水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

驚くユーモア短編集 (54)突然

2024年01月15日 00時00分00秒 | #小説

 予想していない物事が突然、出来たときは驚くことになり狼狽(うろた)えるだろう。泰然自若(たいぜんじじゃく)として、ああ、そう…と冷静に受け止められる人は少ないに違いない。何が起ころうと驚くことがない、こんな人になりたいものです。^^
 柿沼は疲れていた。やっと残業が終わり、帰宅したのは深夜の十時だった。
「ただいま…」
『お帰りなさぁ~~い…』
 玄関で出迎えた妻の美登里は、いつもと違い、どことなく顔色が悪い。それに声も弱々しい。
「どうしたんだ? お前…」
『少し前にね…。私、階段から落ちて死んだの…』
「なにっ!!」
 柿沼は驚き、玄関の上がり框(かまち)へ思わず腰を落とした。
『でも、大丈夫。元気に死んでるから…』
「元気に死んでるって、お前っ!」
 そこで柿沼は、ハッ! と目覚めた。職場のデスク机に上半身を俯(うつぶ)せ、夢を見ていたのである。
 夢で突然、死なれ、驚くのは嫌ですよね。^^

                   完


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