日本文明の特色は何かと考えてみますと、いくつか独自なものが挙げられます。「手仕事の文化」、「時間に正確な文化」、「独自の言語文化」、「大いなる和の国」、そして「太古からカビと共存してきた文化」など、その他にも多くあります。
今日は「カビと共存してきた日本の文化」について、全3話でお伝えします。
日本は温暖多雨で生物の栄養になる物が豊富にあり、バイキンやカビのような微生物にとっても天国です。国土自体が微生物の培養器だと言われており、ことに梅雨の頃はカビが最も繁殖する季節とされている。
国内にはカビの種類が八万種もあって空中を飛びまわり、国民はどこにいても、このカビの脅威から逃げることはできない。だから、先祖がこの国に住みついたときから何千年もの間、実に絶妙にこのカビと共存してきたのです。日本文化はカビの文化だと言われている所以でもあります。
先祖以来、私たちはこのカビを食物や薬に活用してきました。日本の食卓で欠かせない醤油と味噌は、カビを巧みに利用した日本独特の調味料です。米から造る日本酒も、カビそのものを食べる納豆も、日本独自の発明品でもあります。
日本が漬け物天国になったのも、野菜の種類の多さと、カビの種類の多さによります。台所を預かる母親の塩加減一つで、無数のふるさとの味、おふくろの味の「香の物」が生まれてきました。日本からカビを取ったら食べるものがなくなってしまうほど、カビは日本の食文化にとって重要なもので、国民はカビの発酵で養われてきたともいえるのです。
このように、私たちの周りにはこのカビを有効利用した発酵食品が数多く存在しています。
人類は太古の昔から発酵とうまく付き合ってきた長い歴史があり、世界にも様々な発酵食品があふれていますが、日本は世界でも有数の発酵大国なのです。とくに麹菌を使った発酵食品が日本の発酵食品文化を非常に発展させてきました。
2006年に日本醸造学会が麹菌を「国菌」に認定しました。醤油、味噌、酒、鰹節、これらはみな、麹菌がもたらした日本独特の発酵食品です。日本は伝統的にもバリエーションの豊かさからも、世界に冠たる発酵食品大国なのです。
奈良時代に漬物の記録が残っています。奈良時代の天平年間(729~749年)の木簡に残されている瓜の塩漬けが文献上は最古の記録で、平安時代(794~1185年ごろ)中期の格式(律令の施行細則)である「延喜式」には酢漬けや粕漬けなど様々な漬物についての記述があり、当時の京都に、穀物、魚、肉、野菜という4種類の原料から作る醤油屋があったと伝えられています。
日本でなぜ発酵食品が発展したかといえば、周りを海で囲まれていて塩と魚がとれるからです。魚も塩に入れておけば腐らないし、細胞からにじみ出た水を濾せば魚醤(ぎょしょう)になる。だから、有史以前に魚の漬物はあり、縄文時代には原始的な発酵は行われていたとみられているのです。
平安時代にはもう、種麹屋がありました。微生物を売る商売が成り立っていたのです。世界で初めてことだと思われます。しかも灰を使って純粋に麹菌だけを取り出す驚くべきテクニックをつくり出していたのです。
このように、日本の代表的な発酵食品と言えば、米と麦、大豆を蒸して作りだした麹です。
この麹菌を作りだしたことにより、醤油、味噌、酒、お酢など今の食文化を支える様々な発酵食品を作りだすことに成功しました。
海外においても、ワインやチーズ、ヨーグルトと言ったような動物性の発酵食品がたくさん作られてきましたが、日本は主に植物を原料とした発酵食品を産み出してきたのです。
最近明らかになっているのがこの植物性乳酸菌が体に良く、吸収率が高いということです。
このこともあり、今では日本の発酵食品のレベルの高さは世界的に有名で、日本のみならず、様々な国で日本が古くから作りあげた発酵食品が利用されているのです。
このあとは、第2話へ続きます。
---owari---
一晩でお一人から七つものコメントをいただいたのは初めてです。
大変に感激しております。
一つひとつのコメントにご返事しなければならないのですが、まとめてご返事させていただきますこと、お許し願います。
私はグミちゃんさんのように、若い人にこの素晴らしき世界や美しき国・日本の真実の姿をお伝えしたいと願ってきました。
その思いが少しでもお伝えできたなら、本望でございます。
このような赤裸々なコメントをいただき、嬉しい限りです。
こちらこそ元気をもらいました。有難うございます。
これからもご愛読よろしくお願いします。