つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

1692本目の勝利。

2020年10月30日 08時44分48秒 | 賭けたり競ったり
       
“インの鬼姫”、“東海の女王蜂”と異名をとったレーサーが、カポックを脱いだ。

きのう、2020年10月29日、愛知県・常滑競艇場に於いて行われた、
「ヴィーナスシリーズ:常滑シンデレラカップ」の最終日、第8レースで、
「鵜飼菜穂子(うかい・なほこ)」(61)が、
39年間の現役生活に幕を下ろした。



「スタートだけは行こうと思ってました。」--- と語ったとおり、
ラストランはインから質のいいトップスタートを決め、見事1着。
1692個目の白星を積み上げ、有終の美を飾った。

刻んだ記録(勝利数/優勝回数)は、女子レーサー史上トップだが、
ここまで描いた航跡は決して穏やかではなかった。
プロ登録された直後の練習中、大時計に激突。
命を危ぶまれるほどのケガを負い、デビュー戦は他の同期よりも半年遅れ。
当時は、女子レーサーが少なく、男社会だった昭和の競艇界。
「新人は外から走る」のセオリーに逆らい、勝つために有利なコースを取りにいくと、
先輩・男子レーサーから煙たがられ、手で押し出された。(※今はルール違反)
何度も(本人曰く何千回も)「オンナのクセに」と非難され、
レース場で笑顔を見せることはなく、涙を流してばかりだったという。

しかし、彼女はへこたれなかった。
負けたくない、強くなりたいと精進を続け、大記録を残し、ファンの記憶に残った。
そして、自身最後のレースを勝ち切った。
先日(2020/10/8)、やはり引退を発表した同期の「今村 豊」氏共々、
大ベテランの姿が消え「一つの時代」が終わった節目を実感する。

最期に、きのうのレース「山田アナ」の実況聴き起こしを記し、結びとしたい。

『オール女子による争いです。
 ヴィーナスシリーズ常滑シンデレラカップ、
 6日目・最終日の争い××戦(※伏字聞き取れず)の攻防、第8レース一般戦です。

 1号艇、鵜飼菜穂子。
 2号艇、大石真央。
 3号艇、後藤美翼。
 4号艇、高憧四季。
 5号艇、飯田佳江
 6号艇、赤井星璃菜です。

 選手生活39年、今、引退の時を迎えます。
 女子王座、過去三連覇。 抜群に輝いていました。
 昭和に平成、そして令和と逞しく戦い抜きました、鵜飼菜穂子。
 レーサー人生、その集大成です。感謝の気持ちで今ラストランを迎えます。
 レジェンド鵜飼がガッチリと、もちろんここインコースを押さえるところ。
  <中略>
 スロー水域には3艇進入123、鵜飼、大石、後藤。
 ダッシュ3艇456、高憧、飯田、赤井。
 3対3とスタイル別れました、第8レースの一般戦!
 ファイナルラン、イン戦、鵜飼!・・・スタートまで10秒を切りました。
 インコースから、1番、2番、3番。4番、5番、6番です。

 今スタートしました!
 インコースからトップタイミング!
 ピタッと行った1号艇の鵜飼が、そのまま出る!先行です。
 2コースから2号艇・大石は差す。
 外を回って3号艇・後藤が攻めのハンドル、バックへ入るが、踏ん張ったぁ~!
 リードは1艇身半、2艇身と鵜飼が先頭ぉぉ!
  <中略>
 1番、3番、4番となって全艇がこれより最終周回ラストラップに入ります。
 第8レース一般競争です。
 トップ航走、見事でありました、1号艇・鵜飼が3周1マークの旋回から
 最後のバックストレッチへ今クリアするところ。
  <中略>
 上位態勢は1番、3番、4番となっています。先頭は独走です、鵜飼菜穂子ぉ!
 ボート界女子、記憶に残るレジェンドがファイナルランに見事先頭。
 有終の美を飾ります。
 円熟の女王、ラストコーナーの旋回から最後のホームストレッチへと
 独走態勢は、1号艇の鵜飼。
 2番手には3号艇の後藤、3番手は4号艇・高憧と続いた第8レースの一般競争。
 間もなくゴール!
 39年間お疲れさまでした!1号艇・鵜飼一着でゴールイン!!

