米海軍は、太平洋に展開する第7艦隊の主力になる空母として「ロナルド・レーガン」(9万7000トン)を配備すると発表した。この新鋭空母が、横須賀基地を中心に軍事行動を開始すれば、米国の西太平洋における軍事力は飛躍的に増強される。
「ロナルド・レーガン」の中心になる攻撃力は、合わせて24機のF/A18Eスーパーホーネットと4機のレーダー攻撃機EA/6Bプローラー、それに全天候型早期警戒機E2Cホークアイ4機である。EA/6Bプローラーは、「戦術電子作戦のエース」と呼ばれ、敵のレーダーや通信を混乱させ、ミサイル攻撃を防ぐ強力な能力を有している。
EA/6Bプローラーが敵のミサイルレーダーを妨害して安全体制を確立すると、続いてF/A18Eスーパーホーネットが新鋭ミサイルで敵のレーダー基地や通信基地、ミサイル基地などを破壊する。
また、「空飛ぶ司令塔」と呼ばれるE2Cホークアイは空母周辺を飛行して、回転式レーダードームや最新鋭のコンピューターやレーダーシステムを駆使して空母周辺の防空体制を確立するとともに広範囲にわたる航空管制を実施する。
「E2Cホークアイは、水平線の彼方まで敵の動きを察知することができる。24時間、極めて広い範囲にわたって防空体制を維持することができる」
私が「ロナルド・レーガン」に同乗して、マラッカ海峡からインド洋に抜けたとき、「ロナルド・レーガン」の広報部長、ロス・ゲーリー中佐がこう言った。米軍事専門家は、次のように指摘している。
「ロナルド・レーガンの戦闘能力を総合的に判断すると、現在の第7艦隊の空母ジョージ・ワシントンの数倍はある」
「ロナルド・レーガン」に同乗したとき、気がついたのは、艦尾の部分にレーガン元大統領の写真や遺品を飾った部屋があり、艦長や乗組員があたかも神社のように、うやうやしく参拝していたことだった。冷戦を勝利に導いたレーガン元大統領を尊敬してのことだが、他の艦艇では見られない珍しい風景だった。
マラッカ海峡を通過している最中、原子力担当の機関員らと朝食をとる機会があった。最高の教育を受けた若者らで、小気味のいいほどきびきびしていたが、士官の一人が私にこう言った。
「この空母は就役以来、原子力エンジンの事故を起こしたことがありません。米海軍でも記録的なことです」
米国防総省でグリナート海軍総司令官にインタビューした際だった。同司令官は、「ジョージ・ワシントン」に燃料入れ替えのときが来たら、代わりに最新鋭の空母を配備すると私に約束したが、彼はその時の約束を守ったのである。
中国の海軍力増強に日本の人々が強い懸念を抱いているとき、米海軍は日本周辺の安全と安定のため、中国海軍が到底およばない最強の空母を第7艦隊に配備することにしたのだ。
■日高義樹(ひだか・よしき) 1935年、名古屋市生まれ。東京大学英文科卒。59年NHKに入局し、ワシントン支局長、理事待遇アメリカ総局長を歴任。退職後、ハーバード大学客員教授・同大諮問委員を経て、現在はハドソン研究所首席研究員、全米商工会議所会長顧問。http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20140130/dms1401300727009-n2.htm