水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 靫蔓(うつぼかずら) (第六十七回)

2012年07月01日 00時00分00秒 | #小説

  靫蔓(うつぼかずら)       水本爽涼                                     
 
   第六十七回 
「ほんまに、そんなことが、あんのかいな…」
 半信半疑の感は否めないが、それでも八田は、まんざら作り話でもないようだと思い始めた。
「なんやったら今晩、泊っていくか?」
 話が終わり、最初に八田の口から出たのは、その言葉だった。十中六、七は信用してもらえたようや…と、直助は感じた。
「おおきに…。でもなあ、今晩はよかっても、明日(あした)も明後日(あさって)もあるやろ? どないかせんとなあ…」
 溜息混じりに直助が愚痴を言う。
「まあ…それも、そやなあ」
 ふたたび静寂の時が流れた。
「なんか思い当たることは、あんのかいな、直さん」
「ないことも、ないんやが…」
「なんやねん? それ、聞かなあかんわ」


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