武士の家計簿-「加賀藩御用算用者」の幕末維新、を読んだ。
家計簿は、猪山家が御算用者として加賀前田家に仕えるようになってから4代目にあたる直之とその子成之が記録したものである。 直之が江戸務めとなり出費が増え、あまりにも借金が多くなったために一大決心をして借金整理を。 そして資金管理をするために家計簿を作ったという次第。
直之の子、成之は、算用の腕を買われて新政府の海軍省出仕となる。 東京に単身赴任となった成之と加賀の家族との手紙のやりとり、そして家計簿。 これらの貴重な記録により、幕末から明治、大正にかけての激動の時代を生き抜いた武士の生きざまを 私たちは知ることができる。
廃藩置県、乗馬の平民への許可、士族の商法、金礼での家禄支給、そして家禄の廃止・・・ パラダイムシフトというべき事態に直面し右往左往している武士たちの息遣いがきこえるような気がする。 同じように不安定な時代を生きている私たちにとって、なによりの励ましではないだろうか。
算用の技術に特化した猪山家。
猪山成之は、きちんと家計簿を整理してから死んだという。
そして、その家計簿が平成の世に見事によみがえった。