『漢方の味』(鮎川静:著、日本漢方医学会出版部:1939年刊)という本をご紹介しています。今回は第4回目です。
◆消化剤の有害性
著者の鮎川氏は、消化剤についても、「治療界から此(こ)の消化剤という代物(しろもの)を取り除いたら、如何(いか)に人間の胃腸、延(ひ)いては総(すべ)ての健康がよくなることであろう。」と言って、その存在を嘆いています。
西洋医学の考え方は、
消化不良 → 消化液の不足 → 消化剤を与えればよい
というもので、健康な人と消化不良を起こしている人の胃液を比較・分析して、不足している成分を明らかにすることに力を入れているわけです。
しかし、鮎川氏は、なぜ消化液が足らなくなったのかを詮索することこそが最も急を要する治療の根本であると指摘し、病人の数が一向に減らない西洋医学について、
「異常胃液の分析法が如何(いか)に進歩したところでその根本(もと)を忘れた進歩では治療学上の有難味は爪の垢(あか)程も無いのだ、こうしたお道具だてを称して医学の進歩だなどと称するのは良心無き極みだと思う。」
と痛烈に批判しています。
確かに、不足している胃液の量や成分を消化剤で補うというのは、本ブログの「卵巣機能不全」でご紹介した、水が不足している井戸に他(よそ)から水を補給するという考え方と同じであり、何の解決にもなっていないのは明らかです。
西洋医学の専門家は、こういう発想しかできないので、病人の数が一向に減らないというのも不思議ではないですね。
鮎川氏によると、胃液の分泌や胃液の成分には腎臓機能が深く関わっているそうです。
そして実際に、多くの病院を渡り歩いても治らず、何年も患っていた慢性の胃病が、茯苓沢瀉湯(ぶくりょうたくしゃとう)などの利尿を主とする湯薬(とうやく)でケロリと治るそうです。
したがって、消化剤というものは、人々を不健康な状態にとどめておくだけでなく、お金と時間の無駄遣いを強いるという意味においても、非常に有害であるということが分かります。
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今回登場した茯苓沢瀉湯は、『皇漢医学 第1巻』(湯本求真:纂著、湯本四郎右衛門:1933年刊)という本によると、嘔吐してのどが渇く症状に対する特効薬で、また、嘔吐がなくても、胃に水が溜まりみぞおちが痛んでのどが渇く諸病に有効だそうです。
なお、主薬の茯苓(ぶくりょう)と沢瀉(たくしゃ)は利尿剤です。頻尿の人、多汗の人には、茯苓沢瀉湯は不向きだと思われますので、お気をつけください。
やはり、漢方薬を使う場合は自己判断せず、漢方医に診断してもらって最適な薬を処方してもらうのが安全だと思われます。
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