まだ段ボールの片付かない混沌とした部屋の中で、雪は母親と電話していた。
「部屋の片付け?そんなのとっくに終わってるよ~」

「掃除もしたし、ゴミの分別だって完璧だから!」
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口から出る言葉と反比例したこの部屋を見回しながら、雪は冷や汗をかいていた。
おまけに母親がテレビ電話で本当かどうかを知りたがったので、ますます雪は声を大にして嘘をついた。
「いやいや本当にちゃんとやったってば!!」

すると、隣の部屋の人が壁をガンガンと叩いてきた。雪の心臓は跳ね跳びそうになる。
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ここは安アパートなので壁も薄く声が響くらしく、少しでも大きな声を出すと隣人は壁を叩いてくるのだ。
雪は電話を切ると、天を仰いで溜息を吐いた。
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思い描いていた一人暮らしとどこか違っている。
あれほど大きな決意で臨んだ休学も出来なかったし、
あの男は急に態度を変えるし‥。
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雪の脳内で、ヘラヘラと自分に声を掛けてくる青田淳の姿が思い浮かんだ。
もうわけが分からない‥。
考えようにも理解が出来なすぎるまま、夜は更けて行った。
翌朝、雪は大あくびをしながら部屋を出た。
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今日取る予定の授業は知り合いも居ないし、様子を見てオンデマンドに切り替えようか‥と考えていると、
突然隣のドアが開き、隣人が出てきた。
「ちょっとアンタ!大家さんに浪人生が隣りに住んでるって言われなかった?」

「常識ってもんを知らないのかしら?電話の声も丸聞こえだっつーの!」
初めて見る隣人は雪の姿を見るや否や、その不満をつらつら並べ始めた。
言うだけ言うと、今度から気をつけるようにと最後に言い残して、バンッとドアを閉めて隣人は部屋へ帰っていった。

雪は呆気にとられた。
オネェ言葉といい、その爪にされたマニキュアといい、あらゆる面で衝撃的な隣人だった‥。
ぽかんと口を開けたままでいると、ふいに携帯が鳴った。
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もうすぐ授業終わるんだけど、時間大丈夫? 小西恵
幼馴染みの恵からのメールだった。
雪はとりあえず大学へ向かった。
「よぉ~!赤山!ここで何してんだ?」
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恵を待っていると、健太先輩から声を掛けられた。
「知り合いを待ってるところです。小さい頃からの幼馴染みで、今年うちの美術科に入学して来たんですよ」

健太先輩が「それは女か?可愛いのか?」と食いついて来た。雪が苦笑いをしていると、向こうから恵がやって来た。
「おーい!雪ねぇ!!」

久しぶりの再会に、雪と恵はキャアキャアと手を取り合って喜んだ。

雪にとって恵は、昔からご近所に住む幼馴染みだが、可愛い妹のような大事な存在だった。
また恵も、一人っ子の彼女にとって雪は頼りになる姉のような存在だった。
小さい頃は雪をめぐって恵と雪の弟の蓮がよく喧嘩をしたものだった‥。
盛り上がる二人に、健太先輩が声を掛けてきた。まだ居たんかい

雪は健太先輩をうちの学科の先輩だと恵に紹介すると、恵は丁寧な笑顔を浮かべて自己紹介した。
健太先輩が二の句を継げないでいると、恵は今からミーティングだったと慌て出した。
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恵は笑顔で別れの挨拶を雪と健太先輩にすると、その小さな身体で一生懸命走って行った。
雪も笑顔で見送った後、隣で健太先輩が微動だにしてないことに気がついた。

やばい、逃げようと思ったが遅かった。
「赤山っ!」

健太先輩はお前とあの子本当に仲良いんだよなと猛烈な勢いで詰め寄って来た。
「それなら俺に紹介してくれ!」

健太先輩がそう言い終わらない内に、雪は「あの子彼氏居ますよ」と咄嗟の嘘を吐いていた。
しかし健太先輩には全く効かなかった。
「そうなのか?でも大学に入ったんだし気が変わるかも!」

それは無いと思うと言う雪に、とりあえず一回聞いてみてくれよと健太先輩は強い眼力で言った。
雪はそれでもなんとか流そうとしてみたが、健太先輩の必死の頼みに根負けし、ついにしぶしぶ了承した。
「‥聞いてみるだけですからね?期待しないで下さいね」

