靫蔓(うつぼかずら) 水本爽涼
第八十二回
「勢一つぁんが手伝(てっと)うてくれんなら、鬼に金棒やけどな」
「よし、きまった! で、心当たりはあったんかいな? 昨日の麻雀のときは、そこまで言(ゆ)うてえへんわな?」
「それなんやけど…。あれから幽霊に出た女性が勤めてた会社へ行ったんや」
「んっ! で?」
箸を止めた二人は直助の話に耳を欹(そばだ)てた。
「実は、そっから話はややこしいなってなあ…」
「なんでやの? 直さん」
それまで黙っていた敏江さんも話に加わった。
「言(ゆ)うと長(なご)うなるんやけど、掻い摘んで話すと、その女性は働いてえへんのや」
「やめたんかいな?」
「いや、やめてえへん。やめてはいんけど働いてない…」
「なんや、それは。昨日、テレビでやっとったマジックみたいな話やないか…」