靫蔓(うつぼかずら) 水本爽涼
第六十七回
「ほんまに、そんなことが、あんのかいな…」
半信半疑の感は否めないが、それでも八田は、まんざら作り話でもないようだと思い始めた。
「なんやったら今晩、泊っていくか?」
話が終わり、最初に八田の口から出たのは、その言葉だった。十中六、七は信用してもらえたようや…と、直助は感じた。
「おおきに…。でもなあ、今晩はよかっても、明日(あした)も明後日(あさって)もあるやろ? どないかせんとなあ…」
溜息混じりに直助が愚痴を言う。
「まあ…それも、そやなあ」
ふたたび静寂の時が流れた。
「なんか思い当たることは、あんのかいな、直さん」
「ないことも、ないんやが…」
「なんやねん? それ、聞かなあかんわ」