水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

驚くユーモア短編集 (59)お年寄り

2024年01月20日 00時00分00秒 | #小説

 もう、そんな年になったんだ…と人に言わず、驚くことなくしみじみと心の底で噛(か)みしめる。辛いが、これも長々と生きてきたあとの自分の姿なのだから仕方がない。すでにお年寄りに仲間入りしているのである。^^
 ここは、とある温泉旅館のエントランスである。
「お金、いいですよ…。市の優待券が使えるお年ですから…」
 当然のように窓口係の女性が風呂崎(ふろさき)に言った。
「ええっ! タダですかっ!?」
「はい。それが何か…」
「いいんです、いいんですっ!」
 風呂崎は、こりゃ儲(もう)かったぞ、シメシメ…と思いながら、外っ面(つら)では美辞麗句を並べた。否定しても、よくよく考えれば、自分も一端(いっぱし)のお年寄りなのである。風呂崎は、別に驚くことでもないか…と思い返し、年を意識しないでスルーすることにした。
 誰でも年を重ねればお年寄りになるのですから、驚くことなく年を素直に受け入れましょう。^^

                   完


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