毎日新聞より転載
<福島第1>建屋周辺、地下水海へ 東電、漁協に計画説明
毎日新聞 8月7日(木)21時11分配信
東京電力は7日、相馬双葉漁業協同組合(福島県相馬市)の理事会で、福島第1原発の原子炉建屋周囲の井戸「サブドレン」から地下水をくみ上げ、浄化した上で海に放出する計画を説明した。汚染前の地下水をくみ上げて海に放出する「地下水バイパス」に加え、原子炉建屋近くの汚染された地下水もくみ上げ、増え続ける汚染水を減らすのが狙い。これに対し、漁協関係者からは、不安の声が上がった。
計画によると、事故以前から地下水位を調整するため掘られていた27本に加え、新たに15本のサブドレンを新設する。くみ上げる地下水は、事故直後に地面に降った放射性物質に触れ、放射性セシウムやストロンチウムなどの濃度が高くなっている。このため、浄化装置を新たに設置し、地下水を浄化したう上で一時タンクにため、放射性物質が基準値以下であることを確認した上で海に放出する。
汚染水は、地下水が原子炉建屋に流入することで1日当たり400トン生じている。汚染水を保管するタンクの増設は限界があり、東電はサブドレンからの地下水のくみ上げを汚染水対策の柱の一つと位置づける。建屋への流入を1日200トン減らせるという。
理事会は非公開で行われた。会議後、同漁協の佐藤弘行組合長は、5月に始まった地下水バイパスで基準値を超す放射性物質が一部で検出された点を問題視する意見が参加者から相次いだことを明らかにした。その上で「地下水バイパスの基準値超えについて目に見える対策がなければ、今回の計画受け入れの障害になる可能性はある」と述べ、慎重な姿勢だった。さらに「漁業者の理解を得るのに、より多くの時間を費やす必要がある」とも指摘した。
一方、東電福島復興本社の新妻常正副代表は報道陣に対し「(排水)設備の健全性を確認後、漁業関係者の方々に説明したい」と述べ、地元への説明を続ける考えを示した。関係者の了承が得られれば、9月末にも試験的にくみ上げを開始したいとしている。