥。雪は沈んだ気持ちのまま、その電話を取った。
「もしもし‥聡美?私もうダメ‥」
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そう俯いて話しかけた雪だったが、電話の向こうから聡美の取り乱した声が聞こえてきた。
どうしようどうしようと、大きな声でひたすら繰り返している。泣いてもいるようだ。
「ど、どうしたの?なんで泣いてんの?!」そう聞いた雪に、聡美は切れ切れに言葉を発する。
「ゆ、床に倒れててうぅっ‥呼んでも返事が無くてうわぁぁん!
119番したけど‥あたし‥あたし‥ふぇええん!!」
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雪は「どういうこと?誰が倒れたって?」と冷静に聞き返した。
追いかけてきた先輩が、雪の名前を呼ぶのにも気が付かない。
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聡美はしゃくりあげながら、必死に言葉を続けた。
「パパが‥パパが‥!!」
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そう言ったきり、電話の中の聡美は大声で泣き叫んだ。
後ろから先輩が雪の腕を掴む。
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うわぁぁぁん、ふぇぇぇん、と聡美の泣き声が絶え間なく続くその空間で、二人は顔を見合わせた。
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雪の手が、ぎゅっと携帯電話を握っている。
ここは先輩の車の中。二人は緊迫した空気の中、病院へと向かっていた。
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ソワソワと落ち着かない雪に、先輩が冷静に声を掛ける。
「結構深刻なの?どんな状態だって?」
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雪はあの後聡美から何とか聞き出した、彼女の父親の容態を伝えた。
突然降って湧いた災難に、未だ頭はついていけないままだ。
「‥聡美が家に帰った時には、お父さんはすでに倒れていたみたいです。嘔吐症状もあったみたいで‥。
初めは食中毒みたいなものじゃないかって思ってたらしく、それですぐ救急車を呼んだみたいなんですけど、」
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「運ばれている間、症状を確認された後の周りの表情が一変して‥脳出血だって‥」
電話の向こうで、急な手術に動揺している聡美の声が聞こえていた。
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きっと身体を震わせて、今頃俯いて泣いている‥。
「聡美は一人なのに‥」
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母親は居らず、姉も海外在住だったはずだ。
聡美はこの恐怖と不安と、たった一人で戦っている‥。
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先輩がアクセルを踏み込み、車はスピードを上げた。
二人はその後口も聞かず、ただ流れ行く景色の中を、その混乱の中を、ただひたすらに駆け抜けて行った。
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少し短めの回になりました。
しかし雪ちゃんの着ているカーディガン、昨日と一緒に見える‥。
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次回は、<風のように駆けつけて>です。
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作者さんはどうする気なのか、連載再開後の展開が楽しみです。
ところで、ここで病院が急に出てきたことでふと思い出したのが、H.O.T(エイチオーティー)の「光」という曲のMVです。1990年代後半から2000年頃に活躍したH.O.Tは、今どきアラサー韓国女子の青春の思い出ともいうべきアイドルグループでした。
www.youtube.com/watch?v=KTqMUSaLoKs
ピアノに病院に事業失敗に…こうしてみるとちょこちょこチートラにも出てきそうなカットがありますね。
はっ!そういえば、この頃のカンタ、もしかしたらいちばんユジョンっぽいのでは…?
(ピアノ蹴っ飛ばしてる人です。)
なんとなく暇つぶしに読んでみたチートラにはまった沖縄在住のハイタイといいますm(_ _)m ハイタイとは沖縄の方言でこんにちは!的な感じです。よくハイサイが使われますが女性はハイタイなんです~^ - ^
それはさておき、こちらのブログすご~く助かります!LINEで一挙に読んでみたんですが、時系列がわかりづらく、よく迷子になりました。こちらを読むと、なるほど~と理解が深まり、どんどんはまりましたよ~(≧∇≦)
そして、ラブな感じの漫画かと思ってましたが、結構なホラー感満載で(淳さんがw)、面白いです!
とても好きなブログなんで、みなさんの仲間にいれてもらえると嬉しいです(^ω^)
と管理人より先に出迎えちゃうでしゃばりうあはん。
女性と男性では違うんですかー。ハイサイしか聞いたことないです。すごー。
ここって、チートラに関してはもちろん、韓国のことやら
そのほか(くだらなすぎるコトまでw)情報が満載ですなぁ。
ぜひとも我々と愉快な仲間になってください。
ではぁ~。
さかなと申します。ゆたしくうにげーさびら~。
最近毎日のように新しいお客様が現れてすごいですね、ここ!
次はどんな人がやってくるのだろう……そう、それは今これを読んでるそこのアナタかもしれません。ふふ。
しっかし先輩、ソッコー追っかけてきましたね!
「ねえ、ほんとにごはん行かないつもり!?」が言いたくて。笑
言っちゃう前に事情を察してくれて本当に良かったです。
一応アクセル踏んでスピード上げてくれたことにも安心しました。
淳よ、心配させすぎだ…。
コメントありがとうございます~!めんそーれー!!
沖縄の方なのですね!つい先週末沖縄行ってきたところなので、すごくタイムリーな感じで親しみ湧いてます(^0^)!あの青空の下でブログ見てらっしゃるんですね~‥なんだか嬉しくなっちゃいます♪
そして女性は「ハイタイ」と言うのですね!勉強になりました。今度沖縄行くときは使ってみようと思います。
これからもガンガン遊びに来て下さいね~!お待ちしています(^^)!!
青さん、リンク先拝見しました~!
これはMVなのですか?!映画みたいですねー!
曲よりもストーリーに釘付け‥。ピアノ蹴っ飛ばしてる彼、目がくりくりでユジョン先輩良さそうですね!
いつも韓国のエンタメを色々紹介してくださってありがとうございます、青さん!大変勉強になります~(^^)
そして姉様、さかなさん、いつも色々このブログを気にかけて下さってありがとうございます~!管理人より先に新入りさんにご挨拶してくださるなんて、本当温かい人達ばかりなのな。ウーロン茶で乾杯!!
全然関係ないですが、今度の日本語版はついにテンボルが出て来ますね!日本語で「僕のスズメバチ~」でいくのか「テンボルテンボル」言っちゃうのか、非常に楽しみにしております。(^^)
>「ねえ、ほんとにごはん行かないつもり!?」が言いたくて。笑
なのー?
「今回こそ雪ちゃんのおごりなのにズルいじょ!」って言おうとしたんじゃなくて?
「急に飯代が惜しくなったの?」て聞きに来たんじゃないの?
とまぁ、私のトンチン解釈は置いといて、
そーいえば!東京にはリトルコリアがあったんだった!うぐー。負けた。。
アソコら辺行ったらチートラグッズも置いてあるかなぁ。。
さあ、東京支部長!偵察よ!GO!
まずはイケメン通りあたりでリアル淳・亮を探しつつ…(いきなり脱線)
見つけたらエマージェンシーコールかけますんで姉さま静岡から応援よろしく!
それにしてもよく見たら渋滞っ!
淳そんなとこでアクセル踏みこんじゃ危ねーダロガー!!