予想していない物事が突然、出来たときは驚くことになり狼狽(うろた)えるだろう。泰然自若(たいぜんじじゃく)として、ああ、そう…と冷静に受け止められる人は少ないに違いない。何が起ころうと驚くことがない、こんな人になりたいものです。^^
柿沼は疲れていた。やっと残業が終わり、帰宅したのは深夜の十時だった。
「ただいま…」
『お帰りなさぁ~~い…』
玄関で出迎えた妻の美登里は、いつもと違い、どことなく顔色が悪い。それに声も弱々しい。
「どうしたんだ? お前…」
『少し前にね…。私、階段から落ちて死んだの…』
「なにっ!!」
柿沼は驚き、玄関の上がり框(かまち)へ思わず腰を落とした。
『でも、大丈夫。元気に死んでるから…』
「元気に死んでるって、お前っ!」
そこで柿沼は、ハッ! と目覚めた。職場のデスク机に上半身を俯(うつぶ)せ、夢を見ていたのである。
夢で突然、死なれ、驚くのは嫌ですよね。^^
完