水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 靫蔓(うつぼかずら) (第八十二回)

2012年07月16日 00時00分00秒 | #小説

  靫蔓(うつぼかずら)       水本爽涼                                     
 
   第八十二回 
「勢一つぁんが手伝(てっと)うてくれんなら、鬼に金棒やけどな」
「よし、きまった! で、心当たりはあったんかいな? 昨日の麻雀のときは、そこまで言(ゆ)うてえへんわな?」
「それなんやけど…。あれから幽霊に出た女性が勤めてた会社へ行ったんや」
「んっ! で?」
 箸を止めた二人は直助の話に耳を欹(そばだ)てた。
「実は、そっから話はややこしいなってなあ…」
「なんでやの? 直さん」
 それまで黙っていた敏江さんも話に加わった。
「言(ゆ)うと長(なご)うなるんやけど、掻い摘んで話すと、その女性は働いてえへんのや」
「やめたんかいな?」
「いや、やめてえへん。やめてはいんけど働いてない…」
「なんや、それは。昨日、テレビでやっとったマジックみたいな話やないか…」


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