       
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連覇か、初戴冠か --- それが問題だ。<追記アリ>

2020年10月26日 11時43分58秒 | 賭けたり競ったり
   
競艇に於ける最も格式と伝統あるレース。
それが「ボートレースダービー(全日本選手権競走)」だ。

初回は、本競技が産声を上げた僅か2年後、昭和28年(1953年)に開催。
今夜、67回目の優勝戦が火蓋を切る。
舞台は、長崎県・大村市の「大村競艇場」。

きのう前回投稿にも記したが、今節は混戦を極めた。
有力候補がケガやフライングで戦線を離脱。
あるいは調整に苦労して、伏兵が台頭。
高配当が続出し、波乱含みの予選道中となった。

5日間の激戦を戦い抜き、ラストバトルへ舳先を進めたのは以下の6戦士。

1号艇: “遠州のヤングスター”    深谷 知博
2号艇: “上州のポイズンキラー”   毒島 誠
3号艇: “西のゴールデンドラゴン”  金子 龍介
4号艇: “HIROSHIMAの刺客” 上平 真二
5号艇: “福岡のtheクレバー”     枝尾 賢 
6号艇: “新婚の大きなツバサ”    佐藤 翼  



敢えて言おう。
稀に見る「レアケースである」---と。
銘柄級は「毒島」のみ。
6人中4人がSG初優出。
6人中SGウィナーは1人だけ。
複雑な思いと共に、唸りたくなる組み合わせだ。

皆、それぞれにドラマはある。
「深谷」は、予選の幸運をバネに、強豪を退けて初戴冠まであと一歩。
「毒島」は、昨年に続く、史上2人目の連覇へ。
「金子」は、今年事故死した恩人「松本勝也」さんに報いる初戴冠を。
「上平」は、デビュー26年目で射止めたチャンスをモノにし初戴冠を。
「枝尾」は、九州地区唯一の進出から、牙城を守り初戴冠を。
「佐藤」は、艇界のアイドルを射止め、新妻のためにも初戴冠を。

連覇か?初戴冠か?
神は、選ばれし6戦士の誰に微笑むのだろうか?!

僕は、エールを送る「毒島 誠」を推す。
地力、実績、機力では、間違いなく一枚上手だ。
今年は苦しい戦いが続いた。
しかし、ようやく日本一への道が拓けるかもしれない。
もちろん、重い扉を開けるのはレーサー自身。
一ファンとしては、応援の祈りを込めて舟券を投票させてもらう。
   
威風堂々、毒島誠。



神の答えは、初戴冠だった。/2020年10月26日追記
      
「第67回 ボートレースダービー」の優勝戦が終わった。
優勝は“遠州のヤングスター”「深谷 智博」。
若きダービー王の誕生である。
1コースからトップスタートを決め、他艇には何もさせずに逃げ切った。
文字通りの「完勝」だった。
おめでとう!

僕が、期待を込めた「毒島」は、グウの音も出ない「完敗」。
僅かに後手を踏んだスタート。
最初のターンに失敗し、3号艇をブロックしながら流れた内懐に、
外枠艇の差しを許して万事休す。
一時は最下位もあり得たが、道中の競り合いから捌き、2着でゴール。
モーターの力があればこそ、操船テクニックがあればこその準優勝だけに、
序盤のミスが悔やまれる。

前節、フライングを切っていなければ、もっと踏み込めたかもしれない。
今節、予選最終日に「恵まれ」(事故などで次位が一着になる)がなければ、
「深谷」と「毒島」の枠番は逆だったかもしれない。
---「たら」「れば」はある。
しかし、このリアルがすべて。
そして、まだ終わりじゃない。

次へ向け、前を向き、
威風堂々とゆこう、日本一まで!!

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最高峰と最年長。

2020年10月24日 13時31分49秒 | 賭けたり競ったり
        
競艇レースにおける賞金額最高峰は、年末に行われる「グランプリ(賞金王決定戦)」。
格式最上位は、やはり伝統の一戦 --- 「ダービー(全日本選手権)」だろう。

現在、長崎県・大村競艇場に於いて「第67回 ボートレースダービー」が開催中。
今夜(2020/10/24)は、3つの準優勝戦が行われる。


大村競艇場は、全国屈指のイン天国。
さぞ本命決着が幅を利かすかと思いきや、左に非ず。
有力候補がケガやフライングで戦線を離脱。
あるいは調整に苦労して1号艇が惨敗するなどし、予選道中は波乱が続出した。
日替わりで乱高下した得点ランク上位に踏み止まったのは、以下の18名。

<9R>
1号艇:金子龍介(兵庫)
2号艇:前本泰和(広島)
3号艇:桐生順平(埼玉)
4号艇:佐藤 翼(埼玉)
5号艇:深川真二(佐賀)
6号艇:守田俊介(滋賀)

