(津波発生)
① ""インドネシアで津波 死者168人に 火山活動原因か""
2018年12月23日 16時38分
インドネシアのスマトラ島とジャワ島の間の海峡で22日夜に発生した津波による死者は、防災当局のまとめでこれまでに168人になりました。付近の島にある火山が津波発生の30分ほど前に噴火していて、防災当局は火山活動にともなう地滑りなどによって津波が引き起こされた可能性があるとみて詳しく調べています。
インドネシアの防災当局によりますと、現地時間の22日午後9時半ごろ、日本時間の午後11時半ごろ、ジャワ島とスマトラ島の間のスンダ海峡で津波が発生したということです。
この津波で、ジャワ島とスマトラ島でこれまでに168人が死亡、745人がけがをしたほか、30人が行方不明になっているということです。
防災当局の報道官がツイッターに投稿した動画では、海沿いの地域で津波によって流されたと見られる車の様子が確認できます。
スンダ海峡では、津波が発生する約30分前にクラカタウ島の火山で噴火が発生していて、防災当局は、火山活動に伴う地滑りなどによって津波が引き起こされた可能性があるとみて詳しく調べています。
首都ジャカルタにある日本大使館によりますと、これまでのところ津波による日本人の被害は確認されていないということです。
② スンダ海峡とは
スンダ海峡は、インドネシアのジャワ島とスマトラ島の間にあり、最も狭いところでは幅が25キロほどです。
海峡の近くの島には、クラカタウという活火山があり、気象庁によりますと、1883年の噴火では、津波などによって3万6000人が死亡したということです。
③ ジャワ島西部の海岸沿いに被害集中
津波による被害は、これまでのところ首都ジャカルタから約100キロ離れたジャワ島西部の海岸沿いの地域に集中しています。
防災当局の発表によりますと、これまでに430棟の建物への被害が確認されたということです。9つのホテルが大きな被害を受け多数の船も損壊したということです。
④ 飲食店などが全壊に
津波の被害を受けたジャワ島西部のスンダ海峡に面する地域は、首都ジャカルタから100キロ余りの距離で週末には海沿いのリゾート地に多くの観光客が訪れます。
このうち、チナンカ地区では、津波の影響で海沿いにあった飲食店などの多くが全壊していて、住民たちは壊れた建物の中から衣料品や家具などを拾い集めていました。
飲食店を経営する35歳男性は「最初の津波はひざ下ぐらいの高さでした。そのあとにひざの上ほどの高さの津波がとても速いスピードで押し寄せてきたので急いで逃げました」と話していました。
⑤ 地元新聞「いったん引いた潮 10分後に大波が」
インドネシアの新聞は、津波が発生した当時の住民の証言を伝えています。
この中で住民は、「22日の日中からすでに海面が高い状態が続いていたが、午後7時くらいにいったん、潮が引いた。しかし10分後に大きな波が押し寄せ、そのあとも海面はどんどん上がり続け、海沿いのホテルの床の高さまで達した」と話しています。
また「街は住民や観光客でごった返していて皆パニックになり津波、津波と叫んでいた。誰もが海から高台に避難しようと必死だった」と話しています。
⑥ 突然床が…
インドネシアの地元テレビ局は、津波が発生した当時とされる映像を放送しました。
映像は、インドネシアの人気バンド「セブンティーン」が海沿いのリゾートホテルのステージ上で演奏しているところとされ、演奏中床が突然、抜けて、ステージ全体が崩れています。このあと観客の悲鳴が聞こえ、映像は途切れています。
インドネシアの新聞は、このあとバンドのメンバーの行方が分からなくなっていると報じています。
ミュージシャン仲間はインスタグラムに「セブンティーンのために祈ってください。バンドのメンバーたちが見つかっていません」と投稿しています。
⑦ 専門家「火山噴火で津波発生の可能性」
インドネシアで起きた津波について、東北大学の今村文彦教授は、「現地では津波を引き起こすような大規模な地震が起きておらず、スンダ海峡にある火山の噴火が津波を引き起こした可能性がある」と指摘しています。
今村教授によりますと、この海域にはクラカタウ島の火山があり、1883年にも、噴火によって大津波が発生し、周辺の島で3万人以上が亡くなったということです。
噴火によって海底で地滑りが起きたり、火砕流などが海に流れ込んだりして、局所的に津波が引き起こされるということです。
今村教授は「火山活動による津波は地震と違って予測することが難しく、津波警報などが間に合わないわずかな時間で沿岸部に到達してしまう可能性がある。今後も火山活動が続く場合、同じように噴火による津波が起きるおそれがあるので、沿岸部の住民は注意が必要だ」と話しています。
⑧ 火山の専門家「インドネシアでも危険度高い山」
火山物理学が専門で、クラカタウ島の火山を現地で調査したこともある鹿児島大学・地震火山地域防災センターの石峯康浩特任准教授は「津波の直前に、火山で大規模な噴火があったことから、この噴火によって、火山周辺の地面が広い範囲で沈降したことや火山からの噴出物が海に流れたことで津波が起きたと考えられる」と話しています。
そして「ここでは1883年に大規模な噴火があり、津波も発生して3万人以上が亡くなった山だ。以前に学会の調査で火山に上陸した際も、小規模な噴火が起きていたがことしに入ってからは火山活動が活発になっていた。インドネシアの中でも非常に危険度が高い火山だと認識している」と述べました。
さらに「地震による津波と違って火山の噴火による津波は、人々の警戒心が低く、避難も遅れがちになる。さらに、火山と津波が押し寄せる場所は近いことが多いため、津波の到達が早く、既存の津波警報システムなども役に立たない場合が多い」と話し、火山活動による津波の危険性を指摘しています。