つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

解放と歓喜の夕べ。

2024年05月27日 09時09分09秒 | 賭けたり競ったり
                     
昨夕(2024/05/26)2人の若武者が栄冠を手にした。

まずは大相撲夏場所に於いて幕内初優勝を飾った新小結、
「大の里 泰輝(おおのさと・だいき)」である。



単独トップで千秋楽を迎えた「大の里」関。
勝てば初優勝が決まる大一番。
押し出しで「阿炎(あび」関を破り、12勝3敗で初優勝。
幕下付け出しデビューとしては、初土俵から7場所目での史上最速記録となった。
出身地・わが津幡町では町役場でパブリックビューイングが行われ、400人余りが観戦。
優勝が決まると笑顔と歓喜が広がったという。
取り組みの現場、両国国技館でも同様。
ニューヒーロー誕生に惜しみない拍手と歓声が降り注いだ。



僕が印象に残ったシーンは、それら喧噪と一線を画するもの。
対戦相手を土俵の外へ退けた直後、彼は両眼を閉じ、天を仰ぐ。
その刹那、若武者の周りだけが静謐に包まれたように感じた。
優勝は意識せず自分の相撲を取り切る。
平常心を強調し、淡々と準備をして決戦に臨んで、
言い知れぬ重圧から解放された時、
「大の里 泰輝」から、束の間「中村 泰輝」に戻ったのかもしれない。

続いて「ボートレース オールスター」に於いてSG初優勝を飾った新鋭、
「定松 勇樹」(さだまつ・ゆうき)」である。



5日間に亘る激闘を勝ち抜き最終決戦へ舳先を進めたメンバーは以下の通り。
1号艇:定松勇樹(佐賀)
2号艇:宮地元輝(佐賀)
3号艇:馬場貴也(滋賀)
4号艇:森高一真(香川)
5号艇:瓜生正義(福岡)
6号艇:毒島 誠(群馬)
レースそのものは特筆するところはさしてない。
枠番の入れ替わりはなく、スタートも凸凹のない横一線。
モーターが仕上がっていた若武者は見事な高速旋回を繰り出し、
ファーストターンで他艇を置き去りにした圧勝劇。
艇界の綺羅星の中に一際輝くニュースターが誕生した。
だが、簡単に勝てたのかと言えば、決してそんなことはない。



ゴールを駆け抜ける瞬間、
「定松」は2度、3度と左手を振り上げた後、ガクンと頭を垂れた。
僕には、それが疲労困憊の現れに見えた。
この勝利は、本人が栄冠とビッグマネーを手に入れるだけに留まらない。
公営競技選手として背負わねばならない宿命、
億単位の掛け金のプレッシャーからの解放を意味している。
インタビューに答える表情に笑顔はほんの僅か。
紅潮した顔には無事に大仕事をやり終えた安堵が浮かんでいた。

何はともあれ、共に23歳が成し遂げた快挙である。
心から祝福を贈りたい。
おめでとう!
                       
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選ばれて在ることの恍惚と不安、二つ我に在り。

2024年05月26日 08時00分00秒 | 賭けたり競ったり
                      
今夕(2024/05/26)2人の若武者が栄冠奪取に挑戦する。
それぞれ異なる競技のハナシだが、共に23歳。
僕は、一方には諸手を挙げて声援を送り、
もう一方には複雑な感情を抱きつつ行方を注視している。



まずは、大相撲夏場所だ。
わが津幡町出身の力士、新小結「大の里」関が幕の内初優勝に王手をかけた。
新入幕から3場所連続となる11個の白星を積み上げ、
きのう時点で単独トップに立つ。
星の差1つで後を追う4人にも逆転の可能性を含むものの、
本割で「阿炎(あび)」関に勝てばV確定だ。

歓喜と落胆が交錯した14日間の戦いを経て迎えた千秋楽。
---『最後の一番を取り切るだけ』---
本人はそう口にしているそうだ。
雑念を振り払った相撲の先に待つ快挙を期待して止まない。



次は、競艇SGレース「ボートレース オールスター」だ。
東京・府中市「多摩川競艇場」で行われる優勝戦で1号艇に乗るのは、
「定松勇樹(さだまつ・ゆうき)」。
佐賀支部所属の新鋭が、あれよあれよという間にポールポジションまで駆け上がってきた。
---『もう、緊張で吐きそうでした』---
きのうの勝利者インタビューで本人がそう吐露したとおり、
人生で初めて味わったであろうプレッシャーをねじ伏せ迎えた最終日。
今日は、その肩に更なる重圧がのし掛かるだろう。
応援したいと思う、しかし---。



同じレースには「毒島誠(ぶすじま・まこと)」がいる!
最も不利な枠番・6号艇から、主客転倒を狙っているのだ。
そうなると、我が舟券は素直に「定松」推しとはいかないのである。

ともあれ「大の里」と「定松勇樹」には、全力を尽くして欲しい。
まだ勝負が決した訳ではない。
2人共、大一番が待っている。
対峙するのは、強敵と己自身。
選ばれて在ることの恍惚と不安。
二つの狭間に立つ若武者の活躍を刮目している。
結果はまだ神のみぞ知る。
                   
