もう、そんな年になったんだ…と人に言わず、驚くことなくしみじみと心の底で噛(か)みしめる。辛いが、これも長々と生きてきたあとの自分の姿なのだから仕方がない。すでにお年寄りに仲間入りしているのである。^^
ここは、とある温泉旅館のエントランスである。
「お金、いいですよ…。市の優待券が使えるお年ですから…」
当然のように窓口係の女性が風呂崎(ふろさき)に言った。
「ええっ! タダですかっ!?」
「はい。それが何か…」
「いいんです、いいんですっ!」
風呂崎は、こりゃ儲(もう)かったぞ、シメシメ…と思いながら、外っ面(つら)では美辞麗句を並べた。否定しても、よくよく考えれば、自分も一端(いっぱし)のお年寄りなのである。風呂崎は、別に驚くことでもないか…と思い返し、年を意識しないでスルーすることにした。
誰でも年を重ねればお年寄りになるのですから、驚くことなく年を素直に受け入れましょう。^^
完