そんな弱々しい言葉にも、健太先輩は絶大な期待を寄せた。
雪は困ったことになったと教室へ走りながら思った。

あの人相当しつこいのに!何されるか分からない‥彼氏の件が嘘だとバレたらなおさらだ!
恵にあんな人を紹介するなんてありえない。
雪の脳裏には幼い頃の恵の姿が思い浮かんだ。

パジャマ姿で追い出された幼少の時、雪の母に恵は必死に許してくれるように懇願してくれた。

給食代を無くして1ヶ月昼飯抜きだった高校時代、恵は中学生だったのに雪の為にお弁当を作ってくれた。

その他もろもろ、雨が降ったら傘を持ってきてくれた、手作りのクッキーを差し入れしてくれた‥。
脳裏に浮かぶ数々の思い出のBGMに、賛美歌が流れ続けた。
小さい頃から傍に居た。
思い出せばキリがない程、恵はいつも雪を助けてくれた。

あの天使のような恵を、あの健太先輩に紹介するなんて‥。

ダメ!絶対!
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同じ大学といえど、幸い恵は美術科。
経営学科とは校舎も離れているし、どうにか避けて行動すれば問題ないだろう‥。
不安な気持ちを納得させるかのように、雪は自分にそう言い聞かせた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<一人暮らしと幼馴染み>でした!
恵ちゃんがようやくちゃんと出て来ましたね。
小さい頃から無償のような愛情をくれた恵ちゃんは、雪にとっては特別可愛い存在なんでしょうね。
そんな恵ちゃんのBGMは、賛美歌です。
(Libera - Sanctus)
分かる限り、本編に出てくる音楽を紹介したいと思っています。
まぁ一番の衝撃はやはり「テンボル」でしょうけどね!(しつこい)
次回は<一緒の授業>です!
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「部屋の片付け?そんなのとっくに終わってるよ~」
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「掃除もしたし、ゴミの分別だって完璧だから!」
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口から出る言葉と反比例したこの部屋を見回しながら、雪は冷や汗をかいていた。
おまけに母親がテレビ電話で本当かどうかを知りたがったので、ますます雪は声を大にして嘘をついた。
「いやいや本当にちゃんとやったってば!!」
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すると、隣の部屋の人が壁をガンガンと叩いてきた。雪の心臓は跳ね跳びそうになる。
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ここは安アパートなので壁も薄く声が響くらしく、少しでも大きな声を出すと隣人は壁を叩いてくるのだ。
雪は電話を切ると、天を仰いで溜息を吐いた。
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思い描いていた一人暮らしとどこか違っている。
あれほど大きな決意で臨んだ休学も出来なかったし、
あの男は急に態度を変えるし‥。
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雪の脳内で、ヘラヘラと自分に声を掛けてくる青田淳の姿が思い浮かんだ。
もうわけが分からない‥。
考えようにも理解が出来なすぎるまま、夜は更けて行った。
翌朝、雪は大あくびをしながら部屋を出た。
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今日取る予定の授業は知り合いも居ないし、様子を見てオンデマンドに切り替えようか‥と考えていると、
突然隣のドアが開き、隣人が出てきた。
「ちょっとアンタ!大家さんに浪人生が隣りに住んでるって言われなかった?」
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「常識ってもんを知らないのかしら?電話の声も丸聞こえだっつーの!」
初めて見る隣人は雪の姿を見るや否や、その不満をつらつら並べ始めた。
言うだけ言うと、今度から気をつけるようにと最後に言い残して、バンッとドアを閉めて隣人は部屋へ帰っていった。
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雪は呆気にとられた。
オネェ言葉といい、その爪にされたマニキュアといい、あらゆる面で衝撃的な隣人だった‥。
ぽかんと口を開けたままでいると、ふいに携帯が鳴った。
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もうすぐ授業終わるんだけど、時間大丈夫? 小西恵
幼馴染みの恵からのメールだった。
雪はとりあえず大学へ向かった。
「よぉ~!赤山!ここで何してんだ?」
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恵を待っていると、健太先輩から声を掛けられた。
