水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

☆時代劇シナリオ・影車・第十回☆贋小判(14)

2009年02月14日 00時00分00秒 | #小説
      影車      水本爽涼          
     第十回 贋小判 (14)

41. 徒目付組頭・山根頼母の屋敷(内)寝所・夜
     [テーマ曲のオケ3 イン]
     山根が布団で寝息をたて熟睡している。音もなく襖が開き、仙二郎
     が枕元へ立つ。そして、ゆっくりと脇差を抜くと、跪(ひざまず)いて左
     手で口を封じる。息苦しさに目覚める山根。馬乗りになる仙二郎。
    仙二郎「世の悪党め。手前(てめえ)のような奴ぁ、いらねえんだ。地
         獄へ落ちろぃ!」
     と吐き捨て、脇差を胸(心臓)へ突き刺し、抉(えぐ)る(ブシュブシュー
     っという鈍い音)。抗う山根、次第に力が萎えて絶命する。仙二郎、
     息があるかを確認した後、脇差を胸より抜き、刃を山根の白衣で拭
     うと鞘へ納める。そして、静かに立つと、襖より出ようとする。入れ替
     わりに、伝助が部屋へと入る。
    仙二郎「頼んだぜ…」
     と、ひと声残し、仙二郎、消え去る。
     [テーマ曲のオケ3 オフ]
42. 江戸の街通り(一筋の広い道)・朝
     場面、フェード・イン。無惨に晒された山根達五人の死骸と立て札。
     それを取り囲んで騒ぐ多くの町人達。出勤途中の仙二郎と宮部も、
     その中にいる。
    宮部  「なんでも、昨日、奉行所に付け文があったそうですよ」
    仙二郎「へぇ~、誰からですか?」
    宮部  「いえね、匿名だったらしいんですけどね。恐らく、影車からだ
         ろうって、もっからの噂です」
    仙二郎「それで、なんて書いてあったんです?」
    宮部  「贋金作りをしている場所の図面だけで、他には何も書かれ
         てなかったそうですよ」
    仙二郎「ほぉー、図面だけねえ…」
    宮部  「流石! と云ったらいいのか悪いのか…、どうなんでしょ?」
    仙二郎「さあ、どうなんですかねえ」
    宮部  「こんなこと云っちゃなんですけど、お上以上にやるんじゃな
         いでしょうか? 影車は」
    仙二郎「宮部さん、場所がらを考えて下さい。周りを…(小声で)」
     仙二郎、周囲の町人を指さし、宮部を窘(たしな)める。宮部、頷い
     て黙る。二人、群衆から離れ、奉行所へ向け歩き始める。


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