Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<淳>中庭にて

2013-06-19 01:00:00 | 雪2年(グルワ、ホームレス事件)
「先輩!」



呼び止められた淳が振り向くと、同じ学科の女学生が、わいわいと仲間と共に寄って来た。

「先輩、どこ行かれるんですか?一緒に行きましょう!」「俺らも一緒に行くぜー」



共に歩きながらも、皆口々に先ほどの授業で淳が優秀な答えを導き出したことや、

教授からの突然の質問にも完璧に答えていたことなどを話題に出し、彼を誉めそやしていた。

すると廊下の先から、事務職員の品川さんが現れる。

「淳君、さっき教授があなたのこと呼んでたわよ!」



開講した途端人気爆発ね~と言う彼女に、にこやかに接しながら共に歩く。

何かと淳に付きまとってくる女学生も教授の部屋へ一緒に行くと言い、世間話をしながら廊下を歩いた。



「あ、そうだ。淳君は早期卒業の考えはあるの?」



品川さんの質問に、淳は「はい、可能なら。」と答える。

やっぱりすごいな~と品川さんが感嘆する横で、女学生が「ヤダヤダ」とごねながら惜しんだ。



いつもの風景だ。

周りの人々が、自分に向かって賛辞の言葉を浴びせる。



その騒がしさはどこか、ノイズに似ていた。




中庭のベンチで一人、目を瞑る。


さっさと卒業しよ‥



彼は疲れていた。



ノイズに囲まれ続けた三年間の、疲労が身体に蓄積していた。

「なんで私にだけそうやって言うの?!」



誰かの怒号が耳から入って来たので木陰から覗くと、

あの後輩が携帯電話を手に通話しているところだった。

「私がわざとそうしたと思ってるの?間違いもあるに決まってるじゃない!」



赤山雪。

前もこうやって影から彼女の姿を隠れ見たことがあった。

新歓飲みの時、タバコを拾ってヘラヘラ笑って、第一印象から最悪だった。



淳は鈍い頭痛を感じて、こっそりと席を外そうと腰を浮かせる。

「だから学年首席のどこが簡単なのよ!」



赤山は文句を言っていた。

口調と内容からして、家族‥推測するに相手は母親であるようだ。

「全体首席は一人だけなの!もうそれはすでに他の奴が取ってるのよ!」



全体首席である他の奴‥それは自分に他ならない。

淳はそのまま息を潜めて会話を聞いた。

「私、蓮が奨学金を受けたとこなんて一度も見たことない。

蓮にそうやって叱ったことすらないでしょう?!」




「私もお父さんの子供じゃないの?!」



「私の方がずっと一生懸命やって来たの!」



赤山は父親に認めてもらおうと、いつも人並み以上に勉強を頑張って来たと母親にその努力を訴えた。

全体首席に拘っているところを見ると、一番を取れば父親から認めてもらえるのか、

それとも全額奨学金をもらえなかったことへの両親からの不満か、

どちらにせよその葛藤が滲み出た内容だった。




やがて赤山は電話を切った。

父親とは何度話をしても分かってもらえず、その八つ当たりを母親にしてしまったと、最後は謝っていた。



彼女が溜息を吐く。

淳はふぅん、と一人納得していた。



彼女がなぜ自分に対して突っかかって来るのか、なぜあんなにも屈折しているのか、分かったような気がした。

淳は今度こそ席を外そうと立ち上がった。







赤山は俯いていた。

手で顔を覆い、唇をギュッと噛んで、何かに耐えているようだった。

淳はその表情の真意が飲み込めずしばらく彼女を見ていたが、

彼女はパッと顔を上げると、スタスタと歩いて行ってしまった。






父親‥。




淳の脳裏に、幼い頃の記憶がフッと掠めた。



そして赤山の、感情を押さえ込んだ口元が、思い浮かんだ。





その後淳は彼女が見えなくなるまで、その後姿を見送った。





後日、廊下で赤山と会ったが、挨拶をする素振りをした彼女を尻目に、無視して通り過ぎた。






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<淳>中庭にて でした。


次回は雪の話に戻ります。



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