(ドローン対策「ジャミングガン」3倍増で警備 祝賀パレード)
① ""ドローン対策「ジャミングガン」3倍増で警備 祝賀パレード""
2019年11月7日 22時01分
3日後の今月10日に行われる、天皇陛下の即位を祝うパレード「祝賀御列(しゅくがおんれつ)の儀」では、天皇皇后両陛下が皇居から赤坂御所までのおよそ4.6キロのルートをオープンカーで通られる予定です。
海外では、ドローンを使ったテロ事件が起きているほか、国内でも外国人観光客がドローンを飛ばす事件があとを絶たず、警察当局が祝賀パレードの警備で不審なドローンを妨害電波を使って阻止する「ジャミングガン」を従来の3倍以上に増やして警戒にあたることが関係者への取材でわかりました。
ジャミングガンは、ドローンを検知する機器などとともに4月から5月にかけて行われた代替わりの儀式や、6月のG20大阪サミットでも配備されましたが、今回の大幅な増強によって対処が可能なエリアが広がることになります。
パレードの警備では、沿道に観覧者用のブースを設置し、手荷物検査場で金属探知機を使って危険物の持ち込みを禁止するほか、警視庁は、全国の警察から集めた特別派遣部隊およそ3000人を含む2万6000人態勢で警戒にあたることにしています。
「ジャミングガン」とは
ドローンテロの代表的な対策機材の1つ「ジャミングガン」は、ドローンの操縦に使用されている電波に向けて、妨害電波を当てることで飛行できなくさせるものです。
ほとんどのドローンはコントローラーからの電波が受信できなくなると、安全措置として、その場で降下するか、操縦者の元に戻るかの動きをするようプログラムされています。「ジャミングガン」は、その仕組みを逆に利用した対策機材なのです。
「ジャミングガン」から発せられた電波が当てられると、ドローンの操縦はできなくなり、その場に降下したり操縦者の元に戻ったりして、テロを防げるということです。
各国で開発が進められていて、各メーカーによりますと、アメリカの治安機関や韓国軍などではすでに導入されているということです。
一方、日本国内では電波を妨害する行為が電波法に違反するため、原則として利用ができず、警察庁など一部の機関が総務省の許可を特別に得て導入するのにとどまっています。
👤 「ジャミングガン」を手がけるフランスのメーカーの担当者は「ドローンに対処するため、世界中でジャミングガンが配備されている。日本でも、来年の東京オリンピックを中心に、外国から来る観客や日本人を守るために機材を導入することがとても大切だ」と話していました。
相次ぐドローン悪用の事件
ドローンを悪用したテロや事件は、ここ数年、相次いでいます。
ことし9月、サウジアラビアで複数の石油関連施設が何者かに攻撃され、爆発、炎上した事件では、ドローンによる攻撃を受けたとされています。
また、南米のベネズエラでは、去年、大統領が屋外で演説していた際に爆発物を積んだドローンが飛来し、上空で爆発する事件が起きました。
日本国内では、4年前、総理大臣官邸の屋上に放射性物質の入った容器が取り付けられたドローンが落下する事件が起きています。
📘 国内では、その後、航空法の改正などで、人や住宅が密集する地域での飛行や東京オリンピック・パラリンピックの期間中に競技会場や主要な空港の周辺での飛行を原則、禁止する規制が実施されていますが、警視庁はテロに悪用されるおそれがあるとして、警戒を強めています。
テロ対策機材の展示会も
東京では、警察関係者など限られた人たちだけを招いたテロ対策機材の展示会が開かれました。
この展示会では、ここ数年、ドローンを悪用したテロに対処する機材の出展が増えていて、今回はアメリカやフランス、イスラエルなどの機材が並びました。
飛来してきたドローンをいち早く検知することに特化したものや、ドローンとコントローラーの間の電波を妨害して使えなくするもの、そしてドローンをドローンで迎え撃ち、ネットで捕獲する「カウンタードローン」もありました。
会場を訪れた警察関係者などは担当者から機材の性能や使用方法などを聞き取っていました。
👤 アメリカのメーカーの担当者は「日本や世界中の国で、ドローンの使用を特定の場所に制限する法律を可決しているが、ドローンを悪用するテロリストが存在する以上、多くの人が集まるイベントでは空域を安全に保つことが重要だ」と話していました。
開発進む「カウンタードローン」
テロに悪用されるドローンにはドローンで迎え撃つ。そんな発想で開発されているのが「カウンタードローン」です。日本では、人工知能・AIを活用した「カウンタードローン」の研究が進められています。
福島県に本社を置くドローンメーカーでは、広角カメラと捕獲用のワイヤー、そして迎撃対象の特徴を学習する人工知能・AIを搭載した「カウンタードローン」を試作しました。
埼玉県の郊外にある県立高校の跡地で操縦担当者が飛行させました。カメラで迎撃対象のドローンを捉えると、AIが機体のバランスをとりながら自動で対象の上に位置取り、ワイヤーを投下してからめ捕る仕組みです。
現在は不審なドローンかどうか判断し、追跡するように指示を出すには人の手が必要ですが、将来的には不審なドローンの特徴をAIに学習させ、判断から捕獲までを自動で行わせたいとしています。
👤 「イームズロボティクス」の松本正家さんは「電波妨害などの対処をすり抜けられたときに物理的に捕まえることが必要になる。正確性や操縦のしやすさを向上させ、多くの人の安全を守れるようにしていきたい」と話していました。
専門家「日本はルール整備に遅れ」
👤 ドローンの活用策を研究している慶應義塾大学の南政樹特任講師は、日本でのドローンをめぐるルール作りは4年前に総理大臣官邸の屋上にドローンが落下した事件など、国内で起きた事件や事故に応じて進められていて、海外と比べてルールの整備が遅れていると指摘します。
操縦者を特定するためにアメリカなど各国が設けているドローンの登録制度は日本にはなく、現在、政府で検討されている段階だということです。
南特任講師は「日本では酒を飲んだ状態で飛ばしてはいけないとか、本当に当たり前なルールが形成されているのが現状で、悪意を持ったドローンに対する態勢がまだまだ不十分だ」と指摘します。
また、世界各国で開発が進むドローンテロへの対策機材は、電波を用いるものが多くありますが、日本では電波法などの制限で原則、使用できません。
こうした機材を警察庁など一部の機関は総務省の許可を特別に得て導入していますが、民間の警備会社などでは、網でドローンを捕まえることしかできないのが現状です。
南特任講師は安全性の担保をしたうえで「電波機材の運用をうまくすることによってドローンの悪用を防ぐことができるのであれば、特定の目的に対しては民間の人たちにも使用の一時的な権限を与えるなど柔軟な運用も必要だ」と話しています。