「知り合いを待ってるところです。小さい頃からの幼馴染みで、今年うちの美術科に入学して来たんですよ」
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健太先輩が「それは女か?可愛いのか?」と食いついて来た。雪が苦笑いをしていると、向こうから恵がやって来た。
「おーい!雪ねぇ!!」
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久しぶりの再会に、雪と恵はキャアキャアと手を取り合って喜んだ。
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雪にとって恵は、昔からご近所に住む幼馴染みだが、可愛い妹のような大事な存在だった。
また恵も、一人っ子の彼女にとって雪は頼りになる姉のような存在だった。
小さい頃は雪をめぐって恵と雪の弟の蓮がよく喧嘩をしたものだった‥。
盛り上がる二人に、健太先輩が声を掛けてきた。
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雪は健太先輩をうちの学科の先輩だと恵に紹介すると、恵は丁寧な笑顔を浮かべて自己紹介した。
健太先輩が二の句を継げないでいると、恵は今からミーティングだったと慌て出した。
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恵は笑顔で別れの挨拶を雪と健太先輩にすると、その小さな身体で一生懸命走って行った。
雪も笑顔で見送った後、隣で健太先輩が微動だにしてないことに気がついた。
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やばい、逃げようと思ったが遅かった。
「赤山っ!」
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健太先輩はお前とあの子本当に仲良いんだよなと猛烈な勢いで詰め寄って来た。
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健太先輩がそう言い終わらない内に、雪は「あの子彼氏居ますよ」と咄嗟の嘘を吐いていた。
しかし健太先輩には全く効かなかった。
「そうなのか?でも大学に入ったんだし気が変わるかも!」
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それは無いと思うと言う雪に、とりあえず一回聞いてみてくれよと健太先輩は強い眼力で言った。
雪はそれでもなんとか流そうとしてみたが、健太先輩の必死の頼みに根負けし、ついにしぶしぶ了承した。
「‥聞いてみるだけですからね?期待しないで下さいね」
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そんな弱々しい言葉にも、健太先輩は絶大な期待を寄せた。
雪は困ったことになったと教室へ走りながら思った。
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あの人相当しつこいのに!何されるか分からない‥彼氏の件が嘘だとバレたらなおさらだ!
恵にあんな人を紹介するなんてありえない。
雪の脳裏には幼い頃の恵の姿が思い浮かんだ。
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パジャマ姿で追い出された幼少の時、雪の母に恵は必死に許してくれるように懇願してくれた。
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給食代を無くして1ヶ月昼飯抜きだった高校時代、恵は中学生だったのに雪の為にお弁当を作ってくれた。
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その他もろもろ、雨が降ったら傘を持ってきてくれた、手作りのクッキーを差し入れしてくれた‥。
脳裏に浮かぶ数々の思い出のBGMに、賛美歌が流れ続けた。
小さい頃から傍に居た。
思い出せばキリがない程、恵はいつも雪を助けてくれた。
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あの天使のような恵を、あの健太先輩に紹介するなんて‥。
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ダメ!絶対!
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同じ大学といえど、幸い恵は美術科。
経営学科とは校舎も離れているし、どうにか避けて行動すれば問題ないだろう‥。
不安な気持ちを納得させるかのように、雪は自分にそう言い聞かせた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<一人暮らしと幼馴染み>でした!
恵ちゃんがようやくちゃんと出て来ましたね。
小さい頃から無償のような愛情をくれた恵ちゃんは、雪にとっては特別可愛い存在なんでしょうね。
