生活短編集(97)でもタイトルに取り上げたが、この[けたたましい]という漢字表記を辿(たど)れば実に疑問が多く、著名な作家などは[消魂しい]とか[喧しい]などと表記されておられる。まあ、それはさて置き、文句を言われる筋合いもないから、敢(あ)えて私は[祁魂しい]と勝手に表記することにしている。^^
さて、騒音が祁魂しいからといって直接、影響が身に及ばなければ、取り分けて驚くこともないだろうが、突然、身に迫るような音なら驚くことになる。
振動とともに窓ガラスの外を俄(にわ)かに祁魂しい音が走り去った。
「なんですっ! 今の音はっ!!」
「ああ、今の音ですか…。窓の外を電車が走ってるんです…」
初めて訪れて驚く刺身(さしみ)に、部屋の住人、煮魚(にうお)は涼しげな顔で返した。煮魚のアパートのすぐ前は江ノ電で、路面電車が走っていたからである。
「なんだ、そうでしたか…」
原因が分かれば納得もいく。刺身は小さなことに驚いた自分を誤魔化すかのようにパーコレーダーで淹(い)れられたブルマンを啜(すす)った。心の内は、このアパートにパーコレーダーのコーヒーは似合わないだろっ! …である。しかし、そうとも言えず、刺身は正座を崩し、シャリの上に乗る美味(おい)しいお寿司になった。
驚くような祁魂しい騒音でも、納得できれば美味しいお寿司になる訳です。^^
完