ついうっかり寝過ぎた鮭川は寝布団近くに置いた目覚ましを見た。寝ぼけ眼(まなこ)だったから単針と分針を逆に見たことには気づかず、まだ、こんな時間か…と安心し、鮭川はまた眠ってしまった。この時の正確な時間は七時十五分だったのだが、鮭川には三時三十五分…だった。いつも起きる時間は七時半だから、少しは早い時間なのだが、そうゆとりがある時間でもなかった。そんなこととは気づかない鮭川は、深い眠りへと誘(いざな)われていった。勤める村役場は八時半の開庁だったが、いつもの癖で七時頃に目が覚めたから目覚ましセットはしていなかった。悪いことに、その前日に限って先輩職員が退職する送別会があり、鮭川はつい深酒をしてしまっていた。目覚めるだろう…と踏んで、そう深く考えず眠りについたのがいけなかった。その日は、晴れて新任課長として初出勤の日だったのである。当然、新任挨拶をするのが慣行となっていたから、鮭川もそのつもりでいた。
熟睡した鮭川が目覚めたのは十時半だったが、鮭川は、まだ六時五十分か…と寝ぼけ眼でまた安心してしまった。そんな鮭川だったが、さすがに日が高くなるにつれ、おやっ? …と疑問が湧き始めた。そのときも驚くことはなかったが、半身を起こして何げなく目覚ましを手にしたとき、ハッ!! と、遅刻したことに驚いたのである。
その後、鮭川さんが役場でどのように対処されたのか? 私は知りません。皆さんなら、どういう口実で出勤されるでしょう。アッ! と驚くお知恵を拝借し、ピンチの鮭川さんをお救い下さい。^^
完