水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

驚くユーモア短編集 (43)当選

2024年01月04日 00時00分00秒 | #小説

 当選・・いい響きの言葉である。落選は気分的に戴けない言葉だが…。^^
 とある国政選挙である。恐らく無理だろうと目(もく)されていた議員候補の落谷(おちや)だったが、今回も出馬した。
「先生、地盤は固めました…」
「そう…ご苦労さん。有難う…」
 選対本部長の崖下(がけした)に力強く言われた落谷だったが、心なしか返す言葉は弱く、顔色も優(すぐ)れなかった。それもそのはずで、前回、出馬したときも同じ言葉を崖下に言われたからである。
『やはり、今回もダメか…』
 それが落谷の本音だった。
「後援会とアノ方は?」
「はあ、後援会はOKだったんですが、協会の方は迷惑だからと蹴(け)飛ばされました…」
 落谷には、蹴飛ばされたんなら、こりゃダメだな…と思えた。協会は巷(ちまた)で物議を醸(かも)し出し問題視されている団体ながら、政治方面では絶大な影の影響力を持っていたのである。
 選挙日が巡り、即日開票が深夜に及んで展開された。
「せ、先生! ほんとの先生になられましたっ!」
 崖下が選対本部に飛び込むように疾駆して叫んだ。落谷は瞬間、予想外の当選に驚く自分を隠せず、椅子から立ち上がり小躍りしたが、しばらくして落ち着くと、私は今まで先生じゃなかったんだ…と、思うでなく思った。
 予想外の当選で驚くと、思わず小躍(こおど)りするようです。^^

 ※ 教会ではなく、協会です。^^

                   完


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