<10R>
1号艇:毒島 誠(群馬)
2号艇:上平真二(広島)
3号艇:新田雄史(三重)
4号艇:市橋卓士(徳島)
5号艇:峰 竜太(佐賀)
6号艇:磯部 誠(愛知)

<11R>
1号艇:深谷知博(静岡)
2号艇:吉川元浩(兵庫)
3号艇:枝尾 賢(福岡)
4号艇:池田浩二(愛知)
5号艇:篠崎仁志(福岡)
6号艇:井口佳典(三重)

明日の決戦に舳先を進めるのは誰か?!
それはまだ神のみぞ知る。
僕は、予選2位でここに辿り着いた「毒島」へのエールを惜しまない。
まずは優勝戦へ。
そして、ダービー連覇達成を祈る!

--- さて「ダービー」の位置づけは、SG(スペシャル・グレード)。
レースは、一般戦→G3→G2→G1→SGと、
優勝賞金額や選手レベルによってカテゴライズされているが、
艇界に200人余りいる女子レーサーだけの戦いもある。

そんな一つ、今日から愛知県・常滑競艇場で幕を開けた「常滑シンデレラカップ」を最後に、
現役引退を表明した選手がいる。
女子最年長の大ベテラン「鵜飼菜穂子(うかい・なほこ)」(61歳)である。
        


1959年生まれ、愛知県・名古屋市出身。
1981年11月にデビューし、同年・同月初勝利。
1989年、優勝回数・勝率・賞金、女子選手最高成績を記録。
1990年から、女子王座決定戦を3連覇。
スタート時、最内目掛けた前付け進入を辞さず、男共も蹴散らすインファイターぶりから、
付いた異名が「インの鬼姫」、あるいは「東海の女王蜂」。

現役39年で獲得した白星は、1,691。
通算優勝回数は、女子レーサー史上トップの56。
果たして、残り5日間でさらに数字を積み上げられるのか?!
カポックを脱ぐその時まで、大いに注目したい。

「お疲れ様」には、まだ早い。
ラストランが終わるまで、貴女らしく戦って欲しい!
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三途の川の渡し賃。~ 月と六ペンス。

2020年10月21日 23時00分01秒 | 手すさびにて候。
                   
<あなたにとって「幸せ」とは何ですか?>
--- という問いに対し、中には即答できる人もいるかもしれない。
<では、その「幸せ」のために、何もかも棄てられますか?>
--- と投げ掛けられたら、殆どが言葉に詰まるのではないだろうか。

イギリスの小説家「サマセット・モーム」が著した「月と六ペンス」は、
そんな難問を突き付けてくる一冊である。

ほんの手すさび、手慰み。
不定期イラスト連載、第百五十六弾は「裸婦モデルと絵筆を握る手。」

      
主人公「チャールズ・ストリックランド」は、
大都会ロンドンで証券マンとして働いていた。
それなりの成功を収め、貞淑な妻、利発な息子と可愛らしい娘がいる家庭。
傍目から見れば「幸せな暮らし」を送っていた四十男が、
ある日、忽然と姿を消す。
絵を描くために、何もかも棄ててしまったのだ。

人生が崩壊しようが、食えなくなろうが、
絵が売れようが売れまいが、一切おかまいなし。
人を裏切り、不義理を働いても悪びれずカンバスに向かい、
「己の芸術に没頭する幸せ」のためだけに生きていた。
只、なかなか理想の境地には到達できず、
常々夢想していた“憧れの楽園”--- 南太平洋の島「タヒチ」に活路を求める。

住まいは、街から離れた山の谷間に建つ小さなバンガロー。
眩しい南洋の光。
絶えることのない潮騒。
原始の面影を残す自然。
傍には、ポリネシアの美しい幼妻。
貧しいが満ち足りた暮らしの中で、魂(たましい)の安息を得た彼は、
絵筆を握り続けた。
病魔に倒れる直前まで。

画壇にも世間にも認められず、無名の画家として終えた生涯。
それを憐れで不幸せと捉える見方もあるが、
「ストリックランド」は、確かに幸せを手にしたのだと思う。

--- さて、最後に小説のタイトルについて考察してみよう。
本編中「月と六ペンス」の由緒を匂わせる記述は見当たらない。
著者「モーム」から読者への謎かけだ。

手元の新潮文庫版で、訳者はこう推理している。
<「(満)月」は夜空に輝く美を、
  「六ペンス(玉)」は世俗の安っぽさを象徴しているのかもしれないし、
 「月」は狂気、「六ペンス」は日常を象徴しているのかもしれない。>