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ルーブルの女神。

2024年05月24日 22時00分00秒 | 手すさびにて候。
                        
今投稿から2ヶ月後、世界の耳目は“花の都”に集まる。
2024年7月26日「パリ・オリンピック」が開幕するからだ。

フランスに上陸した聖火は、現在、各地の観光名所を経由しながらリレー中。
市内に入って以降は全20区をくまなく回るそうだ。
ルートの1つとして外せないのは「ルーブル美術館」だろう。
その歴史は古く、12世紀まで遡る。
日本ではちょうど鎌倉幕府が成立して間もない頃。
国王・フィリップ2世の命令により城塞として建てられ、後に王の邸宅に改築された。
正式にミュージアムとなったのはフランス革命の勃発から4年後、1793年。
館内には、先史時代~19世紀まで様々な人類の遺産が並ぶ。
すべてを鑑賞するには1週間を要すると言われるほどの点数を誇る。
たとえ美術ファンならずとも知る有名な作品も多い。
3万点以上の常設展示から、三大美女のそれを挙げてみよう。

謎めいた微笑は説明不要「モナリザ」。
黄金比の立ち姿「ミロのヴィーナス」。
そして拙作の題材とした女神像である。

ほんの手すさび 手慰み。
不定期イラスト連載 第二百三十七弾「幻想、有翼の美神」。
                


それは、1980年代末。
中庭に金属とガラスのピラミッドが出来る2年ほど前のことだ。
成田発ソ連経由~ギリシャに入りオランダまで。
欧州を南から北へ縦断する旅の途中、僕はパリに立ち寄った。
目当ては、ルーブル美術館の“三大美女アート”鑑賞。
旅程と列車ダイヤの関係で満足な時間が取れず、駆け足の訪問となる。
つまり無理を押して組み込んだのだから、
それなりの思い入れがあったはずなのだが、正直あまり印象は濃くない。
やはり、慌ただしかったせいかもしれない。

前述した通り元は城郭。
とにかく、やたらと広いのである。
3つに分かれた展示スペースのフロアはそれぞれ地下1階と地上3階。
しかも各フロアが中規模の美術館並み。
乱暴に言えば12個の美術館が合体したようなものだ。
当時は日本語の案内が乏しく、どこに何があるのやら。
限られた時間で探し回らねばならず四苦八苦。
楽しむより焦りが先に立った。
ようやく辿り着いた「モナリザ」は、人だかり越しではあまりに遠く小さい。
「ミロのビーナス」はアメリカ人団体観光客の壁に囲まれていて近づけない。
またどちらもレプリカを見過ぎていたせいか、感激は薄かった。

一方、大階段の踊り場にすっくと立つ「サモトラケのニケ」には息を呑んだ。



「サモトラケ」は発見地の島の名前。
「ニケ」はギリシア神話のキャスト。
神々の父・ゼウス、軍神・アテナの使いで、勝利をもたらす幸運の女神である。
古代世界で広く人気を博し、崇拝されたという。
それがなぜ壊されたのか。
詳細は不明ながら“時の趨勢”は無視できない。

ギリシアの気風を受け継ぐローマが地中海全域を治める大国に成長し、
広大な領土と多民族を抱えるようになると、安定のため「象徴」が必要となる。
それが「唯一の皇帝」と「唯一の神」。
統治システムは共和制から帝政へ。
信奉者が拡大していたキリスト教は公認から国教へ。
古(いにしえ)の神々は次第に廃れ、神殿・モニュメントは荒廃していった。
そんな背景がある。

制作時期は紀元前2世紀と推測され、作者は不詳。
1863年、欧亜を分かつエーゲ海の島で見つかった。
まず胴体が掘り起こされ、その周囲に118個のパーツが散乱。
大理石の欠片の殆どは左翼の一部と判明し、修復再現。
右翼の構成物は散逸、左を参考に形成復元された。

彼女は、頭も、両腕も欠くいわば「不完全品」。
にも拘わらず、問答無用の「説得力」を有していた。

風に煽られ棚引く薄布が張り付いた美しい肉体。
背中には力が漲る両翼。
天窓から降りそそぐ光の中に浮かび上がり、
備わった陰影が大理石の印象を有機体に変える。
とても2000年前の代物とは思えない。
まるで血が通っているかのような錯覚を覚えた。

ホントはどんなポーズを取っていたのだろう?
どんな顔をしていたのだろう?
きっと美人に違いない!
観る者の想像を掻き立てずにはおかない「サモトラケのニケ」。
上掲イラストは、ルーブルの女神に捧げる拙いオマージュと捉えてもらえたら幸いである。
                       
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津幡短信vol.120. ~ 令和六年 小満。

2024年05月21日 20時16分16秒 | 津幡短信。
                     
それなりに暑い日もあるが、おおむね過ごし易い日が続く北陸である。
津幡町で見聞した、よしなしごとを簡潔にお届けする不定期通信。
レイニーシーズン直前にあたる今回は、以下の2本。
                               
