『 風雲児 』 イナリワン
ドタドタッと
芝を蹴り上げ
はやる気持ちを抑えつつ
かかるハミも巧くかわして
上手に上手に操作する
気まぐれどころか
荒々しいまでの暴れん坊を
フワリ フワフワと
手の内入れて
120パーセントの
力を引き出す
豊の綱にあやつられ
淀に続き仁川でも
緑に輝く
イナリワン
第30回 宝塚記念 ( 1989年 ) より
第30回の宝塚記念の1番人気はヤエノムテキだった。
イナリワンは、ハイセイコー、カツアールといった歴代の優勝馬と同じ
地方競馬 ( 大井 ) からの上がりの馬だけに
春の天皇賞がフロックではないかと、注目されたレースだった。
この馬の荒々しい気性を御する鞍上の手腕が勝負を左右すると予測されたが、
心配とは裏腹に、それを上手く手の内に入れて勝利へと導いたのは鞍上の武豊であった。
イナリワンのように気性的に燃えやすい馬はスピードがあり、爆発力で勝負する脚質である。
その反対に我慢強い馬はスタミナがあり、粘りで勝負する脚質がある。
これらの馬の長所を最大限に引き出すには、
無駄な脚力や体力を消耗させないために、鞍上鞍下がケンカをしないことである。
そして馬の機嫌を損なわないように 「 なだめ 」 気分よく走らせる。
騎手は馬に話しかけ、馬は騎手の言葉を聞きながら、
お互いの気持ちを理解して走ることだ。
そして勝負どころの4コーナーを回る時に、
どれくらい脚力が残っているか。どのくらい脚力を残させたか。で、
ほぼ勝負が決まって来る。
もちろん馬の持っている潜在能力にもよるが、
同レベルの馬ならば、脚力も体力も在る時に倹約した方に分がある。
レース展開やペースにもよるが、これは僕らのやっていた競輪も同じである。