そんな恵ちゃんのBGMは、賛美歌です。
(Libera - Sanctus)
分かる限り、本編に出てくる音楽を紹介したいと思っています。
まぁ一番の衝撃はやはり「テンボル」でしょうけどね!(しつこい)
次回は<一緒の授業>です!
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とは言え、コイツも要所要所でイイ仕事してくれてるからなー。
この後、雪ちゃん、木の影で青田の口を覆っちゃいますもんね。
あの時の青田の顔。萌え。
最新版、更新されましたね。
ロマンスから一転、ムカつく健太のコマが多くてまたムカつく。
健太、もう消えてくれていーよ。キミの仕事は終わった。
それとあの女。マネ女。
絆創膏してたな。そんなモンで済んじゃったのか。ちぇ。
そんな木曜の朝です。。
最新版見ました見ました!
まだ訳してないんですが、健太先輩の暴走っぷりで困った感がビシビシ伝わってきました‥。
私なにげに柳先輩好きです。日本語版の「楓」って名前にも萌えます(笑)
マネ女、ミンスでしたっけ。日本語版だと確か香織ちゃん‥。彼女はこれから先輩にじわじわと追い詰められていくんでしょうな!
先輩は敵に回すと恐ろしいけど、味方になるとこれほど頼もしい人はいないですね‥。
まともに名前も呼びたくない。笑
最新版、アプリじゃなくてWebの方だと、読者のコメントが見れるんですよね。
って、憶測で、そのコメントをそのまま翻訳機にかけたら、「殺す」だの「死ぬ」だのの文字が踊ってた…笑
yukkaneんも言ってたけど、ヤツは読者間で相当嫌われてんですねー。
あわれ、健太の存在感が…苦笑
アイツも十分ウザいのにっ!
私も柳(楓 萌えw)先輩、けっこう好きー。
青田と1番仲良しでいるってトコも、きっと彼はバランスが良いんだろなーと。
卑屈でもなく、図々しくもなく、そこそこ信頼も出来る存在なんでしょね。
青田も、彼の前ではたまに本音を漏らすし。
「気に障るコトがあって」とか「何を今さら」とか。
私もこれからシコシコ訳してみます。
暑くて…まいったな。
萌えシーンが少なくてヤル気が出ん。笑
私も萌えシーンがないと翻訳のモチベーションだだ下がりです!
ですので今は英訳サイトが上がるのを今か今かと待ってます‥。
柳先輩いいですよね!要所要所で雪のことを擁護したり褒めたりしてるのもポイント高しです。
特別急いで知りたい場面もないので。笑
早く河村さん出てこないかしら~。
あと、私も自分のトコで残念な青田集を作りかけたけど、コレが案外キツイ。
画像を並べるだけならよかったんだけど、それなりに時系列考えたりすると、まとまりつかなくなっちゃって。
yukkanenさんの苦労と偉大さを思い知りました~(T . T)
柳先輩、裏表なくさっぱりしてよいですよね~。
柳先輩の会話訳すの、他より楽な気がします。笑
彼女の前で手がムズムズしないようならそれでも男か?
って私の訳ではゆってましたよ。笑
私、内容がざつぱりわかる範囲の訳しか出来ないんで、ときどき、え…!?って仕上がりになるんですよね^_^;
他にも気になる仕上がりになったところがあるのですが、
おいおいYukkanen さんの訳で改めようと思ってます。笑
健太先輩はとても29とは思えないですよね~。
ミンス、ちゃんちゃんこもパクってしまいましたし。
なんで、キーホルダー携帯につけちゃったんでしょう。
行き着く先は…やっぱり休学?笑
なぜかわたしは、先輩の仕草にそれなりに萌え~でした。
どうかしちゃってますね、私。笑
いえいえ滅相もない‥。
気長に「ガックリ青田先輩集」お待ちしてます~(^^)
>りんごさん
私の訳も「彼女の前で手がムズムズ‥」ってなってましたよww
なんか擬音が日本語と韓国語って微妙にニュアンス違いますよね‥。前回雪がキスされた後、胸に手を当てている場面の擬音が「ムズムズ」?だか「コソコソ」?だかとにかくこそばゆい、胸がくすぐったいみたいな擬音らしいんですが、日本語でピッタリくるものが今のところ無くて‥。
なのでりんごさんの訳の仕方ではなく、そういう問題もあると思いますよ!
私も日々勉強です‥。
ミンスのちゃんちゃんこ‥。
まぁよく見つけましたよねアレ‥。韓国では流行ってるのか‥?
私も先輩がミンスの前で雪を庇ったとことか、萌えました‥。そこくらいですかね、速攻で訳したのは‥笑
あの萌え萌えシーンの後は訳してなかったです。ムズムズしてたのか。笑
微妙なニュアンスは難しいですね。
吹き出し以外の、手書き風の文字も重要なこと書いてありますよね。
先輩顔小さいですよね。手が大きいのか。頬杖つく仕草で。
あの例の萌え萌えシーンも、今では盛り上がりも薄れてしまいました。見過ぎたのでしょうか…?f^_^;
では、おじゃましました~☆
雪ちゃんと恵ちゃん可愛い関係ですね♪( ´▽`)
手書き文字!重要なこと書いてあるけど、判別不能なことが多い‥(^^;)気になりますね。。
先輩はもうモデルみたいですよね。雪と並んで教室に入ってくるとこなんか、芸能人みたいなスタイルですよ。
>ROMさん
コメントありがとうございます!
いつも見て下さってるんですか!ありがとうございます(*^^*)
雪と恵は素敵な関係ですよね。可愛くて仕方ない!みたいな。
また遊びに来て下さいね♪