水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

☆時代劇シナリオ・影車・第十回☆贋小判(3)

2009年02月03日 00時00分00秒 | #小説

      影車      水本爽涼          
     第十回 贋小判 (3)

    仙二郎「そりゃそうですな。しかし、できれば、退職するまでに一度は
         御用にしたいですなあ、こんな連中を…(笑いながら)」
    宮部  「(笑いながら)そうですねぇ」
     二人、うどんを食べ終えると小銭を置いて立ち上がる。
    仙二郎「親父! 勘定、置いとくぜ」
     仙二郎と宮部、入口の暖簾を上げ、ゆったりと外へ出る。奥から、
    親父  「有り難(がと)やしたぁ~」
    店女  「有り難う御座居ましたぁ~!」
     と、口々に声が飛ぶ。
8.  江戸の街通り・みかさ屋(外)・昼
     『みかさ屋』を出て、街通りを並んで歩く二人。
    仙二郎「さっきの話なんですが、贋金作りの探りは進んでるんです
         か?」 
    宮部  「南、北は問わず、加えて、勘定奉行所などの探索方は、総出
         で探ってるようですが…」
    仙二郎「(小笑いして)また、人ごとのように云われましたな」
    宮部  「あっ、いけない。(小笑いしながら)私の悪い癖ですから、聞か
         なかったことにして下さい」
    仙二郎「はぁ、それはもう。毎度のことですから」
    宮部  「まあ!!」
     二人、大笑いする。
9.  蕎麦屋の屋台(外)・夜
     又吉の屋台が街通りに出ている外景。小雪が湿っぽく降っている。
     仄かに映える提灯の灯り。そこへ、お蔦が瓦屋根より物音一つ立て
     ず舞い降り、屋台へと近づく。
10.  麦屋の屋台(内)・夜
     又吉が店の準備をしている(葱を刻んだりする雑事)。お蔦、暖簾を
     潜って入ると、黙ったまま、ゆったりと床机に座る。又吉、顔を上げ
     て勢いよく、 
    又吉  「いらっしゃいやし!! 冷えやすねえ…」
    お蔦  「ああ…。熱燗がありゃ、一本、欲しいくらいのもんさね」
    又吉  「(笑って)その内、出しやすよ。今日は、どうしやしょう?」
    お蔦  「天麩羅を乗せて貰おうかね」
    又吉  「へいっ!!」
     又吉、慣れた手つきで調理を始める。
    お蔦  「最近、贋小判が出回ってるそうじゃないか」
    又吉  「らしいですねぇ。儂(あっし)らの日銭稼ぎにゃ、小判なんざ
         滅多と拝めやせんがね。へいっ! お待ち」
     話しながら天麩羅を鉢へ乗せ、お蔦の前へと置く又吉。お蔦、割り
     箸を取り、
    お蔦  「私だって同じさ。どういう訳か、貰えるお足にゃ小判がない」


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