水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

驚くユーモア短編集 (48)原因

2024年01月09日 00時00分00秒 | #小説

 たぶん…と思える原因なら驚くことはないだろうが、予想もしていなかった原因なら、程度の差こそあれ、誰だって驚くことだろう。
「川蝉(かわせみ)さん、申し訳ないんですが、明日は出社してもらえませんか?」
「えっ!? ああ、はい…」
「いや、何か予定があれば結構なんですが…」
「はあ、これといって…」
「そうですか。それじゃ、お願いいたします。その代わりと言っては何ですが、明後日と次の日の二日は休んでいただいても結構ですから…」
「はい、分かりました…」
 課長の川蝉(かわせみ)に呼ばれた目白(めじろ)は、嬉(うれ)しいような悲しいような意味不明な顔をしながら承諾した。というのも、川蝉には約束した同じ課のOL、小鳩(こばと)とのデイトがあったのだ。さらに、二日も休める…というもう一つの美味(おい)しい条件も付いたためである。デイトは連絡して日を替えればいいし、夜だって出来るからだ。しかし、この些細(ささい)な川蝉の判断ミスが、二人の仲を遠ざける原因となったのだから恐ろしい。後々になって、川蝉は原因が自分の小さな欲によって引き起こされたことに驚くことになるのである。ただ、このときの川蝉は、そんなことになろうとは露(つゆ)ほども思っていなかった。川蝉は一方で小鳩にモーションをかけ、条件付きでデイトに誘っていた。その条件とは秘書室への異動を仄(ほの)めかしたのである。そんな悪どい上司の川蝉は、その事実が重役に発覚し、それが原因でリストラされて左遷された。まあ、自業自得(じごうじとく)ということだろう。^^
 悪い原因を作れば、回り回って自分がその原因で驚くような悪い事態になるようです。ですから、悪い原因を作るのは出来るだけやめましょう。^^

                   完


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