河北新報より転載
脱原発への道 独・旧グライフスバルト原発



◎着手19年、廃炉道半ば/廃棄物180万トン、解体費4000億円超
福島県議団は7月中旬、福島第1原発事故の収束に向けた課題などを探るため、廃炉技術が進むドイツを訪れた。
首都ベルリンの北に位置するメクレンブルク・フォアポンメルン州。バルト海沿岸の港町にある旧グライフスバルト原発の敷地に入ると、ごみの山が表れた。
ドラム缶や配線、さびた金属類が野ざらしのまま置かれている。廃炉で生まれた大量の廃棄物だ。
1990年に停止し、95年に解体作業が始まった。当時1~4号機が操業しており、5、6号機は操業直前、7、8号機は建設中だった。これまでに掛かった解体費用は4000億円を超える。進行状況は8割強で、19年経過した今も廃炉作業は終わっていない。
「最初は無知からのスタートだった」と解体会社ノルト・エネルギー社の広報次長グルドラン・オールデンブルグ氏は振り返る。解体は放射線量が低い関連設備から着手し、炉心や燃料棒など徐々に難しい場所へ進んだ。「考えられる技術は全て採用した」
除染では、2000気圧の高圧洗浄のほか、ステンレスの粉を吹き付けて表面を研磨する技法や高濃度の酸など化学物質で洗浄する方法などを取り入れた。原子炉容器の取り出しでは作業員の被ばくを抑えるため、遠隔操作ロボットを導入した。
解体に伴って発生した廃棄物は180万トンに上る。うち56万トンは放射性物質が付着しており、敷地内にある中間貯蔵施設に、汚染レベル別に八つの「ホール」に分けて保管している。
「第7ホール」に並んでいたのは、1~4号機で使用されていた原子炉容器と蒸気発生器30体。放射線量が高いものは2メートルの距離で毎時50マイクロシーベルト。作業員の被ばくを防ぐため、解体作業に着手できず、放射線の自然減衰を待っているという。
最も高線量で、視察が許されなかったのは「第8ホール」。使用済み核燃料5000体が容器(キャスク)に乾式保管されており、全ての取り出しには12年を費やした。
国内最大の原発解体に携わった同社の廃炉技術力は欧州トップと評され、ロシアやウクライナの原発の廃炉も受託している。「われわれのこの20年は財産だ」とオールデンブルグ氏は胸を張る。
こうも付け加えた。「フクシマは私たちの原発とは全く違う。われわれにも想像できない厳しい道が待っている」
2014年08月05日火曜日