水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

☆時代劇シナリオ・影車・第十回☆贋小判(2)

2009年02月02日 00時00分00秒 | #小説

      影車      水本爽涼          
     第十回 贋小判 (2)

3. 北町奉行所(同心部屋)・朝
    同心達が机に座り、同心頭の村田が来るのを待っている。宮部と仙二
    郎の姿は、まだない。雑然と、同心達が話をしている。
4. 北町奉行所(同心部屋・渡り廊下)・朝
    宮部と仙二郎が、バタついて廊下へ入ってくる。その後方に現れた村
    田。
   村田  「これは、ご両人。お早い御出勤ですなぁ~(不気味に優しく)」
    後方から声がして、宮部と仙二郎、慌てて振り返り、どちらからともな
    く、「おはよう御座居まする!!」と挨拶し、歩を速めて同心部屋へと急ぐ。
   村田  「(歩きつつ)まあ、よいか…」
    と、小笑いして黙認する。
5. 北町奉行所(同心部屋)・朝
    宮部と仙二郎、息を切らしながら足早に自席へと着く。着いて二人、
    一応は安息する。そこへ村田が入ってくる。騒然としていた部屋内が
    一瞬にして物音一つ、しなくなる。
   村田  「なんだ? 賑やかにやってくれよ…。皆、俺がそんなに恐ろ
        しいか?(笑顔で)」
    一同、押し黙って答えようとしないが、
   仙二郎「はい!」
    と、一人答える仙二郎。一同の視線、仙二郎に集中。一瞬の間合い
    を置き、部屋内は爆笑の渦。村田も笑いの渦中。一人、宮部だけが、
    「また、いらないことを…」という表情で項(うな)垂れる。

6. 江戸の街通り・みかさ屋(外)・昼
    『みかさ屋』という暖簾が微風で揺れるうどん屋の外景。街通りを往
    き交う町人達。
7. みかさ屋(内)・昼
    宮部と仙二郎が、いつもの店で、昼食のうどんを啜っている。そこへ、
    暖簾越しに、奥の方から店女と店の親父の話し声が聞こえてくる。二
    人、聴くではなく、その話を聞いている。
   親父  「いや…この小判は間違(ちげ)えなく本物だ。色艶が違わぁな」
   店女  「そうですかぁ? 私には贋のように思えるんですけど…」
    そんな二人の話を耳にして、
   宮部  「そういや最近、贋小判が、かなり出回ってるそうですよ」
   仙二郎「そのようですなあ。その所為(せい)か、物の値も高騰してます
        しねぇ」
   宮部 「そうそう…(うどん鉢の出汁を啜って)。皆さん、暮らし向きが大
        変みたいですねぇ…」
   仙二郎「はは…(小笑いして)宮部さんにしては人ごとのような物云いで
        すなあ(鉢の汁を吸いきって)」
   宮部  「そんな訳でもないんですけどね。私には、どうにもならない事
        ですから…」
 


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