僕は次の様に解釈したい。
<天上に輝く「月」は“天界への入り口”。
 「六ペンス」は、そこへ連れて行ってもらうための“代金”。
 三途の川の渡し賃---六文銭と同じ数字なのは、
 単なる偶然ではない気がする。>

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時代の語り部。~ 昭和家電の向こう側。

2020年10月18日 12時29分47秒 | 日記
僕は、生まれた時から「電化製品」に囲まれてきた。
何しろ、誕生時の体重1,700gの未熟児。 
温度・湿度・酸素濃度を調節する電気動力機械「保育器」の世話になった。

子供時代を振り返ってみても、冷蔵庫、洗濯機、扇風機、
ラジオ、テレビ、照明器具、黒電話など、身の回りには「家電」がいっぱい。
その状況は今も変わらないが、家電は時の流れと共に流転し、淘汰されてきた。
無くなった形状や機能、役目を終え消えたものも沢山ある。
そんな「絶滅種」を改めて目にすると、やはり感慨を禁じ得ない。
家電は“時代の語り部”でもあるのだ。

拙ブログでは度々登場する施設「津幡ふるさと歴史館 れきしる(LINK有)」にて、
企画展『なつかしい家電~昭和時代を中心に~』がスタート。
きのう、お邪魔してきた。

<電化製品は明治時代の末期に登場しましたが、
 高価であったため家庭で使用されるものは少なかったようです。
 役所や商店・事業所などでは電話機の普及が早かったようですが、
 戦後になると一般家庭でも電話機やラジオ、電気アイロンなどが普及しました。
 今回の展示では、昭和30年代の高度経済成長期から
 昭和50年代の製品を中心に平成までの家庭用電化製品の一部を集めました。
 それぞれの時代を彩った家電をご覧いただくことにより、
 当時の人々の家電に寄せる気持ちに近づいていただければと思っています。>

(※企画展パンフレットの冒頭文より引用)

町の保管庫から持ち出した展示品もあるが、
館長さん自ら調査交渉し、一般のお宅から借り受けたものもあると聞いた。
一部をご紹介したい。

画像、向かって右の「オープンリール式テープレコーダー」。
懐かしさを感じる方は、60歳以上だろうか? 
一本のテープで録音できる時間は、せいぜい30分。
デジタル録音の現在からすれば随分短く、嵩張る(かさばる)代物だ。
--- 余談ながら、僕はコイツを扱える。 
つい10数年前まで仕事の相棒だった。
「マクセル(maxell)」や「アグファ(AGFA)」ら、
磁気テープで録音再生した音の奥深い味わいを思い起こした。

真空管ラジオとトランジスタラジオ。
時代の古い方が、デザインが洗練されているなと感じる。
画像手前のトランジスタ式は、木目調・家具調。
奥の真空管式は、近未来を連想させる。
機器それぞれの方針の違いはあるだろうが、両者共にメーカーは「東芝」。
製造年の差はたった2年。
昭和40年代は、消費者が家電に求める意識、
ニーズが変化したタイミングだったのかもしれない。

帯域バンドも、馴染みのあるAM(Amplitude Modulation/振幅変調)、
FM(Frequency Modulation/周波数変調)ではない。
MW(Medium Wave/中波)、SW(Short Wave/短波)表記なのも、何だか洒落てる。

♪ダイヤルゥ、回してぇ、手を停めたぁぁぁ~(LINK有)
昭和60年(1985年)のヒット曲で歌われた描写は、
今やおいそれとは見かけなくなった。
--- 黒電話正面の回転ダイヤルには「河合谷(07628)」とある。
津幡町・河合谷(かわいだに)は、お隣の富山県と境を接する山間の里。
僕の母親の出身地だ。
彼女の生家で、昔、手回しハンドルが付いた電話機を使った記憶がある。

電話をかける際はハンドルをグルグル回して電話交換所を呼び出し、
交換手さんに先方の番号を伝え、回線をつないでもらうのである。
実際に使用した時は、妙にキンチョーした事を思い出す。

--- これらはほんの一端。
他にも様々な品が並んでいる。
是非、足を運んでみてはいかがだろうか。
きっと、何かが心の琴線に触れ、甦る思いがあるはずだ。

れきしる企画展『なつかしい家電~昭和時代を中心に~』。
会期は、令和2年11月8日(日)まで。
毎週月曜日休館である。

お隣のスペースでは「灯りのいろいろ」も同時開催中。
常設展示と併せて楽しんで欲しい。
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