影車 水本爽涼
第十回 贋小判 (13)
35. 頭部のX線撮影された映像 C.I
医用画像管理システム(PACS)の高精細モニタ映像。
C.O
36. 病院の診察室・現代
医師(配役は無名の外科医)が椅子に座ってカルテを書いている。
医師の姿を。医師、医用画像管理システム(PACS)の高精細モ
ニタ映像を徐(おもむろ)に見て、カメラ目線で素人っぽく、
医師 「今日も同じです(微笑んで)。いつもの即死ですな…(欠伸
をしながら)」
37. 瀬崎の音松一家(内)小部屋・夜[テーマ曲のオケ2 再イン]
一本の縄から器用に下りる又吉。丼鉢を背の袋へ収納すると、ふ
たたびスゥーっと天井裏へと昇って消える。入れ替わり、伝助が部
屋へ現れ、音松を担ぎ去る。
[テーマ曲のオケ2 オフ]
38. 両替商・和田屋(内)部屋・夜
甚兵衛が部屋の中で熟睡している。
[テーマ曲のオケ1 再イン]
部屋前の廊下側の障子戸が灯りに照らされたかのように明るくな
り、人影が不気味に浮かぶ。
39. 両替商・和田屋(内)部屋前の廊下・夜
留蔵の顔が携帯火鉢の熾(おこ)った炭に赤々と照らされ光る。留
蔵、廊下に座り、ゆっくりと携帯用の鞴(ふいご)を押し続ける。火鉢
の中で赤々と熾る炭。その中に、大鎌が入れられていて、刃が真っ
赤に焼けている。留蔵、深い溜め息を、ひとつ吐(は)き、頷く。そして、
大鎌の木の柄を持ち、部屋の障子戸を静かに開ける。
40. 両替商・和田屋(内)部屋・夜
留蔵、甚兵衛の枕元へ寄り、両足で首を挟むと、左手で口を封じる。
そして、右手に持った大鎌を甚兵衛の両眼へ押し当てる。(ジュー
っという焼き入れの音S.E) 呻く甚兵衛、激しく、もがく。留蔵、間髪
入れず、大鎌で首筋(頚動脈)を斬る。激しく吹きだす血しぶき、布団
を紅く染める。素早く障子戸を出る留蔵。入れ替わり現れた伝助、
甚兵衛を担ぎ去る。
[テーマ曲のオケ1 オフ]