音楽学者・評論家の属啓成(さっかけいせい、1902-1994)氏の『ベートーヴェンの生涯』(三省堂発行)という本です。根性すわってる表紙に惹かれて古本屋で1,080円で買ってきました。安いのか高いのか?
本を開いてまず驚いたのは72ページもある口絵の121枚の写真。属氏が自ら撮影した写真もけっこうあります。
↑ 第九を書いた家。著者撮影。
↑ 第九を完成した家。現在でも様子は変わっていないんでしょうか?
この本のいいところは単なる伝記ではなく、テーマ別に章が分かれているところです。読みやすい。
(家族、師、交遊、聾者となるまで、ベートーヴェンが演奏した演奏会、風貌と肖像画、ベートーヴェンと自然、住所と遺跡、年代表、ベートーヴェンの伝記についての各章)
このうち、「住所と遺跡」の章は属氏の実地取材による独自の研究であり、旅行者のためのガイドブックにもなっています。
それぞれの記述がかなり詳細にこだわっていて、まるでベートーヴェン百科事典です。属さん、もう完全にベートーヴェンおたく!
初版発行は昭和17年。戦時下の紙不足のなか、よくもこんな立派な本が出せたものです。紙の質も悪くないです。しかも、この本は「発売一週間にならぬ中に、既に倉を空にした」(再版の序より)そうです。戦争中なのにベートーヴェン本の熱心な読者がたくさんいたんですね。