妻に花を贈れ。
物理的な、花でなく。
夫婦の細かい諍いにおいて。
常に、妻に花を持たせよ。
花を贈れ。
物理的な花ばかりではなく。
妻を立てよ。
妻に譲れ。
妻を崇めよ。
妻をおだてよ。
妻の機嫌を取れ。
妻にかしづけ。
妻に土下座せよ。
妻に屈服せよ。
それが男の度量であり、男の器量であり、男の痩せ我慢。
それが男の道である。
それが家庭を明るくし、それが世界を平和にする。
夫婦喧嘩の勝者は、先に謝った者である。
常に勝利せよ。
妻が不機嫌になったのは、お前のせい。
お前がもっと器量が良く、カッコよく、甲斐性があったら、妻は果たして不機嫌になったであろうか。
あの、うら若く、美しく、この世の幸せを一身に集めたような、あの輝かしい花嫁を、思い出せ。
あのエンジェルを、不機嫌にしたのは、お前のせいである。
全部お前のせい。
だから一歩引け。
引き下がるのでない。
引き上がれ。
妻より引き上がって、優しく、柔和に、英国紳士のように、ニコリと、花を差し出せ。
Grin and bear it.
妻に花を贈れ。
心の花を。
毎日、贈れ。いつも、贈れ。
※ サマセット・モームの名作『雨』の一節(冒頭画像)にインスピレーションをいただきました。