人が驚くメカニズムを探るのも面白い。ただ、人によって驚くメカニズムは違うから、ある人は驚いても別の人は全然、驚かない・・という程度の差はある。
真夏の夕暮れである。すでに陽は西山へと没し、暗闇のベールが辺(あた)りを覆おうとしている。二人の老人が寺の法事を済ませ、夕暮れ前の庫裏(くり)から境内(けいだい)へ出ようとしている。
「暑いですなぁ~」
「ええ、まあ…。夏ですからな…」
「暑いですが、不気味ですな…」
「ええ、まあ…。寺ですからな…」
そのとき、どこからともなく冷んやりとした風が二人の後方をスゥ~っと通り抜けた。気が弱い老人は、ゾクッ! と身震(みぶる)いし、『ばあさんが迎えに来たか…』と思い、驚いた。一方、もう一人の老人は、驚く素振りも見せず、『そろそろ秋か…』と驚かず、受け流した。しかし、木に止まった蝉にオシッコをかけられ、思わず驚いた。
このように、人によって驚くメカニズムは異なる訳です。^^
完