【柿の花。】
                   
明治時代に『俳句革新運動』を興した文人、
「正岡子規(まさおか・しき)」は柿を題材にした歌を多く残している。
有名な一句はこれだろう。

柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺

樹上で赤く熟した柿の実をもぎガブリ。
豊かな甘みが口いっぱいに広がったところで聞こえる梵鐘の音。
古都・奈良の秋が思い浮かぶ。
「子規」の代表作の1つであり、時の風化に耐え、時代を超えた名句だと思う。
また、彼はこんな歌も詠んだ。

柿の花 土塀の上に こぼれけり

柿の花は夏の季語の1つ。
梅雨のころ、柿は黄みがかった白色の花をつける。
若葉と一緒に咲くため遠目にはあまり目立たない。
あなたはご覧になったことがあるだろうか?





先日、ご近所庭先の柿の木で見かけシャッターを切った。
意外と落ちやすい花である。
今日び「子規」のように土塀の上とはいかないが、
数輪が足元のアスファルトに散らばっていた。

【閉院。】

津幡銀座商店街(現:パピィワン通り)で長年医業を営んできた町医者、
「一林医院」の取り壊しが始まった。





詳しい事情は存じ上げないが、インフルエンザ予防接種、コロナワクチン接種などで、
何度も足を運んだお医者さんが姿を消すのは一抹の寂しさを禁じ得ない。

昨今、クリニック(無床診療所)を取り巻く環境はなかなか厳しいと聞く。
少子化による患者獲得競争。
経営者の高齢化に伴う事業承継問題。
電子カルテなど新たな業務・役割の拡大と負担増から人材不足に拍車。
--- 等々いずこの業界も色々あるのだ。
                         
<津幡短信 vol.120>
                      
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いしかわ動物愛護センター見学記。

2024年05月19日 08時00分00秒 | 日記
                      
我が愛犬「りくすけ」が亡くなってから3ヶ月以上になる。
彼の命日は今年(2024)の立春・2月4日。
季節は流れ本日(2024/05/19)は立夏の末。
時は止まらず、季節は巡り、過去はどんどん遠のき忘却してゆくのが常だ。
しかし、まだ愛犬の死は鮮明に脳裏に刻まれている。
しかも、奇妙なことに実感が極めて薄い。
僕の腕の中で息絶えた姿はハッキリ覚えているのに、どうも腑に落ちないのである。

やはり生き物は二度死ぬのだと思う。
一度目は、生命を維持できなくなり迎える肉体の死。
二度目は、その死を受入れてから訪れる精神の決別。
どうやら僕にはまだ、彼の二度目の死は到来していないようだ。

--- さて、枕が長くなってしまった。

人生の相方とも言えるペットだが、
犬と猫に限っても、国内に於ける飼育頭数は1,600万近い。
数が増えれば、問題も出てくる。
周囲とトラブルになったり、動物虐待になったり、終生飼育を放棄したり。
様々な理由で飼育継続が困難になるケースもあるだろう。
石川県なら自然災害「令和6年 能登半島地震」が顕著な事例である。

そんな世の中の情勢を反映して、津幡町の県森林公園に犬や猫の保護・譲渡を推進する施設
いしかわ動物愛護センター」(LINKアリ)が、先々月(2024/04/14)整備された。





センター本館は、木造平屋建て。 
広さが延べ1000平方メートル。
森林公園内の間伐材だった「スギ」、石川県を代表する木材「能登ヒバ」が材料になっていて、
真新しい館内エントランスに一歩足を踏み入れれば、爽やかな木の香りが包み込んでくれる。
森林公園の敷地内にあるだけに、街のノイズは届かない。
耳にする音と言えば梢を渡る風くらい。
環境の良さは折り紙付きである。





内部には、保護された犬猫の心身への負担を減らすべく温度・湿度を保つ「飼育室」。
シャンプー、トリミング用の「グルーミング室」。
譲渡希望者が動物との相性を確認できる「マッチング室」などがある。
また「研修室」では、今後“社会化ボランティア”の研修も予定していると聞いた。
これは人馴れしていない動物を預かり家庭内で飼育することで、
人間社会への適応を図り、譲渡推進につなげるのが目標。
現在、被災地で保護された犬猫が多く収容されていて、
中にはストレスを感じ社会化が進みづらい個体もいるとか。
致し方なく、解消するための取り組みは意義深い。





保護された動物の譲渡手順は以下のとおり。
まずセンタースタッフの説明を聞きながら見学。
譲渡基準を確認し講習を受講。
個別面談を経て正式譲渡。 
大切な何かを学ぶ経験になり、動物を慈しむ心を教えてくれる場所。
それが「いしかわ動物愛護センター」だ。



屋外には、2000平方メートルのドッグランを整備中で、
来月・7月下旬に運用を始める予定。
今後の活動~発展に期待したい。
◆開館時間:午前9時から午後5時まで
◆休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合、翌平日)、12/29~1/3
機会と時間が許すなら、足を運んでみてはいかがだろうか。
                           
                            
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